日本郵船の株価はなぜ上がっているの?
株価が上昇トレンドであるなら今すぐ買うべき?
このようなお悩みを解決します。
🔰いろはに結論
- 株価が上昇している理由は、ずばりコンテナ船運賃の高騰
- 株主還元政策を強めているため、今後も期待
- 市況や海外情勢の影響を強く受けるため、ボラティリティが高い点には注意が必要
海運バブルがひと段落したものの、日本郵船の株価が上がっているため購入を検討している人も多いでしょう。
株価は魅力的だけど、ボラティリティが高く業績面や将来性が不安…。
まだまだ相対的に割安であることから、買ったはいいけれど逆に業績が悪化して損失の出ることを心配する方も多いはず。
そこで今回は、日本郵船株の株価が上昇している理由や日本郵船株の将来性を、分かりやすく解説していきます。
日本郵船の株価はなぜ上がる?理由3つを解説
そもそも、日本郵船の株価が上がっているのはなぜ?
日本郵船株の株価が上昇している背景には、いくつかの理由があります。
大きく以下の3つに分けて、考察していきましょう。
コンテナ船運賃の上昇
ずばり今回、日本郵船株が上昇した最大の理由はコンテナ船の運賃の上昇です。
そもそも、コンテナ船の運賃は需要と供給のバランスによって決まるため常に変動しています。
以前、新型コロナウイルスによる巣ごもり消費が増えたことにより、コンテナが不足し運賃が高騰したことは記憶に新しいでしょう。
ここで、直近2年のコンテナ船運賃指数(CCFI)を見てみましょう。
これを見ると、2022年から2023年の半ばにかけて緩やかに下降していることが分かるでしょう。
また、直近約1年の運賃が上昇傾向にあることから今回の日本郵船の株価の上昇につながったと考えられます。
約2年と短期間で騰落率が2倍を超えている点は注目だワン!
コンテナを輸送するビジネス自体は大きく変化していないのにもかかわらず、需要と供給のバランスで価格がこれほどに変化するところは海運業界の特異な点と言えるでしょう。
今回注目した指数はCCFI・コンテナ船運賃ですが、もう一つ重要な指数があります。
それは、バルチック海運指数(通称:BDI)・ばら積み船運賃です。
時に、バルチック海運指数主導で日本郵船の株価が上がることもあるので押さえておきたい指標の一つです。
以上のように、海運業界の株価は海運指数と密接に関わっているので要チェックです。
日本郵船の株価の値動きが激しい原因は海運指数にあったんだね!
海外情勢の悪化
では、なぜコンテナ船の運賃は上昇したのでしょうか。
結論、フーシ派による紅海航行中の商船への攻撃が継続していることから、迂回ルートを用いているため輸送コストが上昇しています。
中東情勢の緊迫化によっても海運株は変化するんだワン!
実際に、1月の米英軍がフーシ派の拠点を空爆して以降、日本郵船をはじめとする大手海運会社はスエズ運河を経由する紅海ルートを停止しました。
この結果、5月時点でのスエズ運河通航船舶数は前年同期比で約3分の1まで落ち込んでいます。
さらに、2大運河のもう一つであるパナマ運河も深刻な水不足から航行が制限されています。
パナマ運河を通る船の通航権を競り合うオークションまで開催されています。
株価の上昇には海外情勢や市況など様々なことが関わっているんだね!
原因は気候変動だと考えられていますが、迂回ルート模索したり陸路や空路など新たな打ち出を探している状況も海運指数の上昇に深く影響しています。
株主還元政策の強化
2024年5月、1,000億円を上限として自社株買いを行うことを発表しました。
2024年3月期時点で、自己資本が2兆6,000億円まで膨らんだことから自社株買いや増配を行う方針を示しました。
それでは、過去4年の配当金の推移を見てみましょう。
年間配当 | 配当性向 | |
---|---|---|
2024年3月期 | 140.00 | 29.90% |
2023年3月期 | 520.00 | 26.08% |
2022年3月期 | 483.32 | 24.27% |
2021年3月期 | 66.66 | 24.25% |
2024年3月期の年間配当は140.00円でした。
海運バブル以降の減配は自然のように思えますし、適正の水準に戻ったとも取れます。
しかしながら、配当性向は上昇傾向にあり会社目標の30%にも手が届きそうです。
足下のPBRは0.8倍(2024/6月時点)と1倍を割ってるものの、積極的な還元施策は株価の上昇などから一定の評価を受けていることが分かるでしょう。
一方で、PBRが低い理由の一つに海運業界の特性として業績のボラティリティが高いことがあげられます。
利益計画に対する信頼性が低いため、投資家としては慎重な姿勢を取らなければいけないことも事実でしょう。
ボラティリティを妙味と取る投資家もいるんだワン!
