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今回は、臨床試験(治験)に関わる業務の一部代行など製薬会社の医薬品開発支援を提供している、リニカル(2183)をご紹介します。
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この記事では、リニカルについて以下のような内容をまとめています。
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リニカルはどんな会社?製薬会社を支えるCROとは?
まずは、リニカルの沿革や事業内容を確認していきましょう。
会社概要【CROとは?】
基本的な会社概要は次の通りです。
代表取締役社長 | 秦野 和浩 |
所在地 | 大阪府大阪市淀川区 |
決算期 | 3月 |
株価(4/4終値) | 688円 |
時価総額(4/4終値で算出) | 約15,539百万円 |
配当予想(23年3月期) | 1株当たり14円 |
株式会社リニカルは、2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で医薬品開発経験を有するメンバーを中心に、理想の医薬品開発受託(CRO)事業を行う事を目的として設立されました。
現在は、日本発のグローバルCROとしてアジア、欧州、米国の3極でサービス提供できる体制を構築しています。
設立当初から、がん・中枢神経系(CNS)など難易度の高い領域を中心に人材育成に取り組み、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を理念に事業を展開しています。
CROってなんだろう?
CRO(Contract Research Organization)とは
医薬品開発段階での治験、医薬品の製造販売後臨床試験などに関わる業務の一部を代行、支援する会社のこと。
医薬品の開発段階では、検討物質を人間に投与して、どのような用量であれば安全かつ有効に使用できるか、どのように既存治療薬との差別化を行うかを企画し、治験を通じて検証します。
治験は、製薬会社からの依頼に基づき、医療機関が実施します。CROは、治験の進行状況を調査し、データを確認して、治験が法規制や計画通りに行われているかどうかを保証するモニタリングと呼ばれる業務を中心に行っています。
以前は、これらの業務を製薬会社が全て行なっていましたが、近年ではCROに業務委託する比率が高まっているのです。
CROは、顧客企業の研究開発費の削減、研究期間の短縮などの利点があり、近年急速に拡大しているグローバルニッチな業界だワン!
製薬会社とは、事業リスクも異なります。
医薬品開発と聞くとリスクが大きいイメージがあるけど…
リニカルの主な業務は治験の代行・支援であり、提供した業務に対して対価を得るビジネスモデルです。
そのため、万が一新薬開発が失敗したとしても、治験の依頼を受けている限り売上が得られます。
一般的な製薬会社と比較すると、安定的な事業形態となっているんだね!
リニカルは、積極的なM&A戦略の成功により業績を伸ばしてきました。
買収費用による利益の落ち込みやCOVID-19の影響はありましたが、着実に成長していることがわかります。
リニカルはなぜこんなにM&Aに積極的なのかな?
日本において新型コロナワクチンの開発が遅れていたことの原因は、海外との共同治験体制が整っていなかったことだと同社の秦野社長は指摘しています。
このように、海外ですでに承認されている薬が日本国内での薬事承認を得るまでに長い年月を要する問題は、ドラッグ・ラグと呼ばれています。
さらには、日本国内に海外の新薬が入ってこないというドラッグ・ロスの問題もあります。
リニカルは、ドラッグ・ロスを防ぐことを日本発グローバルCROの使命として掲げています。
ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスといった問題意識も、積極的にグローバル展開を進めている理由の1つです。
グローバル展開の重要性についてわかったよ!
事業内容
続いて、リニカルの事業について詳しく見ていきましょう。
新薬の開発から販売までの過程で、リニカルはどこに関わっているのかな?
