日産の株価がとても安いね、今は買うべきタイミングなのかな?
このようなお悩みを解決します。
🔰いろはに結論
以下の理由から、日産の株を買うことをおすすめしません。
- 営業利益99%減、円高が追い打ちで見通しが悪い
- 配当利回りは6.5%と高いが、業績の悪化により減配の可能性もありうる
- 強みであるEV車も、現在は競合に後れを取っている
日産自動車(以下:日産)は、トヨタ自動車や本田技研工業と並んで、国内3大自動車メーカーの1つとされています。
そんな日産の株価は大きく下落し、9月時点で配当利回りは6.5%となっているワン
また、PBRも0.23倍と非常に割安な状態が続いているため、購入を検討している方も多いはず。
そこで今回は、割安とされる日産の株を買うべきかどうか、初心者の方にもわかりやすく解説します。
日産の株は買うべきか?理由を3つ解説
💡このパートの要約
日産の株を買うことをおすすめしません。
- 営業利益99%減、円高が追い打ちで見通しが悪い
- 配当利回りは6.5%と高いが、業績の悪化により減配の可能性もありうる
- 強みであるEV車も、現在は競合に後れを取っている
以下では、日産の株を買うことをおすすめしない理由を3つご紹介します。
順番に見ていきましょう。
営業利益99%減の衝撃
日産の株を買うことをおすすめしない理由の一つ目として、2025年3月期第1四半期の営業利益が99%減少したことが挙げられます。
主な原因は、競争が激化する中で販売費用が増加したためです。
半導体不足が解消され、自動車の供給が回復したことで競争が激化し、メーカーがディーラーに支払う販売奨励金(インセンティブ)が増加しました。
1年前と比較してインセンティブが25~30%上昇しているワン
この結果、販管費が増大し、利益が大幅に減少しました。
さらに、日産は1ドル155円を想定しているものの、現在は円高傾向が続いており、業績の見通しにも大きな影響を与えることが予想されます。
対ドル1円の違いは営業利益で約100億円の差となります。
つまり、直近の為替レートが145円付近を推移していることを考えると、現在の利益予想5,000億円から1,000億円程度下方修正される恐れがあります。
今後も業績が回復しにくい状況が続くかもしれないね
輸出企業である日産にとって、円高は利益を圧縮する要因となり、今後の業績見通しにも不安が残ります。
このように、業績が非常に厳しく、今後の見通しも不透明なことが、日産の株価が上昇しない原因の1つと言えるでしょう。
減配の可能性
日産の株を買うことをおすすめしない理由の二つ目は、減配の可能性があることです。
2024年9月時点で、日産の配当利回りは約6.5%と非常に高い水準にあります。
この利回りの高さに注目し、日産株の購入を検討している方も多いかもしれません。
しかし、現状を考慮すると、減配のリスクも無視できない状況です。
業績が悪い中、配当をきちんと払えるかは不安だね
まず、日産の業績は悪化しており、特に営業利益が大幅に減少しています。
このため、今後の配当を維持するための余裕が少なくなり、減配の可能性が高まっています。
企業として、利益が出ていない状況で配当を続けるのは難しく、株主への還元が見直しされる可能性もあります。
ここで、日産の直近6年間の1株あたりの年間配当金を見てみましょう。
年間 | 中間 | 期末 | |
---|---|---|---|
2019年3月期 | 57円 | 28.5円 | 28.5円 |
2020年3月期 | 10円 | 10円 | 0円 |
2021年3月期 | 0円 | 0円 | 0円 |
2022年3月期 | 5円 | 0円 | 5円 |
2023年3月期 | 10円 | 0円 | 10円 |
2024年3月期 | 20円 | 5円 | 15円 |
2025年3月期(予想) | 25円 | ー | ー |
※2025年3月期の年間配当金(予想)における中間及び期末の配分は未定
2019年に大幅な減配を発表した際には、株価が急落しました。
今回も業績の悪化とともに、自己資本比率が30.1%と業界内で比較的低いことから、減配の懸念が強まっています。
S&Pの格付けでは「BB+」とジャンク級だワン
配当利回りの高さだけでなく、業績や今後のリスクも十分に考慮して、慎重に判断する必要があります。
EV市場での存在感の低下
かつて「リーフ」でEV市場をリードしていた日産ですが、最近では革新的な新モデルの投入がなく、テスラやBYDのような強力な競合に対して存在感を失っています。
2023年のEV販売台数は、テスラが180万台、BYDが157万台だったのに対し、日産は14万台弱にとどまっています。
そこで日産は、ホンダと三菱自動車と戦略パートナーシップを結び、EV(電気自動車)やソフトウェアに関連する領域で協業しました。
EVシフトが遅れている3社が協力し、将来性を左右するとされるEVでの巻き返しを図っています。
3社の協業で、どれほどの結果が得られるか注目だね
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日産の事業内容・業績
