この記事の結論
- レナウン倒産の理由はEC(Eコマース)失敗と親会社問題
- 民事再生をすることで、倒産後も会社経営ができる
- 民事再生になると、1か月後に上場廃止になる
2020年5月15日に株式会社レナウン(3606)が民事再生手続きを受けることが明らかになりました。
これにより、同社は6月16日に上場廃止となります。
・・・上の文章を読んで、「何が起きているのか」理解できる人は案外少ないかもしれません。
- レナウンってどんな会社なの?
- 民事再生手続きって何?
- 上場廃止になると、どんなことが起きるの?
この記事を読み終わる頃には、こうした疑問がすべて解決します!
レナウンってどんな会社?
まず、レナウンとはどのような会社なのか確認しましょう。
株式会社レナウンは1902年創業の老舗アパレル会社で、メンズからレディスまで幅広い衣類を扱っています。
例えば、「SIMPLE LIFE」はレナウンが売り出していたブランドの1つで、自分を偽らない生き方、「Be simple life ー シンプルに生きよう!」をコンセプトとした女性用普段着を作り出してきました。
SIMPLE LIFEは1975年から続くブランドで、2019年度の売上は24億円と熱い支持を受けてきました。
他にもメンズだと、D’URBANとか聞いたことある!
しかし、2008年のリーマンショックをきっかけに株価が大幅に下落、それ以降レナウンの株価は伸び悩むようになりました。
そして2013年には中国の山東如意科技集団がレナウンの株を53.35%保有したため、レナウンは山東グループに入ることになりました。
レナウン倒産の理由は?
これほど長年支持されてきたレナウンですが、一体なぜ倒産してしまったのでしょうか?
原因は大きく分けて2つあると考えられます。
レナウンは時代の流れに乗れていなかった!?
レナウンが倒産した理由の1つが、時代の流れに乗れていなかったことだと言えます。
時代の流れに乗れていなかったってどういうこと?
下のグラフをご覧ください。
上のグラフは2019年12月期のチャネル別売上高構成比を示したグラフです。
グラフから分かる通り、百貨店、GMS(総合スーパー)、SC(ショッピングセンター)での売上が合計で8割以上を占めています。
一方、レナウンと同様、アパレル会社の株式会社ANAP (3189)の売上高構成比は以下のようになっています。
多くのアパレル会社は、ANAPのようにEC(Eコマース)の重要性に気づき、店舗販売だけではなく、オンラインでの商品販売に注力してきました。
一方で、レナウンは長年ECを運営していたにも関わらず、ECが占める売上は全体の3%に留まっています。
ECが売上の半分以上を占めているANAPとは収益形態が全然違うね
Amazonなどによってネット購入が一般化しつつある環境下でも、レナウンはネット販売に注力しきれなかったのです。
そこへ追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスが発生し、外出規制が発表されました。
これによって、百貨店やGMSは休業に追い込まれ、売上が激減したのです。
親会社からお金が返ってこなかった?
もう1つの理由は親会社とのお金のやり取りにあります。
実は、レナウンの親会社「山東如意科技集団」からレナウンはお金を回収できなかったのです。
レナウンは山東如意科技集団に掛けで商品を販売していました。
掛けで販売するというのを図解すると以下のようになります。
レナウンは山東如意科技集団に商品を販売します。
本来ならば山東如意科技集団は商品の価値に見合ったお金や有価証券をレナウンに渡さなければいけません。
しかし、レナウンと山東如意科技集団は同じグループ内にいるため、山東如意科技集団はレナウンへの支払いを待ってもらうよう交渉することができます。
このように、商品を売ってから対価が手元に来るまで、タイムラグのある売り方で販売することを掛け売りと呼びます。
(逆に、山東如意科技集団のように掛けで購入することを掛け買いと呼びます。)
会社同士が長年の付き合いだったり、同じグループ内にいるなど、強い信頼関係がある場合に掛け売り、掛け買いをすることができるんだワン!
こうしてレナウンは売上はあげたものの、手元には現金のない状態に陥っていたのです。
2019年12月期の最終赤字は67億円にも及び、53億円もの資金を山東如意科技集団から回収できていませんでした。
そして資金繰りがうまくいかなくなったのも一つの要因となり、レナウンは倒産してしまいました。
レナウンは民事再生手続きに入る
以上のような理由で倒産したレナウンは今後どのようになるのでしょうか。
民事再生とは?
一般的に会社が倒産した場合、会社には2つの選択肢があります。
「破産」か「民事再生」です。
破産の場合、会社の財産は債権を有する人に分配されます。
全ての財産が分配されたら会社には何も残らないため、会社は消滅したことになります。
しかし、レナウンは民事再生という選択をしました。
民事再生とは、どのように会社を立て直していくのか計画した「再生計画案」を基に、事業を継続していくことを意味します。
でもどうやったら事業を継続させられるの?
民事再生を申請すると、返済義務のあるお金の一部を払うことで残りを免除してもらったり、減税によって経営状況が楽になります。
一方で民事再生にはデメリットも存在します。
- ブランド力の低下
- 取引先などの社会的信用の低下
- 民事再生にかかるコスト(裁判所に納める予納金や弁護士報酬)
民事再生を宣言すればブランド力に影響が出てきます。
レナウンはブランドを大切にしてきた会社なので、ブランド力の低下は売上悪化にも直結します。
また、返済能力に疑問を抱いた銀行や取引先からも、以前のような信頼は寄せてもらえなくなるため、業務に支障が出てくる可能性もあります。
さらに、民事再生に協力してもらう弁護士には数百万~数千万円規模の報酬を支払う必要があるほか、財政健全化を図るための人件費のカット(リストラなど)を検討する必要も出てきます。
会社を残せるのはうれしいけど、嫌なことも想定しないといけないんだね…
整理銘柄って?
もう一つ、違う観点からレナウンの今後について注目点があります。
レナウンは東証一部に上場している会社です。
つまり、レナウンの株式は市場で売買されているのです。
民事再生となる場合、レナウンの株はどのような扱いを受けるのでしょうか?
結論から言うと、原則として一か月後に株の売買ができなくなってしまいます(上場廃止)。
このような処理をうける株を整理銘柄と呼びます。
整理銘柄に関しては、以下の記事で詳しく解説しています!