ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275) フォーバル vol.3

(8275) フォーバル/大久保 秀夫社長
6月18日(火)

フォーバルの2002年3月期決算説明会に出席しました。
当日は決算説明および今後のグループ戦略を大久保社長がお話になりました。

2002年3月期決算概要

<連結>
単位:百万円、カッコ内は前年比、または前年数値
売上高
44,411
(-14.7%)
営業利益
-860
(1,026)
経常利益
-1,027
(699)
当期純利益
-4,756
(86)


大久保 秀夫社長


「主な要因」
売上高
・法人における投資抑制で、電話機、PC関連が減少
・マイライン開始に伴う値下げと顧客流出
・雇用環境悪化による在日外国人向け移動体サービスの不振

経常利益
・子会社フォーバルテレコムが、売上減、値下げによる採算悪化、顧客減少で前年比約19億円悪化し、17.7億円の赤字


当期純利益

特別損失41億円を計上
・ テレコムにおいて在日外国人向け事業整理損等28億円
・ 単体においてもコンテンツ系ビジネスの整理等により17億円の特別損失

貸借対照表においては有利子負債を19億円削減しました。
フォーバルテレコムが行なってきた「インターネットキーワード事業」はマイクロソフト社とリアルネイムズ社の間のブラウザ利用契約終了伴いサービスが終了し、代わってアクセスポート社の「日本語キーワードサービス」を利用者に推奨することとしています。

なお今期(2003年3月期)については、フォーバルグループとしてIP電話サービス事業に本格参入しますが、当事業は従来の事業に比べてはるかに大きな事業となる可能性があり、現時点の情報のみでは適切な予測が困難であると判断し、業績予想を行なわないこととしています。予想に代えて単体、連結業績を四半期開示することとしました。

 

ブロードバンド時代を迎えてのグループ事業概要

フォーバルグループの基本スタンス
ブロードバンド環境の進展、インターネット市場の拡大などを背景として、利用者の立場に立った問題解決型企業として社会価値を創出しつづけることをグループの役割としています。

新年度事業概要
◎フォーバル
ブロードバンド時代に適合したコンサルティングの実施
各種通信サービス(IP電話など)の提案を行ないながら顧客ニーズに合致したハード、サービスを提供

◎フォーバルテレコム
既存音声事業は効率化による収益改善を図る
IP電話などブロードバンド時代の通信サービスの企画・展開に注力

◎フォーバルクリエーティブ
ファイアウォール(ソフト)に加え、ハード、保守サポート、教育、出版とITセキュリティを根幹としながら事業の裾野を拡大し、ブロードバンド時代の新市場(中規模法人、家庭用)に対応。大阪事業所も本格稼動

ビジネスホンの販売からスタートし法人向け通信機器、サービスの提供で成長してきたフォーバルグループ本来の強みがブロードバンド革命によって、より一層活かされる時代が到来すると認識しています。
ヒト、モノ、カネの経営資源をブロードバンドに集中していく戦略です。

DSE戦略マーケティング研究所(ITビジネス、バイオビジネス等に関する受託調査、コンサルティングなどを実施。NTT、ソニー、松下など大手企業が取引先となっている)の調査によれば、今後数年でブロードバンド利用者数は各分野で急拡大を見せると予想されます。

   
2001年
2005年
企業向けブロードバンド利用者数
350万人
3100万人
セキュリティ
55万人
800万人
オンラインバンキング
100万人
750万人
VoIP(企業用)
300万人
3000万人
企業向けASP
200万人
1460万人
社員教育
2万人
1200万人
企業情報(IR、PR等)視聴者
50万人
3000万人
採用情報視聴者
30万人
2800万人
電子政府サービス
3万人
1850万人

この急成長するマーケットに対し、「フォーバル:ブロードバンド対応のハードおよびソフトウェア、Eコマースサービスの提供」、「フォーバルテレコム:最新&最適ブロードバンド環境の提供」、「フォーバルクリエーティブ:ブロードバンド時代のネットセキュリティ提供」という風に、グループによってトータルな最適環境を提供していく考えです。

 