💡このパートの要約
- 自動車事業と販売金融事業を展開しており、売上の約90%は自動車事業
- 2025年3月期第1四半期での営業利益99%減
- 欧米での販売台数は増加しているものの、中国市場では苦戦
ここでは日産の基本情報についてまとめます。
以下の2つの情報について詳しく見ていきましょう。
事業内容
日産は、自動車事業と販売金融事業を展開しており、売上の約90%は自動車事業となっています。
自動車事業では、車の設計・製造・販売を行い、販売金融事業では主にグループ製品の販売金融やリースを手掛けています。
「技術の日産」といわれるほど技術力が高く、運転支援システムの「プロパイロット」や独自開発の「e-POWER」といった先進技術に強みがあります。
国内メーカーの中で、EV車の販売台数が一番多いのが日産だよ
電気自動車については、以下の4種がラインナップされています。
また、ガソリンエンジンとモーターを融合した電動車(e-POWER)は以下の5つです。
また、日産は国内だけではなく、世界中で年間約340万台(23年度実績)もの車を製造しています。
海外での売上台数が8割を超えており、円安の影響を受けやすい企業であると言えるでしょう。
特に、環境規制が厳しい欧州でのEV車販売は、前年比+7.6%と比較的好調のようです。
業績
日産の2025年3月期は、売上高140,000億円(前年同期比+10.4%)、営業利益50億円(前年同期比-12.1%)を予想しています。
単位:億円 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期(予想) |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 78,626 | 84,246 | 105,967 | 126,857 | 140,000 |
営業利益 | -1,507 | 2,473 | 3,771 | 5,687 | 5,000 |
純利益 | -4,487 | 2,155 | 2,219 | 4,266 | 3,000 |
同社HPよりいろはにマネー作成
2025年3月期第1四半期時点で営業利益99%減しているけど、この予想は達成できるのかな?
ディーラーに支払う販売奨励金(インセンティブ)が増加していることや、昨年大幅にモデルチェンジした「ローグ」の販売が低調に終わり在庫過多になっていることなど足元の厳しさは増しています。
2025年3月期の見通しも下方修正しており、業績は低迷しているようです。
続いて、国別のセグメントを見てみましょう。
北米での販売台数が最も多く、年間126万台に達しています。
一方で、欧米での販売台数は増加しているものの、中国市場では格安のBYDなどがシェアを拡大しており、苦戦しています。
日産と同業他社を比較!強みや弱みは?
💡このパートの要約
- コストの高いEV車の製造によって、利益率が低い
- 自己資本比率が比較的低く、有利子負債が多いため、財務安定性に欠ける
- 国内メーカーの中ではEV車の売上が一番大きい
ここでは、自動車メーカー大手である「トヨタ自動車(7203)」や「本田技研工業(7267)」、「スズキ(7269)」と比較した特徴を見ていきましょう。
まずは、以下に各社の業績・財務データをまとめています。
日産 | トヨタ自動車 | 本田技研工業 | スズキ | |
---|---|---|---|---|
時価総額(億円) | 13,983 | 324,077 | 70,262 | 29,072 |
売上高(億円) | 126857 | 45,095,3 | 20,428,8 | 5,374,2 |
営業利益(億円) | 568,7 | 5,352,9 | 1,381,9 | 465,5 |
営業利益率 | 4.5% | 11.9% | 6.8% | 8.7% |
当期純利益(億円) | 426,6 | 4,944,9 | 1,107,1 | 267,7 |
純利益率 | 3.4% | 11.0% | 5.4% | 5.0% |
自己資本比率 | 30.1% | 38.0% | 42.8% | 48.8% |
有利子負債比率 | 132.8% | 46.8% | 80.0% | 26.6% |
PER(株価収益率) | 4.7倍 | 9.1倍 | 7.0倍 | 9.4倍 |
PBR(株価純資産倍率) | 0.2倍 | 0.9倍 | 0.5倍 | 1.0倍 |
配当利回り | 6.5% | ー | 4.7% | 2.4% |
自動車メーカーはPERやPBRが低くて比較的割安なんだね
その他に以下の3つが挙げられます。
利益率が低い
まず、日産は競合と比べて、利益率が低いことが挙げられます。
日産 | トヨタ自動車 | 本田技研工業 | スズキ | |
---|---|---|---|---|
営業利益率 | 4.5% | 11.9% | 6.8% | 8.7% |
純利益率 | 3.4% | 11.0% | 5.4% | 5.0% |
この理由は、電気自動車(EV)よりハイブリッド車(HV)やガソリン車の方が収益性が高いからです。