同社の事業領域は、以下のようになっています。
3つの事業を展開し、創薬段階から新薬開発、承認後の調査・研究まで幅広く対応しています。
- 臨床開発事業:製薬会社が行う治験業務の一部を代行
- 育薬事業:医薬品の製造販売後の臨床研究やマーケティング活動を支援
- 創薬支援事業:市場分析、薬事・開発戦略立案、販売提携先の選定・契約締結等、医薬品開発のための広範囲な業務をトータルにサポートするコンサルティング
新薬の開発から製造販売後まで一気通貫で対応出来る体制をとることで、新薬の開発期間短縮や製品ライフサイクルの延長が可能です。
具体的な事業内容について、順に見ていきましょう。
臨床開発事業
臨床開発事業は、製薬会社が行う治験業務の一部を代行する事業で、モニタリング、データマネジメント、メディカルライティング、ファーマコビジランス、統計解析、品質管理などにワンストップで対応しています。
グローバルでワンストップ対応できるのがリニカルの強みだよ!
同社は、治験の主要業務であるモニタリング業務を得意としています。
治験を円滑に実施するために重要な業務であり、高度な専門知識と正確な判断が必要とされる業務です。
具体的には、治験を実施する医療機関の選定、契約締結、医師への治験薬・治験計画の説明、治験のルール準拠性の確認、進捗管理、治験データの回収などを行います。
育薬事業
育薬事業は、医薬品の製造販売後調査の支援を行う事業です。
製造販売後調査は、医薬品が実際に患者に投与される中での安全性や効果等を調査・研究するために実施されます。
具体的には、企業・医師主導臨床研究の組織体制、構築業務、製造販売後の臨床試験・調査の企画業務・モニタリング業務・監査業務のサポートを提供しています。
育薬事業でも、難易度が高く新薬の開発が強く望まれている領域に特化しているんだよ!
創薬支援事業
同社の創薬支援事業は、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請までをサポートする事業です。
これらのコンサルティングサービスは、国内大手製薬会社で数々の実績と豊富な経験を有している担当者が中心となって提供しています。
以前は国内製薬会社への支援が多かったものの、現在では国外の製薬会社や、海外の新興バイオ医薬品企業向けの支援にも注力しています。
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リニカルの注目点
続いて、リニカルの注目点を3つ厳選してご紹介します。
順にご紹介していきます。
難易度の高い専門領域に強みをもちながら、眼科・皮膚科などQOLに直結する領域にも注力
秦野社長を含む創業時のメンバーは、藤沢薬品(現アステラス製薬)での免疫領域における医薬品開発経験があります。
創業当初より難易度の高い免疫領域等を中心にサービスを提供し、その後、日本においては2006年に中枢神経領域、2010年にがん領域へと専門性を拡げていきました。
難しい領域に対応できるという専門性が強みなんだね!
現在では、CRO事業の対象顧客、疾患領域、サービスをさらに広げています。
現在は、今後の高齢化に伴いニーズが増えると思われる領域を拡大中です。
新薬開発のために、海外の大手製薬会社やバイオベンチャー企業を顧客とするなどの対象顧客拡大も進めています。
今後の成長が見込める眼科・皮膚科といったQOLに直結する疾患領域への展開に注力しています。
また、再生医療、細胞医薬、治療アプリといった、今後拡大が見込まれる最新の治療法による治験にも先駆けて取り組んでいます。
他には、ブロックチェーン技術を活用した臨床試験を提供する体制を作ったワン!
M&Aによる積極的なグローバル展開
同社は、近年製薬会社のニーズが高まっている国際共同治験へ対応するため、グローバル化を強力に推し進めています。
国際共同治験とは
新規の医薬品開発に世界規模で取り組み、早期上市を目指すため、臨床試験を複数の国または地域において同時並行的に行うこと。
製薬会社は、国際共同治験を利用した複数国・地域での新薬開発により、主要市場国での新製品の早期投入、複数市場への同時投入を可能にし、国際市場でのブランド浸透、利益の最大化が可能になります。
同社は、国際共同治験をワンストップでサポートするため、日本を含むアジア、欧州、米国に海外拠点を設置しています。
積極的なM&Aを行ってきたことで、現在では18か国/地域で事業展開しています。
M&Aを成功させてグローバル展開してきた点が、他の日本のCROとの大きな違いだワン!
