この記事の結論
- 量子コンピューターとは、量子の性質を用いて高速で計算できるコンピューター
- 量子暗号通信とは、量子コンピューターでも解読が困難な暗号技術
- アメリカや中国を中心に世界中で量子科学技術の研究が進められている
私たちの未来を変えるとまで言われ、最近テクノロジー分野で話題となっている「量子コンピューター」「量子暗号通信」をご存じでしょうか。
聞いたことはあるけど、なんだか難しそう…
ご安心ください。
今回は、テクノロジー分野が苦手な方にもわかりやすく、量子コンピューターの仕組みや注目されている理由を解説していきます。
量子コンピューターとは
量子コンピューターとは、量子の性質を使うことで、現在のコンピューターより処理能力を高めたコンピューターです。
ただ、「量子コンピューター」と聞いて
そもそも量子って?
と疑問に思った方も多いでしょう。
まず量子とは、「物質を形作る原子や電子のような、とても小さな物質やエネルギーの単位」のことです。
その大きさはナノサイズ(1メートルの10億分の1)のため、私たち人間の目には見えません。
量子の世界では、私たちが高校で習う物理学の常識が当てはまらないような現象が起こります。
- 古典力学:マクロな物体がどのような運動をするのかを扱う理論体系
- 量子力学:ミクロな世界で起こる物理現象を扱う理論体系
高校で習う物理は古典力学ってことか!
つまり、常識では理解できないような量子の性質を使うことで、現在のコンピューターよりはるかに処理能力を高めることを可能にしたのが、量子コンピューターです。
量子コンピューターと従来のコンピューターの違い
では、量子コンピューターと従来のコンピューターは何が異なるのでしょうか。
一言でいえば、量子コンピューターの方が計算スピードが速いです。
普段私たちは高速の計算をしたり、情報を保存する際にコンピューターを使います。
しかし、情報社会が複雑化するにつれて、従来のコンピューターでは解決できないような問題が発生してしまっています。
そこで注目されているのが量子コンピューターです。
量子コンピューターは量子ビットが「0」でも「1」でもあるという「重ね合わせ」の状態をうまく利用することで、計算が高速で出来るようになっています。
従来のコンピューター
ビットと呼ばれる最小単位「0」「1」のどちらかを用いて情報処理を行う。
量子コンピューター
量子ビットと呼ばれる最小単位「0」「1」のどちらも取りながら情報処理を行う。
量子コンピューターの可能性
量子コンピューターは桁違いの計算処理能力を有しているので、数え切れないほどのパターンの中から最適なパターンを導き出すことができます。
実際にどう活かせるの?
有名な例として、「巡回セールスマン問題」があります。
巡回セールスマン問題
セールスマンが複数の家を巡回し出発地点に戻る場合、
どのような順番で回れば最短時間で戻ってこれるか?
巡回セールスマン問題のような「組み合わせ最適化問題」は、従来のコンピューターでは計算するのに時間がかかってしまいました。
しかし量子コンピューターであれば高速で計算することが可能です。
このように量子コンピューターを活用すれば、物流業界や社会インフラ、医療や農業などに潜む「組み合わせ最適化問題」を、今までにないスピードで解決できるとされています。
配送コストダウンや既存薬の改良、資産運用にも役立つワン!
量子コンピューターの危険性
量子コンピューターには数多くの可能性がありますが、実は危険性も含まれます。
それは、セキュリティーリスクに関する問題です。
量子コンピューターは既存の暗号通信を高速で解読できてしまいます。
そのため、金融業界などで幅広く用いられている暗号通信が容易に解読されてしまうリスクがあるのです。
大量のデータが流出しちゃう可能性があるんだね…
このようなリスクに対応するには、既存の暗号通信に代わる技術を実用化する必要があります。
そこで開発が進められているのが、量子コンピューターにも耐え得る「量子暗号通信」です。
量子暗号通信とは
量子暗号通信とは、量子力学を用いた、量子コンピューターでも解読不可能な暗号技術です。
すごい!どういう仕組み何だろう?
量子暗号通信は以下の3ステップを踏む仕組みになっています。
- 暗号化されて送られる情報とは別に、光の最小単位「光子」の状態で暗号鍵を送る
- 攻撃者がハッキングすると、光子の状態が変化する(ハッキングされたことを察知)
- 盗聴やハッキングを察知すると、新しい暗号鍵に変更される
量子コンピューターと量子暗号通信の違い
量子コンピューターと量子暗号通信…混乱しちゃう…
少しややこしいので、「量子コンピューター」と「量子暗号通信」のそれぞれの役割に混乱する方も多いかもしれません。
両社の違いを簡潔にまとめると、以下の通りになります。
量子コンピューター
量子力学を用いることで、今までにない速さでの情報処理を可能にしたコンピューター
量子暗号通信
量子コンピューターでも解読できない、セキュリティー強化のための暗号技術
量子技術を巡る世界での覇権争い
国防問題にもかかわる量子技術の研究は現在世界中で活発に行われています。
その中でも特に激しい争いが繰り広げられているのが、アメリカと中国です。
アメリカ
2019年にGoogleは、世界最速のスパコンで1万年かかる計算を量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」で200秒で実行したと発表。
IBMは、同社の量子コンピューターの性能が2021年末までに100倍に達すると発表。
さすがアメリカ!すごいね!
中国
2020年に中国の研究チームが「九章(ヂォウジャン)」と呼ばれる量子コンピューターで、世界第3位の強力なスーパーコンピューターでも20億年以上かかる計算を数分で終えたと発表。
アリババ集団などの有名企業も量子分野で急成長中。
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アメリカと中国は世界の2大国ということもあり、両社の争いは今後も激化することが予想できます。
日本の注目企業・関連銘柄3選
もちろん、日本企業も量子技術で世界最先端を誇ります。
総務省は2020年に「量子技術イノベーション戦略」を発表し、量子技術イノベーション会議を開催しました。
世界の量子技術競争に日本も参戦しているんだね!
そこで最後に、日本の注目企業として以下の3社をご紹介致します。
- 東芝(6502)
- NTTデータ(9613)
- NEC(6701)
東芝(6502)
日本を代表する電気機器メーカー。
2020年10月に量子暗号通信を使った事業を始めると発表。
30年度までに量子暗号通信に関する世界市場のシェア約25%獲得を目指す。
NTTデータ(9613)
NTTの子会社で、世界有数のIT企業。
量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボのサービスを2019年より開始。
NEC(6701)
国内最大級のコンピューターメーカー。
2021年にはオーストリアのベンチャー企業と量子コンピューターの開発を開始。
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量子コンピューター・量子暗号通信のまとめ
ここまで量子コンピューターや量子暗号技術の仕組み・違いについて見てきました。
最後に大事な点を3つにまとめます。
- 量子コンピューターとは、量子の性質を用いて高速で計算できるコンピューター
- 量子暗号通信とは、量子コンピューターでも解読が困難な暗号技術
- アメリカや中国を中心に世界中で量子科学技術の研究が進められている
私たちの未来を大きく変える量子科学技術に注目していきましょう!