8月から9月の国内株式市場は歴史的な乱高下を見せましたが、このような環境だからこそ、キラリと光る企業を発掘したいところ。
今回は、株式ディーラー時代に50億円を稼ぎ、X(旧Twitter)で20万人超のフォロワーを抱える”たけぞう”さんが、個人投資家を代表して株式会社メディカルネット<3645> 平川社長にインタビューを行いました。
💡この記事のまとめ
- 歯科マーケットは自由診療中心に拡大中。メディカルネットは複数の歯科関連事業を展開し、海外展開と未病・予防事業を新たな成長戦略に。
>>この章を読む - 唾液でがんリスク検査ができる技術を持つミルテルを2024年1月に子会社化。乳がん検査を提供し、今後は他のがん種へも展開予定。
>>この章を読む - 既にチューリッヒ保険会社のがん保険にミルテルの乳がん検査サービスが付帯。自治体との実証実験も6月より開始し、ミルテルの利益貢献にも自信あり。
>>この章を読む - 売上高120億円、営業利益15億円を目指す中期経営計画を策定。人材投資の進捗や、株主還元への考えも伺った。
>>この章を読む - たけぞうさんの感想:今回の取材での驚きは、唾液で乳がんの早期発見サービスを提供されているところでした。数字も含め今後を注視したいと思います。
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※アンケート締切:10月18日(金)
アンケ―トは期日に達したため、締め切らせて頂きました。たくさんのご協力ありがとうございました。
企業名 | 株式会社メディカルネット |
市場・証券コード | 東証グロース・3645 |
株価 | 330円 |
時価総額 | 3,555百万円 |
PER/PBR | 16.5倍/1.6倍 |
配当/配当利回り | 3.0円/0.9% |
ほか2名にもインタビューへ参加いただきました
株式会社ミルテル 代表取締役社長
加藤 俊也 氏
株式会社メディカルネット執行役員 兼 株式会社ミルテル取締役
小路 聡 氏
※本記事は企業情報をご提供するもので、個別企業の株式売買を推奨するものではありません。
歯科マーケットは自由診療を中心に拡大中
まずは御社をはじめて知る方に向けて、事業内容を教えてください。
当社は「口腔まわりから全身の健康を導き、元気で笑顔が溢れる世界を創る」をパーパスに、複数の事業を展開しています。
歯科医療プラットフォーマーとして、「医療機関経営支援事業」や「メディア・プラットフォーム事業」、「医療BtoB事業」を軸に成長してきました。
そして、現在は新たな成長ドライバーとして「未病・予防プラットフォーム事業(ミルテル)」、「クラウドインテグレーション事業(タイでの歯科業界IT化)」にも取り組んでいます。
各事業の業績はどうでしょうか?
まず、2024年5月期の全社実績は売上高5,252百万円(前期比16.7%増)、営業利益298百万円(前期比21.4%減)です。
事業毎の内訳としては、以下の通りです。
売上高 | 営業利益 | |
---|---|---|
メディア・プラットフォーム事業 | 1,125 | 626 |
医療機関経営支援事業 | 3,865 | 187 |
医療BtoB事業 | 184 | 20 |
クラウドインテグレーション事業 | 47 | △6 |
その他事業 | 29 | △62 |
売上では医療機関経営支援事業が7割を占めていますが、利益ではメディア・プラットフォーム事業が8割も占めているんですね。
どちらの事業も歯科クリニックが主な顧客かと思います。
歯科医院の数はコンビニより多いとも言われていますが、飽和状態ではないでしょうか?
国内の歯科クリニックの数はコンビニの数を超えており、既に飽和状態です。
引退して廃業するクリニックと新規開業するクリニックの数がバランスしているため、横ばいで推移しています。
今後は地域包括ケアシステムの構築の推進により、歯科クリニックの統廃合及び中規模化が予測され、歯科クリニックの数自体は減少が見込まれます。
少子高齢化もありますし、歯科医療向けのサービスは結構厳しいのではないでしょうか?
たしかに国内では少子高齢化に加え、虫歯予防の成果が出て虫歯自体が減っており、保険診療は厳しい状態です。
一方で、咀嚼や噛み合わせの重要性や口腔ケアに対する理解が進んだ結果、自由診療は大きく伸びています。
矯正はマウスピース矯正の普及から、歯科マーケット全体としては拡大しています。
保険診療でやっていた歯科医院が自由診療に進出するようになり、当社がマーケティング支援をする例も増えてきています。
自由診療は適切にマーケティングをすることで患者さんが増えるため、当社の支援事業へのニーズは高い状況です。
なるほど。自由診療を中心に拡大しているのですね。
歯科関連の既存事業の伸びも見込まれているかとは思いますが、今後の成長戦略はいかがでしょうか?
