ブリッジレポート
(4317) 株式会社レイ

スタンダード

ブリッジレポート:(4317)レイ vol.1

(4317)レイ/ 分部 日出男社長
2002年10月22日(火)

優れたデジタル映像技術を核とした企画、制作、演出などを手掛けるレイの2003年2月期中間決算説明会に参加しました。
分部社長、分部副社長、川崎取締役が決算概要ならびに今後の取り組みについて説明されました。
 

事業内容

1. ビジネスコミュニケーション事業
企業の販売促進活動の一環として派生するプレゼンテーションの企画・制作・演出を行います。展示会、ショールーム、新製品発表会、会議、博覧会などのイベントにおけるデジタル映像がその主な分野です。
各種催事における機器操作サービスや、機材のレンタル・販売も行っています。
また、デジタル映像表現とネットワークを融合させたWebマーケティングやシステム構築も推進しています。


分部 日出男社長

販売促進企画制作: 外部売上高 1,329百万円
付加価値率 33.9%
演出機器レンタル・販売: 外部販売  1,141百万円
付加価値率 レンタル68.5%、販売9.9%

2. デジタルコンテンツ事業
デジタル編集スタジオにおける独自の映像加工技術を核に、映像周辺技術(CG:コンピュータグラフィックス)との組合わせにより、高品質な映像をクライアントに提供する事業です。CMやプロモーションビデオ、TV番組、映画などのデジタル映像制作が主です。
また、これまでの蓄積されたノウハウを活かし、CM制作や映像コンテンツのデジタル化及びDVD販売ビジネスも展開しています。
最近では、新製品や都市開発におけるシミュレーション映像の企画・制作を通じて企業の新規事業、商品開発活動をサポートしています。

映像制作・DVD : 外部売上高  344百万円
付加価値率  27.0%
映像合成編集  : 外部販売    591百万円
付加価値率  88.9%

クライアントから依頼があった場合、レイグループはトータルにビジネスをコントロールします。
例えば、イベントであれば企画、コンテンツ制作、実施設計、設営、運営も行います。TVCM制作なら、企画から撮影、加工、編集までを一貫してサポートします。
こうした「ワンストップ・ソリューション」で、企画やコンテンツの更なる高品質化、業務の効率化・合理化によるコストダウン、業務展開の拡大を実現しているのです。

 

2003年2月期中間決算概要「広告宣伝業界の不況で減収・減益」

[連結]
売上高
3,404百万円
前年同期
4,243百万円
営業利益
-2百万円
前年同期
501百万円
経常利益
-17百万円
前年同期
489百万円
当期純利益
-48百万円
前年同期
271百万円

<セグメント別>
ビジネスコミュニケーション事業
販売促進企画制作
売上高
1,329百万円
前年同期比
-18.9%
演出機器レンタル
売上高
500百万円
前年同期比
-18.3%
機器販売
売上高
641百万円
前年同期比
-16.6%

予想以上に厳しい経営環境でした。特に演出機器レンタルは、前年並みの予想でしたが、大型機材を使用するコンサートが中止や受注ができず、減少しました。
売上高の低下による演出機器レンタルの稼働率低下が利益に影響し、営業利益は98百万円(前年同期比 -74.1%)となりました。

デジタルコンテンツ事業
映像制作・DVD
売上高
344百万円
前年同期比
-19.6%
映像合成編集
売上高
591百万円
前年同期比
-25.8%
TVCM制作の市場環境が厳しく、前年を下回りました。 映像編集設備の稼働率が低下し、営業利益は -101百万円となりました。

<利益分析>
付加価値率は前年同期50.6%に対し、今中間期は50.8%とほぼ同水準でした。 つまり当期の減益は同社ビジネスの利益率低下ではなく、売上高の低下と人員増、子会社の引越し、カタログ制作など維持費増加が要因となっています。

 

今期の見通しと対策

売上高
7,581百万円
前年同期比
- 7.4%
営業利益
253百万円
前年同期比
-68.4%
経常利益
228百万円
前年同期比
-70.1%
当期純利益
114百万円
前年同期比
-73.4%

<セグメント別>
ビジネスコミュニケーション
売上高
5,057百万円
前年同期比
-14.6%
営業利益
284百万円
前年同期比
-58.0%

企業の広告費支出については厳しい環境が下期も続くと予想しており、売上、利益共に通期でも前年を下回ると予想しています。

デジタルコンテンツ
売上高
2,524百万円
前年同期比
+11.6%
営業利益
-31百万円
 

やはり環境は厳しいものの、
・ TVCMプロデューサーの人員増加による強化
・ DVDは予想通りの大量リリース
・ 先端のフルデジタル映像加工技術を備えた次世代の総合スタジオ「マックレイ」を五反田に増設
などにより、売上高は前年を上回る見通しです。ただ、利益については下期改善するものの通期での赤字は避けられないと見ています。