日本郵船の事業内容・業績
日本郵船は世界最大規模の自動車専用船を有し、海上輸送に加えターミナル運営や陸上付加価値サービスを世界展開しています。
日本で初めての船舶向けLNG燃料供給といったような、グリーンビジネスに注力するなど先進性が特徴です。
実は、日本郵船は三菱グループの中核企業なんだよ!
事業内容
日本郵船は以下の5つの事業を運営しています。
- 定期船事業
- 航空運送事業
- 物流事業
- 不定期専用船事業
- 不動産業
- その他の事業
それぞれの事業内容については、各項目をクリックしてご確認ください。
定期船事業(クリックで開きます)
一般消費財を主に輸送するコンテナ船部門とコンテナターミナル等を各地で展開するターミナル関連部門で構成されています。
同社、川崎汽船、商船三井と3社の定期コンテナ船事業を統合し、Ocean Network Express Pte. Ltd. (ONE) を設立しました。
世界100か国以上を結ぶ広範囲なネットワークが強みだよ!
航空運送事業(クリックで開きます)
連結子会社である日本貨物航空株式会社(NCA)が日本発着を中心とした北米、欧州、アジアとの国際航空貨物運送事業を展開しています。
アジア発欧米向けのプレゼンスを高めるべくグローバル市場に力を入れているよ!
物流事業(クリックで開きます)
グローバルな拠点間を結ぶネットワークを活用し、倉庫・配送から海上・航空フォワーディングまで、物流全体を最適化する包括的なサービスを提供しています。
海・陸・空の物流サービスを組み合わせ、最適なサプライチェーンを構築するよ!
不定期専用船事業(クリックで開きます)
不定期専用船事業は、定期船事業以外の外航海運ビジネスすべてを含みます。
安全で高品質な輸送サービスとグローバルな営業ネットワークで、さまざまなお客さまの物流ニーズに応えています。
不動産業(クリックで開きます)
日本郵船およびグループ会社が保有する不動産を有効活用するため、事務所ビルや住宅の賃貸などの事業を展開しています。
その他の事業(クリックで開きます)
石油製品や船舶機器販売のほか、船舶代理店営業、レストラン観光業、客船事業などを展開しています。
業績
まず、直近5年間の業績推移を見てみましょう。
具体的な数値は以下のようになっています。
年度 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2024年3月期 | 23,872 | 1,746 | 2,286 |
2023年3月期 | 26,160 | 1,963 | 10,125 |
2022年3月期 | 22,807 | 2,689 | 10,091 |
2021年3月期 | 16,084 | 715 | 1,392 |
2020年3月期 | 16,683 | 386 | 321 |
2024年3月期は、売上高23,872億円(前年同期比8.7%減)、営業利益1,746億円(前年同期比41.1%減)、当期純利益2,286億円(前年同期比77.4%減)となりました。
業績はあまりよくないのかな?
過去最高益を記録した前年度と比較して減収減益となりました。
しかしながら、2023年度の経常利益と当期純利益は過去3番目の高水準と決して低くはありません。
つまり、海運バブルの揺り戻しと考えて良いでしょう。
また、コロナ禍の特殊需要が落ち着いたことを考慮すると、収益力は着実に強化されています。
2024年度も減収減益を予想してますが、市況により左右される点に注意が必要です。
海運大手3社と比較!日本郵船の強みと弱みは?