CRO市場の展望・リニカルの経営戦略
続いて、リニカルを取り巻く環境と経営戦略について見ていきましょう。
CRO市場の展望
リニカルが事業展開している、医薬品市場の動向から見ていきましょう。
世界の医薬品市場は2021年の1兆4,230億米ドルから、2026年には1兆7,500~1兆7,800億米ドルまで年平均3-6%の成長見込みとなっています。
米国の市場規模が全体の40.2%を占め、欧州(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)が15.4%、中国が12.4%、日本が5.2%を占める予想となっています。
世界の医薬品市場の拡大とともに、今後CRO市場もさらなる拡大が予想されます。
こうした中、日本は先進国で唯一マイナス成長の予測となっており、世界最大市場である米国を始めグローバルでの事業拡大が必須です。
リニカルは海外での事業進出に目を向けているワン!
リニカルの経営戦略
同社の経営戦略について、以下2つをご紹介いたします。
M&Aを含む体制の拡充
同社は、これまで力を入れてきたグローバル展開を推進していくことを、体制の拡充(第2の目標)として具体的に定めています。
その内容は、①日本、アジア、欧州、米国の合計で1500人を超える体制の構築、②各極で成長投資(M&Aを含む)を行いつつ黒字維持、利益率の向上、③世界60か国程度への進出となっています。
特に、時差を考慮しつつ、日米欧それぞれの地域でカバーエリアの拡大を検討しています。
南半球に拠点を持つことで、季節性疾患の臨床試験を一年中実施することが可能となります。
日本が夏の時は、オーストラリアは冬だもんね!
最大ではなく最強のCROを目指す
リニカルは、To be the “strongest” CROを掲げ、最大ではなく、最強のCROを目指しています。
最大ではなく、最強…?
実際に業界内では、製薬会社をはるかに上回るようなものすごく巨大なCROが存在します。
日本でも8,000人くらいの社員がいるほどの競合企業もあります。
しかし、そのような「the biggest」を目指しているのではないということです。
がん・中枢神経系など難易度の高い領域の治験に強みを持ち、高品質なサービスを提供、従業員1人当たりの生産性を重視し、業界最高の収益性を達成することを目指しています。
高い利益率、そして高いノウハウを持って、日本の患者に新薬を届けられる、最強のCROを目指しているワン!
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2023年3月期業績予想
23年3月期の業績見通しはどんな感じかな?
続いて、リニカルの2023年3月期業績予想を見ていきましょう。
2023年3月期の会社計画は、売上高が前期比7.7%増の124億40百万円、営業利益が同12.7%増の12億24百万円の予想から修正なしとなっています。
第3四半期終了時点で、売上高は74.3%と順調な進捗率となっているものの、各段階利益はやや遅延気味(いずれも60%台)となっています。
売上面では、欧州事業と米国事業が前年同期比で増収となったことに加え、為替が円安に推移し海外子会社の収益を押し上げました。
利益面では、ロシア・ウクライナ戦争等の影響により米欧地域での大型国際共同試験の開始が遅れ、一時的に要員稼働率が低下したことなどで第1四半期では営業損失を計上しました。
しかし、第2四半期以降は欧州と米国事業がともに改善しました。
開始が遅れていた大型試験は、7月後半に開始されて以降はおおむね順調に進捗しているワン!
また、通期計画達成のためには、前年同期比22.1%の大幅増加となった販管費への対応にも注目です。
配当は、1株当たり14円(配当性向 36.3%)の予定です。
同社は、内部留保を従業員の雇用や海外拠点設立などの成長原資として活用し、安定的な利益還元を実施する方針です。
まだまだ成長の余地があると捉え、内部留保を活用し、さらなる企業価値の向上を目指しているワン!
【まとめ】グローバルニッチ領域で勝負するリニカルに注目
リニカルについてよくわかったよ!
最後にもう一度、リニカル(2183)のまとめをおさらいしましょう。
今回は株式会社リニカルのアナリストレポートから、同社の事業内容や注目点などを簡単にご紹介しました。
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