今後は海外事業と新規事業の両者での成長を考えています。
海外事業は既にタイで歯科医院の経営や歯科商社事業のDX化を展開していますが、こちらは爆発的に成長させるというより、着実に育てていき、将来的にはタイでの上場を目指しています。
POS事業を手掛ける企業を買収するなど、タイでの歯科プラットフォームの構築を進めてます。
大きな成長エンジンとしては、「未病・予防プラットフォーム事業」を軸に考えています。
口腔ケアといえば”虫歯治療”から、”がんの発見”へと進化させる
決算説明や新中計でも「未病・予防プラットフォーム事業」を強調されていますが、具体的な取り組みを教えてください。
未病・予防プラットフォーム事業では、子会社のミルテルが中核となります。
ミルテルには大手上場企業や外資系企業なども出資しており、当社も資本・業務提携を結んでいましたが、今年1月に子会社化しました。
ミルテルは世界オンリーワンの「テロメアテスト」や、唾液を使ったがんのリスク検査など高い技術を有しています。
線虫でがんの早期発見を行うサービスもありますが、ミルテルも同じようなサービスでしょうか?
一見似ているように思われますが、全くの別物です。
ミルテルの技術は1970年代からがんとの関連性が研究されている「ポリアミン」をターゲットにしています。
ポリアミンは過去から研究の蓄積もあり、がんの罹患によって増加することは周知されていることから、医師の方々に説明する時に科学的な裏付けがあるとご理解いただけています。
また、他のリスク検査はがんの種類が特定できないものもありますが、ミルテルの技術ならがんの種類まで判定可能です。
そしてミルテルの検査は唾液を利用するため、血液や尿に比べ自宅で簡単かつ安価に検査できる点も特徴となります。
コロナ禍でのPCR検査もあったため、唾液検査に対する抵抗感もほとんどないでしょう。
科学に裏付けられた検査だと思いますが、がんの発見精度はどの程度あるのでしょうか?
ミルテルの検査精度は、AUC*0.95の精度を誇ります。
*AUC:解析データの性能を評価する指標で、値が1に近いほど、高い信憑性をもちます。
また、無作為に検査するブラインドテストでも約7割の精度です。
自宅検査で約7割の精度なら、かなり高いですね。
乳がん検査だとターゲットは女性のみ、という理解でよろしいでしょうか?
現在、女性のみの臨床データしかないことから、対象は女性のみとなっています。男性乳がんは稀であることから臨床データの蓄積が難しいためです。
しかし、ミルテルの技術は他のがんの早期発見にも利用可能です。
来年度には大腸がんと膵臓がん向けのサービスをトライアルで開始予定であり、それらは男女を問いません。
特に膵臓がんは見つけにくく、発見時には手遅れとなることが多いため、ニーズ・社会的意義ともに高いと自負しています。
ミルテルは本当に利益貢献するのか?
ミルテルのがん検査技術について理解できました。
ただ、投資家としては「本当に売れるの?」「利益貢献するの?」という点がどうしても気になります。
ミルテルの単独でのがん検査事業はまだ売上1億円に満たない状態ですし、赤字です。
ですが、社内で様々な根拠をもとに立てた計画では、再来期で売上高・利益ともに大きく貢献する計画となっています。
当社のパーパスでもある「口腔まわりから全身の健康を導き、元気で笑顔が溢れる世界を創る」を実現するセンターピンとして、ミルテルに期待いただけると思います。
業績拡大に相当の自信をお持ちですが、どのような根拠があるのでしょうか?
まずミルテルの拡販という意味では、既にチューリッヒ保険会社においてスキャンテストとがん補償を組み合わせた「がん保険 ミエルケア®」が販売されています。
本保険の加入者は、ミルテルのスキャンテストが年1回追加費用なしに受けられます。
チューリッヒ保険会社にて同保険のプロモーションにも注力いただけているので、今後利用数の増加が見込まれます。
そもそも日本は乳がん検査の受診率が4割程度に留まっており、欧米の7-8割に比べ先進国の中で低い水準といえます。
厚生労働省は6割まで受診率を上げたい考えですが、数字は低いままです。
乳がん検査を受けない理由は、忙しいなどの理由がほとんどですが、ミルテルのサービスなら自宅で簡単に乳がんのテストができます。
自宅で唾液を採った後は、検査キットを検査センターに送るだけです。
検査キットは常温で送付できるためポストに投函するだけです。クール宅急便を利用するなどの手間・コストもかかりません。
乳がん検査を受けていない人が、乳がん検査を受ける前段階の誘導ツールとしての利用が期待されます。
チューリッヒ保険会社の「がん保険 ミエルケア®」での拡販は既に始まっているのでしょうか?