一般的にコストの高いEVは利益率を低下させ、経営を圧迫すると言われているね
トヨタや本田はハイブリッド車に強みを持っており、特にトヨタは「カローラ」や「ヤリス」が欧米でも人気です。
それに対して日産はEV車の販売が中心であるため、利益率が低下しています。
ここ最近はEVメーカーの販売が失速しており、急激な成長で注目を集めていたEVの需要も停滞気味です。
日産は新車投入傾向が低いワン
さらに中国など新興メーカーとの激しい競争がインセンティブを引き上げ、EV市場全体の利益率を引き下げています。
自動車市場が今後どのような方向へ進んでいくか注目です。
自己資本比率が比較的低く、有利子負債が多い
つぎに、自己資本比率が比較的低く、有利子負債が多いということが挙げられます。
日産 | トヨタ自動車 | 本田技研工業 | スズキ | |
---|---|---|---|---|
自己資本比率 | 30.1% | 38.0% | 42.8% | 48.8% |
有利子負債比率 | 132.8% | 46.8% | 80.0% | 26.6% |
日産の自己資本比率は30.1%と同業他社に比べて低く、有利子負債比率が132.8%と有利子負債の割合が高いです。
そのため、財務安定性にかけ、借入コストが増加したり、減配になったりする可能性があります。
経営に支障が出て、業績が悪化してしまうね
日産が財務上の問題を今後どのように改善していくのか注目です。
EV車に強い
日産の強みとして、国内メーカーの中ではEV車の売上が一番大きいということが挙げられます。
日産は、2010年に世界で初めてのEVとして「日産リーフ」を発売しました。
それ以降も日本国内で累計18万台以上のEVを販売し、国内No.1の販売台数となっています。
日産が国内のリーディングカンパニーとして、日本でのEV普及に取り組んでいるよね
ここ最近はEV車の販売が停滞していますが、将来的にはEV市場が急拡大していきます。
そのため、ホンダなど国内メーカーと協業し、日本のEVの遅れを取り戻せるか注目です。
日産の株価や配当は今後どうなる?将来性や見通しを分析
💡このパートの要約
- 業績の悪化や成長性への懸念により、かなり割安な水準となっている
- 中長期的には、ハイブリッド車よりもEV車に重点を置く方針
- 株価はしばらく停滞する可能性が高い
日産の今後はどうなっていくのかな?
将来性や今後の見通しを分析していきます。
かなり割安水準な現在の株価
日産のPBRは0.23倍、PERは4.7倍とかなり割安な水準となっています。
その背景には業績の悪化や成長性への懸念が折り込まれているでしょう。
日産は、自動車メーカーの売上の大部分を占める北米市場において、需要が集まるハイブリッド車を投入できていません。
さらに、テスラやBYDの成長により、EVへの需要の伸びに対しても対応できていません。
現在の自動車業界のトレンドにうまく対応できていないね
これらを踏まえて、市場は日産の計画に厳しい視線を向けていると考えられるでしょう。
今後、ホンダとの連携によりEVの開発費を下げ、中長期的に競争力を上げられるか注目です。
中長期経営計画「Nissan Ambition 2030」
日産は中長期的な経営計画として、「Nissan Ambition 2030」を掲げています。
具体的には、2026年度末までに年間販売台数を100万台増加させることや営業利益率を6%以上に引き上げることを目指しています。
地域ごとに最適化した戦略によって販売台数を拡大し、ガソリン車とEV車の販売バランスを取りながら、EV移行の準備を進める予定です。
やはり日産は、ハイブリッド車ではなくて電気自動車に重点を置く方針なんだね
株価はしばらく停滞する可能性が高い
日産の株価はしばらく停滞する可能性が高いでしょう。
会社予想の業績も下方修正が繰り返されており、配当利回りもかなり高くなっていることから減配もあり得ます。
株価はかなり割安な水準ですが、割安なのには理由があります。
しっかり調べた上で、自己判断で投資を行いましょう。
【まとめ】日産の株は買うべきか
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
🔰いろはにまとめ
以下の理由から、日産の株を買うことをおすすめしません。
- 営業利益99%減、円高が追い打ちで見通しが悪い
- 配当利回りは6.5%と高いが、業績の悪化により減配の可能性もありうる
- 強みであるEV車も、現在は競合に後れを取っている
日産の業績見通しは芳しくなく、円高傾向にある現在、株価が上がりにくい状況にあります。
また、配当利回りは非常に高いものの、減配の可能性もあり注意が必要です。
国内メーカーの中では強みを持つEV車も、テスラやBYDに対して遅れを取っているのが現状です。
しかし、EV市場は長期的に見れば大きく成長するため、今後の展開を長期的な視点で注目していきたいですね。
その他にも、いろはにマネーでは日本の個別株について分析した記事が沢山あるので、ぜひあわせてご覧ください。