【ポイント】
・ 食道再生上皮シートの承認取得、販売開始
・軟骨再生シートの開発加速
・次期品目の開発着手
・サプライチェーン体制の構築
・再生医療支援製品の新製品開発及び収益機会獲得
・世界展開に向けた事業提携推進
食道再生上皮シートの承認取得・販売開始、サプライチェーン体制を構築
日本人の食道がん
同社の説明によると、日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。また、男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが(食道がんと診断された患者の約20%が毎年手術を受けている)、ESDは手術後の食道狭窄の副作用が問題になっている。
食道再生上皮シートの承認取得、販売開始、及びサプライチェーン体制の構築
この問題を解決するために東京女子医大先端研が開発した治療法が、食道再生上皮シートを用いた食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性細胞培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。内視鏡手術で食道がんを切除した後に細胞シートを食道潰瘍面に移植する事で食道狭窄を予防できる。
2008年から2014年にかけて大学で臨床研究が行われ、東京女子医科大学10症例、東京女子医科大学・長崎大10症例(長距離輸送検証:長崎大で採取した細胞を東京女子医大で培養し、長崎大で移植手術)、カロリンスカ大学病院(スウェーデン)10症例、の計30症例が既にあり、同社は、東京女子医科大学と開発基本合意契約を締結して同大学の研究成果を引き継いだ。
18/12期第2四半期(2018年4月)に治験の症例登録が完了し、19/12期上期に販売承認申請を行う予定。2017年2月に先駆け審査指定を受けているため販売承認申請から6カ月程度で承認が下りる見込み。このため、19/12期中の販売承認取得と販売開始を予定しており(販売は薬価収載後になる)、20/12期には販売を本格化させたい考え。足元、病院(口腔粘膜採取)→培養施設(細胞をシート状に培養)→病院(細胞シート移植)というサプライチェーンの構築も並行して進めている。
欧州では、スウェーデンでの企業治験を検討しており、その推進役となる子会社CellSeed Sweden AB(スウェーデン)を2015年5月に設立し、2016年には、欧州全体での承認を目指して、欧州医薬品庁(EMA)との相談を開始した。ただ、国内での細胞シート再生医療の事業化を最優先課題とし、欧州での食道再生上皮シート開発については「次期開発品目」の候補品目の一つとして開発優先順位を検討していく方針。
台湾事業では、既に説明した通り、2017年4月に提携したMetaTech社への開発データの提供が順調に進んでおり、MetaTech社は2018年中の治験届の提出を目指している。
軟骨再生シートの開発加速
「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。
東海大学との開発基本合意書に基づき、同社が事業化に向けた取り組みを進めており、PDMA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構。承認審査を行う)との戦略相談の下、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構。再生医療等の研究開発を行う)事業を活用した開発を進めている。また、台湾ではMetaTech社が製品化に取り組んでおり、18/12期に一部開発データが提供される。
尚、同社の説明によると、変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。
自己細胞(本人の細胞)と同種細胞(他人の細胞)で研究開発を進めており、自己細胞による軟骨再生シートについては、東海大学で8症例の臨床研究の実績があり、同大学が先進医療を申請する予定。厚生労働省医政局専門官との話し合いの下で申請準備が進められており、申請後に厚生労働省先進医療会議での審査を受ける事になる。先進医療申請の結果を踏まえて企業治験が実施される。先進医療として承認されると、公的医療保険の対象外ではあるが、保険診療との併用が認められる。先進医療で使用される細胞シートの受託加工は同社が有償で実施する事が決まっている。
同種細胞による軟骨再生シートについては、2017年2月に東海大学で1症例目の移植手術が実施され、経過は良好。臨床研究として3年間で10名の患者への移植を予定しており、19/12期にかけて続く見込み(2018年上期までに3症例の実績)。この間に、同社は20/12期中の企業治験開始に向け、レギュラトリーサイエンス戦略相談・レギュラトリーサイエンス総合相談及び治験準備を進める。
台湾MetaTech社との事業提携の進捗状況
2017年4月に提携契約を締結し、MetaTech社に細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート、軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与した。MetaTech社は(株)セルシードの支援下で台湾での事業化を進め、(株)セルシードは開発の進捗に応じて、マイルストーン収入、開発・製造関連データ料、開発サポート料として、最大12億50百万円程度の対価を得る予定。更に上市後は、売上に応じたロイヤリティ収入を受け取る。
既に説明した通り、18/12期上期は一部開発データの提供が当初想定を上回るペースで進み、前倒しで完了した(売上高3億25百万円を計上)。MetaTech社は18/12期中の食道再生上皮シートの治験届提出に向け準備を進めている。台湾では、台湾版先進医療とも言える細胞治療関連の法改正が進められており(2018年9月施行予定)、対象に同社の軟骨再生シートが含まれる可能性がある。
世界展開に向けた事業提携推進
既契約先であるMetaTech社への支援を推進しつつ、アジア諸国・欧米をターゲットに海外の事業提携先を探索していく。この一環として、上期は6件のイベントに参加し、この8月も2件のイベントへの参加が予定されている。