発売当初は乳がんリスク検査はスキャンテストではなく「ミアテスト(血液検査)」だったため、病院で採血する必要があり、コロナ禍で本格的な展開が遅れ、トライアルに留まっていました。
販売が本格化したのは今年からで、保険の付帯サービスとして乳がんリスク検査サービス付きの保険の販売が開始されたのは、「がん保険 ミエルケア®」が国内初です。
他のがん種の検査開始に向けた準備も進めており、今後も同様のスキームでの保険パッケージ開発ができると見込んでいます。
検査できるがんの種類が増えれば、男性へのサービスの利用拡大も期待できます。
他にも具体的なビジネス展開があれば教えてください。
今年の6月より、広島県呉市及びマイライフ株式会社と共同で乳がん検診率向上に向けた実証事業を開始しています。
呉市は乳がん検査の受診率に課題を持っている自治体でもあり、市街地・山・島がある、日本の縮図ともいえる自治体のため、各自治体のモデルケースとなり得ます。
呉市での実証実験を元に、各自治体にミルテルの乳がんリスク検査サービスを広めたいと考えています。
がん種を増やすことも含め、唾液によって全身の状態を可視化する商品開発と、これまでの医療施設や企業との提携、自社EC販売に、自治体連携を加え健康可視化インフラ構築により簡易、かつ、誰でも手にできる全身可視化ソリューションを実現していきます。
新中計で売上高120億円、営業利益15億円達成へ
8月30日には中期経営計画も発表されました。
ズバリ、ポイントはどこでしょうか?
中期経営計画では、2027年5月期~2028年5月期に売上高120億円、営業利益15億円を目指す計画としています。
2024年5月期が売上高52億円、営業利益2.9億円なので、倍以上の成長です。
既存事業の成長に加え、ミルテルを中心とする未病・予防プラットフォーム事業を新たな成長エンジンと考えています。
資料にはM&Aについても書かれていますが、M&Aの計画はありますか?
当社はこれまでもM&Aを活用して成長を果たしてきました。
今後の成長は、未病・予防プラットフォーム事業の立ち上げに加え、これまでと同様にM&Aの活用も予定しています。
既存事業と新規事業で売上高100億円を達成し、M&Aで20億円を上乗せするイメージです。
最近の決算資料では「人材投資」というのも目立っていましたが、今後も続くのでしょうか?
エンジニアやWeb担当といった人材の採用は今期計画でほとんど完了しており、売上120億円に向けて必要な人材は採れています。
今後は刈り取りの時期に入っていくとご認識いただければと思います。
株主優待としてQUOカードの拡充を5月に発表されましたが、株主還元についての考え方をお聞かせください。
当社は今後、未病・予防プラットフォーム事業への投資やM&Aを積極的に行う予定です。
よって、利益は成長投資に積極的に活用させて頂き、株主還元は現状の方針を維持したいと考えています。
ただし当社の株主のほとんどは個人株主のため、個人株主の存在は充分意識しています。
無理なく続けられる株主還元という観点で、QUOカードの株主優待を拡充しました。
※編集部注:配当金も1株3円で実施している。
中計達成に向けた投資が実を結ぶことが、一番の株主還元かもしれませんね。
最後に投資家に向けて一言お願いします。
ミルテルの未病・予防プラットフォーム事業は、これまでの歯科クリニックを対象とした事業とは違った成長角度を描いています。
唾液を用いた検査事業が広がることで、「口腔まわりから全身の健康を導き、元気で笑顔が溢れる世界を創る」という当社のパーパス実現に大きく近付きます。
中計で出させて頂いた数字を達成するのはもちろんのこと、当社事業を通じて更なる社会貢献も実現して参ります。
そして投資家の皆様にも大きなリターンをお返しできるよう事業成長に努めてまいりますので、是非応援いただければ幸いです。
本日はありがとうございました。
たけぞうの感想~インタビューを終えて~
今回の取材での驚きは、唾液で乳がんの早期発見サービスを提供されているところでした。
乳がんは女性がかかるがんの第1位で、女性の9人に1人が生涯のうちに乳がんにかかるといわれています。
乳がんは早期発見・早期治療をすれば、約90%以上が治ると言われおり、同社子会社のミルテルの検査によって未然に乳がんが早期発見できる事を期待しています。
社会的意義がある事業だと思いますし、数字も含め今後を注視したいと思います。