同社を取り巻く環境と同社の特徴
農薬市場の動向
農薬市場は、平成12年に6年ぶりに増加しましたが、これは斑点米カメムシ類が全国的に多発して当該製品の特需が発生したことが寄与しました。昨年は、その反動もあり前年比で減少に転じ、中長期的なマーケットの減少に歯止めがかかったとは言いきれないと考えています。
市場が縮小する中で、同社が安定成長続け、強い競争力を維持してきた大きな要因は、
① 果樹・野菜向け農薬に特化
② 独自製品・差別化製品の開発
③ 最終需要家(農家)へのダイレクトマーケティング という同社の特色にあります。
<果樹・野菜向け農薬に特化>
農薬の使用分野別の作付面積の推移を見ますと、水稲の作付面積が国の減反政策により毎年大幅に減少する一方、同社のターゲットである果樹・野菜の作付面積は、比較的穏やかな減少にとどまっています。
また、使用分野別の農薬出荷額を見ると、水稲の向けの農薬出荷額が大幅に減少する一方、果樹・野菜向けの農薬出荷額は、比較的安定的に推移しています。
<独自製品・差別化製品の開発>
同社は、独自製品に注力しており、原体メーカー(農薬の有効成分を製造するメーカー)が多数社に卸し、同じ農薬製品が複数、市場に出て価格で競合する製品はできるだけ扱わない方針を堅持しています。
これらの独自品、また他社製品との差別化を図った製品の比率は、約50%に上ります。
<最終需要家(農家)へのダイレクトマーケティング>
同社にとっての顧客は農家であり、創業以来「常に農家のために、農家とともに」を経営理念に営業展開してきました。同業他社が農協との関係をベースにしているのと一線を画しています。
1960年には、地域別の販売会社の展開に注力し、農家を担当するTCA(テクニカル・コマーシャル・アドバイザー)を全国に配置しています。
このTCAは単なる営業マンではありません。アグロ カネショウは「単に物を売るのではなく、農薬の使い方など技術を売る」企業です。農家は農薬(特に新製品など)を見せられただけでは買いません。使い方、効果を理解させることが必要です。そこでTCAは、農家を訪ね、説明会や講習会を開いています。全国5000ヶ所に「展示圃」を設置し、散布の方法や注意点を実演によって説明し、実際の効果を見せています。また、中核農家を「情報の受発信点」と位置付け、技術普及スタッフによる直接指導を実践しています。
このように「展示圃」、「中核農家」を核に周辺農家を組織化し、農家の立場に立った情報を提供し、農家とのより深いコミュニケーションを取りながらダイレクトマーケティングを展開しています。これが可能なのは同社のみといえます。
果樹野菜向け農薬市場の動向
①中国からの輸出増大による国内農家への影響
最近増加している安価な輸入野菜が国内産野菜の需要減少につながり、ひいては農薬の消費量減少につながるという悪循環が顕在化しつつあります。
この中国産野菜の安全性については問題があり、後述します。
②天候の変化(高温・少雨)
昨年の高温・小雨、夏場の低温の影響で、果樹のカメムシ類、野菜と花卉のハスモンヨウトウなどの害虫の発生も見られましたが、総じて病害の発生は少なく、全体的に農薬需要を上向かせるものではありませんでした。
③競争激化
継続的な減反政策、海外からの安価な輸入野菜・果実の増加等によるマーケットの縮小、海外・国内メーカーの直販体制化にともなって競争は激化しています。また海外の大手農薬メーカーの再編により、巨大化したメーカーは所有する剤の見直しや独禁法からの要請により、たとえ利益があがる有力な剤でも売却する動きが見られます。同社としてはこれをビジネスチャンスと捕らえて有力な剤の獲得に注力しています。
|