毎週月曜日に更新する『投資初心者向け注目ニュース』では、いろはにマネー会員様に向けて、先週の振り返りや今週の注目トピックを分かりやすくお伝えします。
今週も、いろはにマネー編集長の曽根原がお届けします!
ネット証券がマズい!?大手4社の決算を見ると…
5月9日、SBI証券を除く日本のネット証券大手4社の2024年3月期決算が出そろいました。
1月の新NISA導入で多くの人が口座開設へと踏み切りましたが、果たしてネット証券には追い風になったのでしょうか。
決算の概要は以下の通り。
当期営業収益 | 前年同期比 | 当期純利益 | 前年同期比 | |
---|---|---|---|---|
楽天証券 | 311.77億円 | +26.6% | 48.53億円 | +26.1% |
マネックス証券 | – | – | 4.75億円 | +30.5% |
松井証券 | 113.08億円 | +39.4% | 27.61億円 | +45.4% |
auカブコム証券 | 65.34億円 | +35.6% | 8.77億円 | +55.5% |
どの証券会社も、かなり純利益が伸びていますね!
4社を平均すると、前年同期比で約39%ほど純利益を伸ばしていることがわかります。
2024年1月〜3月といえば、新NISAの開始や日経平均の驚異的な伸びを強く記憶している方もいらっしゃるでしょう。
実際、ネット証券大手5社は2024年に入ってから順調に口座開設数を増やし、規模を拡大しています。
一方で、これらの要素は必ずしも利益に直接結びついていたわけではありません。
というのも、新NISAでの取引は全証券会社で手数料が無料。
いくら新NISAが流行ろうが、証券会社に利益は1円も入ってこないというわけです。
また、楽天証券やSBI証券はNISA以外での日本株取引も手数料無料にしているため、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新し、取引量が大幅に増加した際も大きな増収にはつながりませんでした。
最近の「投資ブーム」は収益にあまり影響しなかったようです…!
今回、ネット証券会社が大きく利益を伸ばした背景には、信用取引や外為証拠金取引(FX)などでの増収が挙げられます。
信用取引・FXとは?
信用取引
- 所有している資産を担保にした株式の貸借を通じて、より大きい単位での株式売買を行う取引
- 一般的な現物の株取引に比べてハイリスク・ハイリターンの取引が行われる
- トレーダーと証券会社の間で株式や現金の貸借が行われるため手数料が高い
外為証拠金取引(FX)
- 為替レートの変動から利益を狙う取引
- 保有資産を担保に通貨の貸借を行うことで、ハイリスク・ハイリターンな取引を行うことができる
- 一般的に株取引よりも手数料が高い
信用取引やFXについてもっと詳しくは知りたい方は【図解あり】信用取引とは?信用買いや空売りのリスク・メリットをわかりやすく解説やFXとは?稼げるの?初心者に向けて分かりやすく解説!【入門編】の記事も併せてご覧ください。
日本経済新聞によれば、信用取引での手数料増加や取引量増加に加えて、歴史的な円安に伴う為替取引での取引量増加が、各社の増収に大きく貢献したようです。
新NISAで投資を始めた個人投資家が信用取引やFXまで手を広げることを見越し、今後もネット証券の増収が見込めるという声がある一方で、一部では手数料競争のしわ寄せが出始めているという声も。
現に、最大手2社である楽天証券とSBI証券は手数料競争の末に大きく収益率を落としており、23年10〜12月期の純利益は同7〜9月期と比べてSBI証券が16%減、楽天証券が83%減。
いわゆる「囲い込み戦略」を行なっている両者ですが、その負担は数字にも現れ始めていると言えるでしょう。
SBI証券では、クレカ積立の還元率低下といった形でも手数料競争のしわ寄せが現れ始めています…
日本株や海外株の取引手数料が下がるのは個人投資家にとって嬉しいことですが、そのしわ寄せでポイント還元率の低下や信用取引・FXの手数料増加が起こると考えると、良いことばかりではありません。