ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

スタンダード

ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.1

(8275)フォーバル/大久保 秀夫社長
2001年
8月22日(水)

 フォーバルを訪問しました。表参道駅から徒歩数分。国連大学の隣のビルの応接室で、大久保社長にお話を伺いました。


大久保 秀夫社長

 

 

 同社は1980年設立で、8年後の1988年に店頭市場に上場しました。当時大久保社長は33歳で、公開企業の社長として史上最年少記録となったことは有名です。 まず同社が急成長した理由など含めて、設立の経緯をうかがいました。

 

設立の経緯

 大久保社長の基本理念は「ユーザーオリエンテッド」。利用者の利便性を最優先にすべきと考えています。
 1980年、「高度情報化社会の到来」という声が高まってきた頃、大久保社長が疑問に思ったのは「なぜ全ての電話機が電電公社(現NTT)の黒電話なのか?」ということでした。そこで法律を調べてみると「1台目は電電公社のものでなければいけないという」規定がありました。逆にいえば2台目からはどこの電話機でもいいわけです。しかし、そんな事情を知らされることなく当然のように電電公社製を使っていたのです。
 そこで大久保社長は「新日本工販(現フォーバル)」を設立。NEC、富士通といった民間企業の電話機をリースで供給する仕組みを作りました。電電公社のレンタル料の10%安い水準にリース料を設定。また、7年目からは再リースという仕組みを使いさらに大幅にリース料を安価にできるようにできました。
 このように価格面では完全に優ったわけですが、信用力という面で壁にぶつかりました。 ユーザーからすれば故障時の保証に不安があるということです。
  そこで大久保社長はメーカーに10年保証を要求しますが、メーカーは1年保証しか受け入れません。そこで残り9年分を同社が負担するという条件で「10年間無料保証」を実現させました。こうして価格面では圧倒的に優り、保証もついているということで、同社のビジネスは爆発的な成長を遂げました。この結果、1985年には同じように電話機を販売する企業も増え、同業(民間)で60%のシェアを獲得。こうした現実に、電話機の完全自由化を認めるよう法律も改正されたのです。

  また通信のNTT独占に大きな風穴をあける役割も果たしました。DDI、日本テレコムなど第2電電が登場した際、電話利用者がそれまでどおりに電話をかければ、最も安い電話会社の回線を自動的に選択してくれるNCCアダプターがそれです。
 当初第2電電側は「5年目単年度黒字」を目標としていましたが、このアダプターの登場で大久保社長が予想していた通り、「5年目累損一層」を実現することとなりました。同社側も33億円投資しアダプターを企業に無料配布しましたが、第2電電からのバックマージンで1年目にしてこれを大きく上回る収入を上げ、株式公開の大きなステップとなりました。また、この10年間に電話料金は大幅に値下がりしました。例えば、東京-大阪間が当時3分間400円から現在では80円以下、実に80%以上もの大幅な値下がりとなり、利用者にとっても非常に大きなメリットをもたらしました。

 

事業内容

情報端末機器ビジネス
 上記の電話機販売からスタートしたものですが、デジタル化が進んだ現在、複写機、プリンタ、ファクシミリなど情報通信機器は複合化、ネットワーク化が進んでいます。顧客の利用状況を理解したうえで、最も有効に利用できるようにコーディネイト、提案を行っていくものです。

通信ビジネス
 複数の国内電話、国際電話、移動体通信各社の中から、ユーザーへベストの通信サービスを提供する「fitコール」をスタート。安い電話回線を自動的に利用でき、請求書も1つにまとめることができるため事務処理も簡素化。

その他
 ネットビジネスをスタートする小規模事業者向けに必要なハード、ソフトをパッケージした「インターネットパック」を提供、サポートするインターネットソリューションビジネス、ショッピングサイト、コミュニティサイトの構築、企画・開発・運営をバックアップするインターネット支援ビジネス、環境ビジネスなどに取り組んでいます。 共通する点としては「中堅・中小企業が主な顧客である」ということです。

 

