「マックレイ」五反田スタジオ
続いて、五反田東口の東京デザインセンター内にある「マックレイ」五反田スタジオへ向かいました。
ここでは、デジタルコンテンツ事業担当の小田原専務に案内していただきました。
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小田原専務が
「パワーカクテル」の前でレクチャー
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マックレイの特徴
マックレイは、先端のフルデジタル映像加工技術を備えた次世代の総合スタジオで、フルデジタル・ノンリニア編集システム「インフェルノ」を日本で始めて導入し、これを高速LANでネットワークさせています。この制作環境は、デジタル映像の表現力、制作業務の効率化、円滑化を飛躍的に高めているということです。
スタジオの中では、NHKのドキュメンタリー新番組のタイトル部分の制作や、携帯電話のCM制作が行われていました。
また、3次元CG(3DCG)制作のためのLinux OSを採用した「パワーカクテル」を独自に開発し、クラスターリンダリングサーバーとして導入しました。
3DCG制作においては、レンダリングという作業に非常に時間がかかり、制作者が拘束されてしまい実際の作業に集中することができないのが問題だそうです。パワーカクテルは、この時間のかかるレンダリングを効率的かつ超高速に処理し、使用されるコンピュータ群から全てを自動的に管理します。これによって制作者は煩雑なレンダリング作業から開放され、主たる制作作業に専念することができます。これをユーザーにレンタルするビジネスも開始しました。
*レンダリングとは?
画像を生成する計算処理のこと。
3DCGソフトは、生成される画像の画素単位に、その画素に写る形状や形状の明るさを順番に計算していく処理を行ないますが、この作業をレンダリングと呼びます。レンダリングは時間がかかることがあるが、これを行わないと最終的な画像が得られない必須作業です。
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DVDコンテンツ発売
以前から東芝と協力してDVDの研究開発、市場浸透に携わり、様々なジャンルのDVDを制作してきましたが、グループ会社デジタルサイトが2002年8月にオリジナルレーベル「DreamTime」を立ち上げました。
これはDVDで映像付きの音楽コンテンツを提供することを目的としたもので、第1弾として「We Are The World」を昨年12月に発売しました。
このDVDの注目すべき点は、音楽が5.1ch化されているという点です。約20年前のレコード、ビデオ発売時はステレオサウンドだったのですが、デジタル技術によって、より深みと広がりを感じることができる5.1chへと生まれ変わったのです。
マックレイには6.1chサラウンド対応のMAスタジオがあり、そこでステレオとサラウンドの違いを実際に聞かせてもらいました。
2つの音を聞き比べてみると、その違いは極めて明白でした。見学会の記念にこのDVDを頂いたので早速家に帰ってから聞いてみると、懐かしいあの曲を当時とは違う迫力で体験することができ、非常に嬉しく感じました。また当然ながら画質も大変きれいでした。
新レーベルは、音楽作品において可能なかぎり5.1ch化していくそうです。現在は世界中からコンテンツを集めているところで、30-40歳のユーザーをコア・ターゲットに、アニメ、音楽、映画DVDを発売していく考えです。
DVDの画質・音質の向上、ハードの低価格化などからDVDユーザーは今後急速に拡大することが予想されています。
各種映像を体験
最後に同社が制作した様々なデジタル映像を見せていただきました。
<3DCG>
テーマパーク等でおなじみの特殊メガネをつけての鑑賞でした。映像中のキャラクターが、同社のデジタルによるHD(高精度)画像がどのようなシーンで使われているかをわかりやすく解説してくれました。質感に溢れた大変リアルな映像でした。
<デジタル映像によるCM>
いつもテレビで見ているCMですが、「これもデジタルで制作されているんだ」と気付かされました。
マックレイのHD撮影部は一昨秋から100本以上のCM制作に参加しています。
HDの第1のメリットは、利便性やコストパフォーマンスです。1,000コマのスロー画像もフィルムの場合は翌日でないと内容確認できないのが、デジタルであればその場でのチェックが可能であるなど、フィルムで撮影する場合に比べ、現像、フィルム費が省ける上に、長時間や低照度の撮影も手軽にできるため機動力が大幅にアップします。
こうしたCMのテープレス化は、コスト削減意欲の高い企業ニーズに応えて急速に進んでいます。また、映像のクオリティも極めて高い水準に達してきており、一度使った企業はリピーターになっているそうです。
昨年の春頃には月10本の制作でしたが、現在では20本にまで増加しています。
また経済的メリットのみではなく、マックレイの最新機器とその能力を十二分に発揮させる同社のノウハウ、マンパワーが業界では高く評価されているということです。
<デジタルシネマ「アカルイミライ」>
2003年1月公開予定のこの映画は、グループ会社のデジタルサイトとアップリンクが共同制作、マックレイが製作協力を行った、デジタルシネマです。
撮影はすべてHDカメラを使うため、ライトはほとんど使用せず外光だけで撮影したにもかかわらず、クオリティは高く「往年のハリウッドスタジオでのフルライト撮影を再現したような感じ」と黒澤清監督も満足だったそうで、従来のフィルムにはない新しい作風を生んでいくものと期待しています。
2004年までに全国で都市型コンプレックスに78スクリーンが増設される見通しで、そのうち半分はDLP(デジタルライト・プロセッシング)の導入が検討されており、コンテンツをデジタルで保有し、配信する重要性が増していると考えています。
*DLPとは?
微小な鏡を100万枚以上備え、高速で光を反射して画面に映像を映し出す方式で高画質を可能にします。PDP(プラズマディスプレー)、液晶、FED(電界放出型ディスプレー)など他の様々なディスプレー方式に比べ、大型化に最も適しているテレビ技術です。
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最後に、分部社長、小田原専務が質疑応答も交えながら、ポイントについてお話くださいました。
<地上波デジタルの開始>
先日新聞記事にもなったように、2011年をもってアナログ放送は終了し、地上波も全てがデジタルHD時代になるなど、デジタルの波が大きく広がる時代に期待しています。
そうした環境下で、企画制作、撮影からフィニッシュワークまで映像制作全般についてサービスを提供していくワンストップソリューションを目指しています。またこれに加え、エンコーディングやネット配信などもサービスとしてサポートしていき、コンテンツ制作全般に関するアドバイス、コンサルティングも行っていきます。
こうした「ワンストップソリューション」を提供できるのは、同社くらいのもので、この強みを十分に発揮していきたいと考えています。
<15%成長>
グループ全体として毎年15%程度の成長を目標としています。
<コンテンツ制作におけるリスク管理について>
同社はコンテンツ制作における使用機材は全て自社のものを使用します。
一見すると投資リスクが高いように思われますが、実際にはその機材のレンタル収入も見通した上で、採算が合うと判断した場合のみ制作を行い、逆であれば制作に踏み切りません。結果としてリスクは少なくなっています。
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