こうした状況の中で、下期には以下のような対策を打っていきます。
ビジネスコミュニケーション
「販売促進企画制作」
2005年の愛知万博に代表される高度な企画力を必要とされる案件については引き合い好調で、同社の強みは続いていると考えていますが、高付加価値の受注が多いため、景気や偶然性に左右される部分が多く、反対にボリュームゾーンの受注が少ないと認識しています。
そこで安定受注を獲得する為に、
・ Webを活用したプロモーションシステムの構築ビジネスを拡大
・ セールスプロモーションのボリュームゾーンへの積極的な取り組み
を進めていきます。
セールスプロモーション受注については、広告代理店へのスタッフ常駐を既に初めており、結果も出始めているということです。

「演出機器レンタル・販売」
高性能機器レンタルは同社グループの操作技術力とあいまって強みは続いています。
ただ映像機器の低価格化で強みが発揮しづらくなっています。また高性能を要求する大型イベントに偏っていたため、ボリュームゾーンの映像機器レンタル市場への営業強化が課題と認識しています。
そこで、企業広報、教育関係、学会などの直接取引を拡大していきます。
これは「プレント事業」と呼ぶ、コールセンター・配送事業者を用いた自社で資産を持たない仕組みとなっており、上半期で仕事件数309件、新規顧客開拓90件、売上4000万円と既に実績が出始めています。月間200-300件の受注を目指します。

デジタルコンテンツ
「映像制作・DVD」
上期は2名であったプロデューサーを、統括プロデューサー1名、プロデューサー3名を増強し、映像合成編集という同社の強みをより一層発揮していきます。
また、DVD販売は「ニルスの不思議な旅」、「ドカベン」など、予定通り下期に大量リリースを行います。
加えて新レーベル「Dream Time」を設立し、音楽DVDも大量にリリースしていきます。

「映像合成編集」
ポストプロダクション業は、部屋数と稼働率と単価により収益が決定しますが、従来は西麻布を中心としており部屋数を増やすことが課題でした。
そこで部屋数を増やし、顧客の利便性を確保する為に、リース総額5.4億円で五反田のスタジオを本格的ポストプロダクション用にリニューアルしました。実質で約40%のキャパシティ増強となります。
こうしてマックレイ西麻布、マックレイ五反田の2大ブランドで上期実績に対し25%の増強を見込みます。(リース支払額はほぼ前期並となります)

 

今後の戦略

市場の動向は、以下のような動きとなっています。
技術動向としては、テレビ放送のデジタル化、映像製作工程でのフィルムレス化など制作、演出のデジタル化の流れのなか「デジタル投資圧力」が強まっています。
一方で顧客企業の動向としては、供給能力過剰、製品のソフト化が進む中、売上増大のための魅力あるプレゼンテーションの需要が拡大しており、発注先のプロダクション選別の圧力が強まっています。
つまり、技術力と企画力を併せ持った総合力のあるプロダクションに対するニーズが高まっているということです。

こうした市場動向において同社としては、

・企画力、技術力で営業チャネルを確保
  ↓
・企画力、技術力でトータル受注を目指す
  ↓
・ソフト(人材)とハード(機材)に再投資
  ↓
・ 「企画力、技術力で営業チャネルを確保」に戻る

という、循環を拡大させていき、ソフトとハードのバランスの取れたトータルソリューションを可能にするプロダクションとなることを基本戦略としています。

そして、この基本戦略に変更はないものの、下期の対策の内、以下の2点を最重要課題と認識して取り組み、業績の回復を目指していきます。
1. ビジネスコミュニケーション事業 運営も含めたセールスプロモーションのボリュームゾーンに積極的に取り組む
2. デジタルコンテンツ事業 「マックレイ五反田スタジオ」を軌道に乗せる。

 

取材を終えて

現在の景気の下、広告宣伝費圧縮の流れの中で厳しい決算となりました。
顧客からの価格値下げ要請が強まっているのも事実のようです。
しかしその一方で同社の付加価値率は低下しておらず、結果としてみれば同社の強みとする制作、運営、機材操作の高技術力に対する評価は変わっていないといえるでしょう。
今後の注目点として分部社長は「映像のフィルムレス化」をあげています。
2001年春頃は月に1、2件だった受注が、今年の春には約10件となっており、今後3年ぐらいで大きく環境が変わり、フィルムレスにシフトしていくのではないかと見ているそうです。

次回のレポートでは、新しい技術動向などを中心にレポートしたいと思います。