新しいNISAがスタートしてから約半年が経ちました。
日経平均は最高値を更新した一方で、米ブラックマンデーを超える暴落幅を記録するなど不安定な相場が続いています。
このような中、投資経験のなかった方は、どのような点に意識して取り組めば良いのか悩んでいる方も多いでしょう。
そこで今回は、広島経済大学にて統計学の研究をされている高石教授にインタビューを実施。リスク予測や下落時の対応、投資初心者が心がけるべきことについてインタビューしました。
リスク予測の面白さとは?
ー高石先生の経歴と現在の研究内容を改めてお伺いできますでしょうか?
高石先生:元々は、物理の分野でモンテカルロ法を利用した研究をしていました。
現在は、広島経済大学にて主に金融のデータを分析しています。
具体的には、変動する株価の動きを捉えるようなモデルを推定したり、将来的に株価がどのように変動するかを研究しています。
ただ、将来の株価を予測できれば利益を出すことができる一方で、実際に価格を予測することは非常に難しいです。
私が扱っているモデルは、ボラティリティ変動の大きさを推定しています。
統計的に、変動がどうなっているのかを見てモデルを導入し、そのモデルのパラメーターを推定することで、将来の変動の大きさを予測するのです。
ーリスク予測の面白さはどういったところにあるのでしょうか?
高石先生:私の興味は、金融データの価格自身を予測するというよりかは、日々上がったり下がったりしている価格の変動がどういうメカニズムを原因として起こっているかにあります。
それを調べるために金融の生のデータを統計的に分析したりして、どうなっているのかを明らかにしたいと思っています。
一般的に、価格はランダムに変動しているのではないかと言われています。
一番単純な価格変動のモデルは、価格がランダムウォークをしているモデルです。
ランダムウォークモデルでは収益率分布は正規分布になります。
ところが、実際の金融データを分析すると、正規分布から離れたような分布になることが多い。
正規分布では何千年、何万年に1回しか起きないような変動も、実際はかなり頻繁に起きています。
しかもそれが特定の株価だけでなく、普遍的に株価以外にも為替の変動や暗号資産の変動にも広く見られます。
多くの金融資産に共通に見られる性質に対して、統計的に分析した結果が表すダイナミクスやモデルがどうなっているのか明らかにしたいという気持ちが、研究のモチベーションになっているのかもしれません。
株価が下落時の対応
ー投資初心者は下落時にどのような行動や考え方が必要だとお考えですか?
高石先生:始めたばかりの方にとっては、自分の資産が減ってしまった事実に対して大きな動揺があると思います。
では、どうすれば良いのかというと、そこがまた難しい。
長期的に保有していれば持ち直すのではないかとの考え方もありますが、失われた30年のように日本は長期的に株価が低迷していた過去がありますよね。
今後しばらくの間は、株価が乱降下する可能性がありますので、投資初心者の方は手を出さないことも一つだと思います。
そして、相場が安定してきてから始めてみてはいかがでしょうか。
金融におけるモンテカルロ法
ーモンテカルロ法と聞き、真っ先に浮かんだのがカジノの攻略法だったのですが、モンテカルロ法をどのように金融へ活用していますか。
モンテカルロ法という言葉自体は、乱数を用いて何か調べものをすることであり、「モンテカルロ法=特定の分野や特定のこと」に限定されているわけではありません。
例えば、金融資産(株価・為替の変動)が正規分布に従って変動しているのであれば、今後10日後にどのくらい変動しているのかを知りたい場合に、乱数を振って、どのような変動が起きるのかというシミュレーションを行い、目的とする量を算出します。
正規分布の場合は、乱数を振らなくても解析的にわかるのですが、もう少し複雑なモデルで、解析的に分からないモデルなどに対して乱数を振って、どのような変動になるのかを調べています。
初心者が投資をする上で心得るべきこと
ー研究でご使用されているモンテカルロ法について、投資初心者はどのような活用法がありますか?
初心者の方がモデルを用いて、乱数を振ってシミュレーションする必要はあまりないかと思います。
やはり初めのうちは、慌てずに長期的な視点で始めることが重要ではないでしょうか。
短期的な売買で利益を上げるファンドマネージャーもいますが、連続して市場に勝つことは非常に難しいと聞いています。
特に投資初心者は、インデックスに連動する投資信託から始めることが最適でしょう。