IP電話サービス事業の展開について

ブロードバンド環境の普及の中でインターネット技術を用いたVoIPという通信手段が注目を集めています。

VoIPとは、「IPネットワークで、音声を伝える」技術のことです。
今まで、電話(音声)の信号の伝送は、電話専用のネットワークを使用していましたが、代わりに、データ通信で使用されているIPネットワークを使用します。専用ネットワークが不要で、従来の固定電話における交換機に代わり低価格の通信機器「ルーター」を使用することから従来の電話よりも低コストで音声通信が可能になります。また設備投資が少なくて済むために通信料金を大幅に下げることが可能で、ADSL、光ファイバーなどの急速な普及で従来の固定電話にとって代わる通信手段と見られています。
上のDSEによればVoIPの企業向けと消費者向け利用者を合計すると2001年405万人が2005年4900万人と予想されており、また調査会社IDCによれば同じく2005年には電話のシェアで50%に達するとも予測されています。(IDC=http://www.idc.co.jp) NTTも従来の固定電話網投資の停止とIP通信への移行、VoIPサービスへの本格化を表明しています。(ただNTTは規模の大きさ、現在の収益源は固定電話であるなどの理由から一気にVoIPへの転換は難しく、10年を目途としています)

フォーバルグループはこうした状況を背景に、ソフトバンク・グループのブロードバンド電話サービス「BBフォン」の法人向けサービスを行なうために今年2月「ビー・ビー・コミュニケーションズ株式会社」をソフトバンク・グループと共に設立しました。

社名 ビー・ビー・コミュニケーションズ株式会社
代表者 孫正義
資本金 3億円
出資比率 ビー・ビー・テクノロジー
フォーバルテレコム
60%
40%

設立の狙い
フォーバルテレコムの「法人向け通信サービスのノウハウ」とBBテクノロジーの「インフラ構築」という強みを持ち寄る。
「BBフォン」ブランドを利用する。
フォーバルグループの法人向け営業力とソフトバンク・グループのネームバリューを活かした営業上のメリットを発揮する。


サービス概要

BBフォンはNTT等の電話回線ではなく「Yahoo! BB」独自のインターネット網を利用して通話を行なうサービスです。

ポイントは以下の通りです。
現状の利用料金から20%の割引
通信費は定額料金(携帯電話、PHSへの発信は従量制)
現在使用の電話機から利用方法を変えずに利用可能

フォーバルグループの役割はフォーバルが販売取次店として法人向け「BBフォン」を販売する他に、フォーバルテレコムは料金請求、営業企画、業務構築等の業務をアウトソーシングで受託することです。

法人向け営業はBBコム社の下に構築する全国900社の第一次販売代理店ネットワークによって行ないます。
このネットワーク作りのために大久保社長、ソフトバンクの孫社長が全国を回ったそうです。 フォーバルも当然ながら代理店の一つとなっており、コスト削減も含めた総合的なコンサルティング営業を行なっていきます。

5月15日からサービス提供を開始しています。当初は大手、中堅企業を対象としますが、その後はADSL、無線LANのパッケージによって中小企業、個人企業も取り込んでいく方針でその準備も既にできているそうです。

BBフォンはインフラとして独自のインターネット網を全国規模で構築しており、コスト、品質ともに一般の公衆網電話、他のインターネット電話を上回り、米国の有力通信関連企業からも高い評価を得ているということです。
(2002年3月現在全国1200局舎以上の展開規模。今後2500へ向けて構築中)

 

取材を終えて

IP電話サービス事業の説明に際しての大久保社長からは大変な迫力を感じました。
既存事業の足元の状況は依然として芳しいものではないようですが、事業の清算など悪い部分は取り除き、BBの進展という流れに経営資源を集中していく強いメッセージを発しておられました。
法人向け「BBフォン」はスタートしたばかりで、まずは期間限定での1回線お試しサービスなど先行投資の時期ですが、10月から料金徴収が始まり、下半期から来年に向けての数字、結果を是非検証してほしいとのことでした。
ブロードバンドの急速な普及は間違いないトレンドだと思われます。同社グループがそのトレンドの中でどのようなポジションを占めていくことができるのか、IP電話事業の拡大スピード、状況を注目していきたいと思います。