💡このパートの要約
- 日本郵船は、売上高・営業利益ともに業界トップ
- ROE8.91%は競合比ではやや劣るも高水準
次に、海運大手の競合企業と比較してみましょう。
決算期(2023年度) | 日本郵船 | 商船三井 | 川崎汽船 |
---|---|---|---|
売上高 | 2兆3,872億円 | 1兆6,279億円 | 9,623億円 |
営業利益 | 1,746億円 | 1,031億円 | 847億円 |
当期純利益 | 2,286億円 | 2,616億円 | 1,047億円 |
ROE | 8.91% | 12.23% | 6.74% |
EPS | 553.61円 | 593.36円 | 169.74円 |
PBR | 0.83倍 | 0.76倍 | 1.11倍 |
配当利回り | 3.35% | 3.64% | 3.39% |
売上高と営業利益で業界トップのプレゼンス
表を見ると、売上高と営業利益が業界TOPであることから同社のプレゼンスの高さがわかります。
売上高は唯一の2兆円超を記録しており、圧倒的な売上を誇っています。
日本一の海運企業であると言えるね!
ROE8.91%は競合比では劣るも高水準
ROEは8.91%と市場平均を上回る高水準です。
一方で、他社比較で劣るため収益性にやや課題が残るでしょう。
海運大手3社のROEが高い理由について次で解説してるよ!
また、PBRは0.83倍と1倍を下回っており、割安な状態となっています。
一般的に、ROEが高い企業のPBRは高い傾向にありますが、同社は未だ1倍を割っています。
今後は、より安定した収益基盤の構築や資本の効率化が鍵になってくるでしょう。
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日本郵船の株価は今後どうなる?将来性・見通しを分析
日本郵船の今後はどうなっていくのかな?
以下の3点について詳しく考察していきましょう。
株価の上下は引き続き続く
日本郵船の株価は、市況の変動、特に海運指数の影響を受けるので今後も大きな値動きが想定されます。
つまり、株価の予想はかなり困難だといえるでしょう。
日本郵船は景気敏感株なんだね…
ただし、PBR指標上では今もなお1倍を割っており、相対的に割安な状態が続いています。
そのため、短期的な利益を追い求める方や高いリターンを求める方にとっては魅力的な銘柄だと思います。
一方で、急激な株価の上昇後には、一定の揺れ戻しによる下落が起きる可能性がある点には注意が必要です。
海運指数に注目
今回の株価の上昇は、コンテナ船運賃の高騰が原因でした。
主に、海外情勢や需要と供給のバランスによって変動が引き起こされます。
取引量自体が変わらずとも、海運指数によって業績が左右される点は海運業界の特徴です。
中東情勢や運河の水不足など様々な要素が絡みあっていますので、地政学リスクを頭に入れておきましょう。
貿易関連だから為替も要チェックだね!
利益率の改善
会社としても、利益率の改善に取り組んでいます。
具体的には、大手海運会社3社で出資し、海運会社ONEを設立しました。
実際に、統合による経営の効率化で収益力が改善されているようです。
また、会計上も親会社である日本郵船にも利益を計上することができるため、収益率の向上につながります。
会社単体を超え海運業界全体で、安定した収益基盤を目指しています。
ONEの純利益は2年連続で2兆円を超えているワン!
ばら積み船の強化
2024年7月、ENEOSグループの海運事業を手がけるENEOSオーシャン株式会社のLPG船やケミカルタンカー、プロダクトタンカー、貨物船事業等を取得することを発表しました。
エネルギー輸送事業は、同社の注力事業であり、インフラ企業としての安定的なエネルギー輸送を目指します。
これにより、エネルギー事業及びばら積み船が強化されることになるでしょう。
【まとめ】日本郵船株は買い時?魅力と注意点!
日本郵船株が上昇している理由について、よくわかったよ!
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
結論、日本郵船の株は投資スタイルによってはおすすめできます。
🔰いろはにまとめ
- 株価が上昇している理由は、ずばりコンテナ船運賃の高騰
- 株主還元政策を強めているため、今後に期待
- 市況や海外情勢の影響を強く受けるため、ボラティリティが高い点には注意が必要
日本郵船の株価の上昇の理由は、コンテナ船運賃の高騰でした。
海運指数や海外情勢は常に変動しますので、連動して株価も大きく上下します。
日本郵船株をこれから購入しようと思っている方は、市況による業績悪化のリスクについて考慮する必要があるでしょう。
日本郵船以外で注目の個別株に関する記事も、編集部目線で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。