株主総会の延期や有報期限の延長など、コロナが企業実務/投資家に与える影響を解説!
この記事の結論
・コロナの影響で有報の提出期限が延長される
・それに伴い株主総会の開催延期の可能性も
・有事の対応で、企業の投資家へのスタンスが分かるかも
コロナの影響で有報の提出期限が延期!
新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が発令されている今、企業決算にも様々な影響が及んでいます。
金融庁は、各上場企業に有価証券報告書(有報)の提出期限の一律延期を容認しました。
有報は、企業が決算等の報告をするための書類だワン!
なんで延期されたの?
コロナ禍での売上の大幅な減少により業績予想が難しくなっていたり 、在宅勤務やビルの立ち入り禁止等により財務情報の集計が難しくなっているためです。
投資家にとっては企業からの情報開示は投資をするにあたっての重要な判断材料になるため、企業は信頼性を十分に確保した情報を開示する必要があります。
そのため、監査を終えた信頼できる情報を企業に開示してもらうために、今回のように提出期限の延期を認めました。
株主総会はどうなるの?
法務省は、「会社法上、株主総会の延期は可能である」としているものの、実際に株主総会の日程を延期するのはかなりハードルが高いです。
そこで、金融庁は2段階の開催も可能であると示しました。
2段階の開催とは?
通常、株主総会は決算期末(厳密には基準日)から3ヶ月以内に一回だけ行われます。
ただ、今回のように決算の集計が難しい場合には、株主総会に間に合わない可能性もあります。
そこで、通常の株主総会の後に「継続会」と呼ばれる2回目の株主総会を実施することを検討しているのです。
この場合、まず一回目の株主総会では取締役の選任・配当金額などを決定します。
そして、二回目の株主総会に当たる継続会では決算承認を行います。
取締役会で配当が決定できれば1回の開催でもOK
ある条件を満たせば、配当額を株主総会ではなく取締役会で決定することができます。
「ある条件」というのは、以下の5つの条件です。
・取締役の任期が1年
・監査役会設置会社
・会計監査人設置会社
・定款に「剰余金の配当につき取締役会で定めることができる」と記載
・会社計算規則第155条の要件を全て満たしている
このような企業は、基準日(基本的には決算期末)の株主に配当金を分配し、その上で総会の延期が可能になります。
満たしている企業は多くなさそうだなぁ
その通りで、配当決議が取締役会で可能なのは上場企業の約3割となっています。
例えば、株式会社レイ(4317)は4月16日に配当金決議の適時開示を出しました。
動画での開催も!
決算の集計があまり滞らず、基準日から3ヶ月以内に株主総会を開催できる企業の場合は、コロナウイルスの感染防止策として「ライブ配信」を活用した株主総会を開催することもできます。
ライブ配信での株主総会は経済産業省も指針を出しています。
また、IR支援専門の(株)インベストメントブリッジでは、低コストで株主総会のライブ配信を実施できるサービスの提供も始めているそうです。
なんで株主総会の延期は難しいの?
一番大きな障害は、前述した配当金です。
株主総会を1回で済ませようと延期するには「基準日」を変更しなければいけないのですが、そうすると基準日前に株を取得し、その後売ってしまった投資家は配当金をもらえなくなってしまいます。
配当金について詳しくは、以下の記事もご参照ください!
株主総会の日程を延期するには
大まかな流れは以下のようになります。
- 基準日を動かす
- 定款を変更する
- 株主総会の特別決議を行う
株主総会は株主の権利を確定する「基準日」から3ヶ月以内に開催する必要があります。
日程を延期する場合には、取締役会を開催して基準日を変更する必要が生じてしまいます。
また、基準日を変更するには会社の定款を変更する必要があり、定款を変更するには株主総会での特別決議、議事録の作成、法務局での登記、税務署への届け出、議事録の保管…などなど様々な手続きが必要になってくるのです。
よって単純に株主総会を延期するのは中々ハードルが高いです。
そこで、2段階での実施も可能と金融庁は再度示したのですが、その場合も会場の手配や収集通知の記載方法など、企業や投資家にとって負担がかかってしまいそうですね。
投資家の目線!!
有報や決算短信、株主総会は全てが繋がっているため、どれか一つでも遅れてしまうと他も連動的に遅れが生じてしまいます。
このような有事の際にどのような対応を取るのか?
企業の考え方/投資家との対話姿勢が明るみに出てきそうですね。
投資家の方は、投資先/候補先の対応をじっくり観察しておきましょう!