2024年に入り、アメリカのS&P500、日本の日経平均ともに最高値をつけてきました。
ですが、7月下旬から株価は急降下。8月に入ってからも株価は下げ止まりません。
今回は、30年超のベテランアナリストである森本 章氏に株価下落の理由や、個人投資家はどう動くべきか詳しくお話を伺いました。
※インタビューは7月30日に実施。
S&P500・日経平均とも最高値からの急落。その理由は?
S&P500、日経平均ともに7月前半には最高値を付けました。ですが、ここ数週間は大きく株価が下がっています。
どのような理由が考えられますか?
まず、7月に株価が上昇した要因としてアメリカの利下げ観測が高まったことが挙げられます。
それに加えて、日本独特の理由もありました。
それは、7月11日のオプションSQ値決定に向けての売買です。
外資系証券を中心に先物を大量に買って、SQ値で利益を取りに行くという動きがあったと考えられます。
これらの要因で株価が上がっていたところで、7月11日のCPI発表がありました。
これが市場予想を下回ったこと、同時に日銀による円買い介入もあったことで大きく円高へと動きました。
SQ値に向けた買いが終わっていたこともあり、過熱感が急速に解消されて株価下落の流れになったと考えられます。
今回の動きはかなり異常で、上にも行き過ぎて下にも行き過ぎだと思います。
日経平均25日移動平均線との乖離率を見ると、最高値の時は6.5%、下落局面では-5.5%となっていますが、5%を超える乖離は普通では見られません。
※編集部注:8月2日時点での乖離率は-9.8%。
日経平均のバリュエーションを見ると…
少し視点を変えて、日経平均のバリュエーションでも見てみましょう。
日経平均の株価収益率(PER)は、だいたい13倍~17倍で動きます。
今期の予想を上振れるだろうということであればPER17倍まで行き、逆に下振れるだろうということであれば13倍に近づきます。
7月11日の最高値時にPERは17.58倍まで上がりました。これは日経平均に対してかなり強気の姿勢です。
その後、円高方向に振れたことで市場は弱気姿勢に変わっていき、徐々にニュートラル(15倍程)へ動いています。
日経平均のPERを見ても、7月上旬からの値上がりには過熱感があったと言えます。
PERについては、11月頃に3月決算企業の上期決算が出てくることで大きく変わる可能性もあります。
上期決算で今期予想に対する上振れ・下振れが見えてきて、それに伴い来期の予想EPSを投資家が予見し始めるためです。
夏(8-9月)は3月決算企業の1Q決算なので、来期EPS・PERに対する影響は少ないです。
また、「夏枯れ相場」といわれることもあり、基本的に夏は株価が下がる傾向にあります。
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夏枯れ相場は当たり前のこと
夏枯れ相場とは、何でしょうか?
「夏枯れ相場」とは、例年7月中旬以降に売買が細り、株式市場が軟調になることです。
“Sell in May, and go away,don’t come back until St Leger day.”という言葉をご存じですか?
これは昔から伝わる慣用句で、「5月に売って、セントレジャーズデイ(9月)まで戻ってくるな」という意味です。
この慣用句からわかるように、「5月に売って、9月に安く買い入れろ」という謂れは昔から存在していました。
そして、その理由として考えられるのが以下の2つです。
- 夏休みによる市場参加者の減少
- ジャクソンホール会議
夏休みによる市場参加者の減少
7月から9月は、夏休みの影響で市場参加者が減ります。
特に欧米だと、長期休みをとってバケーションへ行く投資家が増えます。
実際、昔に私が大阪で営業をやっていた頃、お客さんに「高校野球が始まったら株はお休み」と言われたこともありました。
また、5月に本決算が出ることで、6月-7月にポートフォリオを調整(買い売り)し、8月に休むような動きも見られます。
夏の期間は、ちょうど決算のはざまというのもあるのですね。
ジャクソンホール会議
ジャクソンホール会議は、毎年8月下旬に開催される経済シンポジウムで、今年は8月22日~24日に開かれる予定です。
世界各国の政治家・学者・金融市場関係者が参加して、経済政策について討論する、FOMCと同じくらい注目される重要なイベントとなっています。