フォーバルグループの特徴

 同社およびフォーバルグループの特徴としては、まず情報通信社会にグループとして総合的に対応できる企業群であるということが上げられます。
  大久保社長は、情報通信社会を人間の健康に例えて説明してくれました。つまり、人間が健康に暮らしていくには、「血管」、「臓器」、「栄養素」が大事であり、情報通信社会においてはそれが「血管=通信」、「臓器=ハードウェア」、「栄養素=コンテンツ(情報内容)」にあたるということです。
  このうち、通信は昨年上場したフォーバルテレコムが、ハードウェアはフォーバル本体が担当し、コンテンツに関しては合弁会社をいくつか作って対応していくという戦略です。また、セキュリティ分野においてはフォーバルクリエ-ティブがあります。
  この3つの分野全てに対応できる企業は実はあまりないというのが現状のようです。

 次にあげられるのが、本当の顧客をがっちりと掴んでいる「足腰の強さ」という点です。
 設立の経緯からも、同社は日本全国の中堅・中小企業を顧客のメインターゲットとしています。現在フォーバルで10万ユーザー、フォーバルテレコムで15万ユーザーを保有しています。これら顧客に対して、請求業務を行っているのが同社の特徴です。例えばNECのパソコンのリースを受けた場合、ユーザーはNECの名前を毎日目にはしますが、ベンダーのことは忘れてしまう可能性があります。多くのベンダーが自社での請求業務機能を有していないのに対し、フォーバルは自社名で請求を行っています。これによりユーザーはフォーバルとの関係を常に意識するようになり、顧客をグリップできるようになっています。このようにして、ユーザーオリエンテッドのポリシーの下、常に顧客の利益代表者として川上を選ぶ立場にいるというのが同社の戦略です。
 中小企業マーケットでこの関係を保つことは簡単なようでいて難しいことでしょう。某企業が営業を外部に委託した結果、解約を止めることができなかったことなどはその一例です。

グループ経営に関して大久保社長は小さな組織で迅速な意思決定を行っていくことを目標としています。
 つまり、全ての分野を売上1000億円の1社で対応するのではなく、100億円10社で機動的に対応していくことがこの変化の激しい情報通信産業では絶対必要と考えています。今後も、こうした考えの下、専門性の高い会社を必要に応じて設立していく方針です。

 

訪問を終えて

 同社の前期業績は大幅な減益となりました。景気低迷の影響は企業部門で顕著に出ているという現状です。
  そうした中、同社では今年後半から来年に向けてのフォーバルグループの有り方、方向性を構築している最中です。フォーバルグループの特徴を最大限に発揮し、これから到来する変化を大きなチャンスと捉え再度飛躍するための土台作りです。

 変化はチャンスと書きましたが、同社にとってはまさにそのとおりの環境といえます。 まず通信においては、ブロードバンドの普及が大きな鍵でしょう。複数の方式があるとしても、「選ぶ立場」にいる同社にとっては大きなビジネスチャンスの到来です。

 また、通信インフラの変化に伴い、ハードウェアの置き換えも当然進んでいくことが予想されます。常時接続が常識化していけば、その過程で今まで使っていたハードよりも安価でかつ効率の良いハードに乗り換える動きも出てくるでしょうし、新たにハードを導入する企業も増加することが期待されます。(従業員10人未満の企業においてインターネットは40%しか普及していない)
 このように常時接続が普及すれば、本格的なコンテンツの供給が始まります。B to Bがメインの同社にとっては、有料のコンテンツ提供による売上増加も期待できますし、前述のように請求業務機能をもっていることから、非常に確実性、安定性の高いビジネスとなることが予想されます。

 現在、グループ全体において問題点を整理し、次の変化の為の準備を行っており、今年中にはメリハリの効いた方向付けを発表したいということです。そして、「個人投資家の皆さんには、顧客をつかんでいる足腰の強さ、情報通信全般に対応できるといったフォーバルの強み、特徴を御理解の上、1―2年後のフォーバルに是非期待して欲しい」というのが大久保社長のメッセージです。
 26歳で会社を作った社長は現在46歳。フォーバルをきっちりと後継者にバトンタッチする為にも、今まで以上に燃えて、集中してビジネスに取り組んでいるとのお話には、熱いエネルギーをヒシヒシと感じました。

  足元の状況に関しては、慎重な見方をされているようですが、今後の成長に向けて大きなチャンスを見て取ったのでしょう。同社の動きに要注目です。