ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.3

(4955)アグロ カネショウ/櫛引 博敬社長
2001年11月26日(月)


アグロ カネショウを訪問しました。
社長室で、櫛引社長、古内常務にお話を伺いました。


櫛引博敬社長

 

アメリカでの状況

同社の中心的な大型商品に「カネマイトフロアブル」というダニ剤があります。
日本以外にアジア、欧州、アメリカでの販売拡大を図り、いろいろな国で登録申請作業が進んでいますが、その内、アメリカにおいて大きな前進が見られました。
同社の研究開発本部の井上取締役本部長もご同席くださり、説明をしていただきました

この10月、アメリカのEPA(環境庁)は、カネマイトフロアブルを「危被害軽減農薬」として認定しました。
この「危被害軽減農薬」の認定制度というのは、安全性が高いもの、緊急性がたかいものと、EPAが認めた農薬は、他の登録申請中の農薬よりも優先的に登録作業を進めるというものです。
カネマイトフロアブルはダニ剤ですが、人畜、環境および有益な昆虫に悪い影響を与えない特性があり、その点が評価されて認定を受けました。
アメリカでは環境問題に対し、「現在使われているものに比べて環境に優しい製品・商品を代替物として使用していく」という認識、考え方が近年進んでいるそうです。
そうした中、同商品が「危被害軽減農薬」に認定されたということはいくつかの点で、非常に大きな意味があります。
まず第一に、優先的な登録によって、通常では4―5年かかる登録までの時間が1―1.5年に短縮されるという点です。
第二に環境問題に対する意識の強いアメリカで評価されたということで、他の国における申請にも好影響をもたらすことが予想されます。
アメリカでは今回は「花卉」を適用対象として申請していますが、来年には「食用」に適用を拡大して申請する方針です。
中期的には、米国市場で年商10億円程度を目標としていきたいと、櫛引社長は考えています。

 

櫛引社長が考える課題と対応

櫛引社長に、「現在の課題は何だと考えていますか?」と質問すると社長は二つのポイントをお話くださいました。

  • 自社開発製品比率の向上
    マクロ的な環境から農薬市場の大きな拡大は期待しにくく、同社の売上高も伸び悩みとなっているのが実状です。その中で「いかに利益をあげていくか?」ですが、もちろん冗費を削減することは大事ですが、会社の活力を維持・向上させるためには安易なリストラを行っていく考えはなく、利益率向上を目指した自社開発製品の比率の引き上げをメインテーマにしていくということです。
    そのためには、十分な研究開発の資金と時間が必要であり、投資家の投資効率という観点からの意見はあるものの、財務戦略としては無借金、高キャッシュポジションを継続していく考えです。
  • 営業力の更なる強化
    前回のレポートでも書きましたが、同社は「顧客=農家」という点を強く認識しており、「どこまでも農家とともに」を信条とし、農家に対し、ただ単に農薬を販売するだけでなく、TCA(テクニカル&コマーシャル アドバイザー)という担当者が、農薬の適切、効果的な使用方法をアドバイスしたり、農業経営についても助言したりと、農家と密着したコミュニケーションをとりながら、ニーズを吸い上げ製品、サービスでフィードバックを行うことに力を入れています。
    こうしたTCAを育成するために、同社では新入社員研修として、5月の連休明けから約2週間、一人一農家の形で農家に泊り込み、農作業を手伝います。
    また、その後3―5年ごとにフォローアップ研修として、同じ農家に赴きます。
    民間企業でこういう形の研修を行っているのは同社のみであり、農業の現場を知り、農家のニーズを肌で感じ、吸い上げることのできる社員を育てるという観点からは、大変意味がある研修制度だと考えています。
    今年の新入社員が提出したレポートをいくつか見せてもらいましたが、農作業の様子や、その農家が独特の工夫を行っている場面、またある日の夕食で大変おいしかったお奨めメニューの紹介もするなど、文字通り「農家とともに」暮らしている様子がはっきりと伝わってくるものでした。
    外資系のメーカーが直販を狙って営業活動を進めているそうですが、一朝一夕にできるものではないことは明らかでしょう。
    今後は、独自の総合コンピュータ情報システム(AKTIS)を活用し、技術情報サービスをより一層充実させていく方針です。

訪問を終えて

農薬の必要性に対する農家と一般消費者のギャップがあまりにも大きいことが問題だと社長は考えています。生産者は農薬の必要性を十分知っており、適切な使用によって生産を安定させ、一般消費者に供給しているにもかかわらず、「農薬使用=悪」という、あまりにも単純で無責任な図式を、多くのマスコミが中心となり一般化させてしまっているからです。
ただ騒ぐだけで、「何が問題なのか?」、「解決のためには何をすればよいのか?」を議論することがないのは、「O157」、「狂牛病」でも明らかであり、行政の情報開示に対する姿勢にも大きな責任があるといえるでしょう。
櫛引社長は、前回のブリッジサロンなど、いろいろな機会に、農薬の必要性と安全性を十分考慮した使用が行われているという実状を、投資家や一般の人に理解してもらおうと努めています。そして一方で、農家に対する情報提供、アドバイスを一層充実させることが同社にとってより重要だと考えています。
たしかに日本のマスコミの認識、あり方を変えさせるのは時間がかかることでしょう。 それよりも、最終顧客である農家が繁栄することが同社にとっても大きな利益になるわけで、「どこまでも農家とともに」を信条とした同社ならではの営業展開により、同社の成長と農薬に対する認識是正をすすめていく方針です。