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挽回生産と低PBRで注目の自動車業界【アナリストによるセクター分析】

※本記事は、2023年4月19日に公開した記事です。

Key Points

  • 4月終盤から5月にかけて発表となる自動車業界の決算では、24.3期に向けて強気のガイダンスが出る可能性も。
  • 米国では半導体が足りても人材不足により生産が捗らない可能性もあり、日本からの輸出が増加することも考えられる。
  • PBR、PERともに低い日本の自動車メーカーだが、東証の要望を踏まえた低PBR対策など、本決算の発表次第ではチャンスになり得る。
この記事を書いた人:森本 章
この記事を書いた人:森本 章

1990年 関西大学法学部卒業、三洋証券(株)へ入社。1998年 極東証券(株)へ入社。
(株)極東証券経済研究所では20年超にわたり金融、自動車、ソフトウエア、ゲーム・アミューズメントなどを担当。
23年4月 (株)インベストメントブリッジへ入社し、アナリストとして幅広い企業を担当。
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト。国際公認投資アナリスト
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X(旧Twitter):@morizo31592

23.3期は不発ながら、24.3期も挽回生産へ

23.3期は不発ながら、24.3期も挽回生産へ

4月18日より、上海国際自動車ショーが開催、相次いで新型EVが発表されている。

米国ではEVへの税優遇の対象車が公表されるなど、自動車市場はさながらEV真っ盛りといったところ。

しかし、足元依然として販売の多くを占めるのはHV(ハイブリッド)車を含むガソリン車。

こうした中、4月終盤から5月にかけて発表となる自動車業界の決算に注目したい。

テーマは「挽回生産」と「低PBR」

21年後半から半導体不足を主因として自動車生産が停滞していたが、22年初からは挽回生産を目指す方針が自動車各社から打ち出されている。

しかし、挽回生産は業界各社の思惑通りには進展していない。

トヨタ自動車は23.3期の生産台数1,100万台を目指す方針を示していたが、結局910万台にとどまる見込み(22.3期は850万台)。

24.3期も挽回生産を目論み、生産台数は1,000万台超を視野に入れている模様。

特に米国では新型コロナ感染拡大の影響による需要低迷から物流停滞、さらには半導体等の不足により供給不足に陥った結果、新車販売は20年から22年の約3年間にわたって低迷している。

通常の販売台数は年1,700万台程度、この3年間は平均で1,450万台程度にとどまった。

700万台超に及ぶ「ペントアップデマンド(繰越需要)」が控えていると推測される。

景気が減速しても自動車需要は低迷することはないだろう。また、半導体不足はスマホなど民生用エレクトロニクスの需要減速に伴い解消が進むと思われ、この傾向は日本でも同様。

米国では半導体が足りても人材不足により生産が捗らない可能性もあり、日本からの輸出が増加することも考えられる。

また、供給不足に陥っている車種の多くはレクサスなどの高級車。

原材料高の価格転嫁も進め、高い利益率も確保できると思われる。

こうしたことから、3月本決算の発表では24/3期の業績予想は強めになることが予想される。

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低PBRという観点でも注目か

低PBRという観点でも注目か

日本の自動車メーカーはEVへの対応の遅れなどによりPBRが低い銘柄が多い。

トヨタ自動車(7203)は0.9倍(4/18現在)と大きく割り込んではいないが、本田技研工業(7267)やマツダ(7261)は0.5倍、日産自動車(7201)に至っては0.4倍にとどまる。

日本の自動車メーカーはEV化に遅れが見られるのは事実。

ただし、足元の需要増の主軸はあくまでハイブリッド車を含むガソリン車。

東証はPBR1 倍割れの企業に対する施策として、改善計画を開示させる方針であることを示している。

改善に向けた諸施策が本決算発表時などで開示される可能性もあるだろう。

PERも多くの企業が10倍を割り込んでおり、低位にとどまる。

例年、本決算発表時は翌期の会社の業績予想が保守的となる「ガイダンスリスク」が懸念されるが、今回は挽回生産を踏まえた予想になることや、低PBRへの対応策も考慮すると、本決算の発表はむしろ「チャンス」になるのではないだろうか。

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