ブリッジレポート
(3194) 株式会社キリン堂ホールディングス

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ブリッジレポート:(3194)キリン堂ホールディングス vol.43

(3194:東証1部) キリン堂ホールディングス 企業HP
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長

【ブリッジレポート vol.43】2018年2月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期の既存店増収率は期初計画の0.6%増を大きく上回り4.4%増となった。過去数年の月次ベースでの増収率、客数及び客単価伸び率の推移を見て・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年10月31日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂ホールディングス
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年2月 116,450 1,298 1,835 635
2016年2月 112,902 1,699 2,320 826
2015年2月 108,033 952 1,437 619
2014年2月 103,055 1,820 2,282 942
2013年2月 101,761 1,924 2,242 882
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
株式情報(10/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,508円 11,332,206株 17,088百万円 5.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.00円 1.7% 82.89円 18.2倍 1,142.96円 1.3倍
※株価は10/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数。ROE、BPSは前期実績。
 
(株)キリン堂ホールディングスの2018年2月期第2四半期決算概要などについてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤としてドラッグストア・保険調剤薬局を運営する(株)キリン堂を中心とした持株会社。
医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサルティング等も手掛ける子会社も有する。ドラッグストア事業では、近畿2府5県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び関東1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)においてドミナント戦略を進めており(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)、グループ店舗数は363店舗(FC1店舗を含む)。
連結子会社は、下記6社。持分法適用関連会社として中国で卸売、小売を展開するBEAUNET CORPORATION LIMITEDがある。
連結の従業員数は1,735名。(いずれも2017年8月31日現在)
 
 
 
【同業他社比較】
ドラッグストアを中心業態とする上場企業は、以下の14社が挙げられる。(売上規模順)
 
前回レポート作成時からは売上高、時価総額とも同社の順位に変化はないが、ウエルシアHDと同社が通期業績予想を上方修正している(下方修正は無し)。
PBRは1倍台に回復したが、依然上位グループとはPER、PBRともに大きな差がある。
2020年2月期営業利益率3%実現に向けた具体的な進捗が求められる。
 
 
2017年2月期のROEは利益率の悪化により過去5年で最も低い5.1%に低下した。
第1次中期経営計画の最終年度である2017年2月期は、当初ROE11%以上を目指していたが未達となった。
第2次中期経営計画では、2020年2月期10%以上を目標としており、その実現が期待される。
 
 
2018年2月期第2四半期決算概要
 
 
新店寄与、既存店も好調で増収。新規出店に伴う経費増を吸収し増益。売上、利益とも計画を上回る。
売上高は前年同期比10.1%増の636億23百万円。新店が寄与したことに加え、既存店売上高も同4.4%増と好調だった。小売事業において集客増を図った結果、相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したことなどから粗利率は同0.6P低下したが、増収効果により売上総利益は同7.5%増加した。
新店増による人件費や施設費などが増加したが、前期で旧ニッショードラッグののれん償却が終了したこともあり、営業利益は同67.1%増の7億68百万円。売上、利益ともに計画を上回った。
 
◎出退店状況
2018年2月期第2四半期(累計)の出店は15店舗、M&A等による増加が6店舗(全て調剤薬局)で、店舗数は21店舗増加した。退店は2店舗。2017年8月末のグループ店舗数はFC1店舗を含む363店舗となった。
近年開発に着手した都市型店舗として、繁華街立地の四条烏丸京都本店を2017年4月にオープンした。オフィス立地、ターミナル立地を含めフォーマットの確立を急いでいる。
 
◎既存店の状況
2018年2月期第2四半期(累計)の既存店売上高は、前年同期比4.4%増と好調だった。客数、客単価ともにそれぞれ同1.8%、2.5%増加した。
顧客の利便性向上、来店動機創出につなげるべく、主に購買頻度の高いハウスホールド商品や食品の導入・拡大を目的とした売場改装を18店舗で実施したほか、ポイントカード会員の拡大とポイントカードを利用した会員向け販促を推進した。
第2四半期累計平均のカード会員数は、既存店で128万人と同6.8%増加、全店では140万人となっている。
売上高に占めるポイント会員売上高の比率は8割近くに達しており、既存店売上の安定的な拡大に向け顧客の囲い込みを一段と進めていく。
 
 
◎PB商品売上高の動向
全体の粗利率向上につなげるため、今期も引き続き、相対的に粗利率の高いPB商品の売上構成比率上昇に取り組んでいる。
ヘルス&ビューティケア(HBC)商品については、成分強化や規格増量などリニューアルの推進、潜在需要を開拓するPB商品へチャレンジするほか、機能性表示食品の届け出への対応も進めていく。また、セルフ販売を基本とした価格訴求型PB商品については、フェイス数アップや専用什器の展開などに努めている。教育・売場・販促の連携を一層促進する。
同四半期累計の新規開発SKU数は94SKUで、うちHBC商品は33SKUであった。
小売事業の商品売上高全体に占めるPB商品の比率(PB比率)は第2四半期(累計)実績で9.1%、HBC商品売上高に占めるPB商品売上高の比率は10.1%となり、第1四半期実績のそれぞれ9.5%、10.4%から低下した。健康食品(中でもダイエット商品)の伸び悩みが主要因であり、梃入れ、強化が必要と認識している。
 
 
集客強化のため雑貨等が前年同期比2桁の増加と好調だった一方、健康食品はダイエット関連が低調だった。相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したことに加え、雑貨等自体の利益率も低下したことなどから、小売事業の粗利率は同0.4P低下した。
 
 
新店増で販売費、人件費が増加したが、前期で旧ニッショードラッグののれん償却が終了したこともあり、小幅増にとどまった。
計画をやや上回ったが、引き続きコストコントロールに取り組む。
 
◎調剤事業について
調剤薬局3店舗、調剤薬局併設型ドラッグストア4店舗の計7店舗を新たに出店した。このほか、M&A等で6店舗(全て調剤薬局)を取得した結果、2018年2月期上期末の処方せん取扱店舗数は13店舗増の75店舗となった。
処方せん応需枚数は前年同期比9.0%増の50.6万枚、調剤売上高は同9.8%増の56億50百万円となった。
調剤技術料の加算獲得は、後発医薬品調剤体制加算については回復傾向にあるものの、基準調剤加算についてはまだ十分ではなく、かかりつけ薬剤師の育成や在宅支援の取り組みの強化を進める必要がある。
 
 
現預金、たな卸資産等の増加により、流動資産は前期末比32億74百万円増加。固定資産は有形固定資産の増加等で同15億36百万円増加し、資産合計は同48億10百万円増加の508億64百万円となった。
一方、仕入債務、長期借入金の増加などにより、負債合計は同42億57百万円増加の376億43百万円となった。
純資産は同5億53百万円増加の132億21百万円。この結果、自己資本比率は前期末より1.5P低下の25.9%となった。
 
 
税金等調整前四半期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。新規出店や改装に伴う有形固定資産の取得による支出増などで投資CFのマイナス幅は拡大したがフリーCFのプラス幅は拡大した。
長期借入れによる収入増などで投資CFのプラス幅も拡大。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(3)トピックス
◎約300店舗に電子マネー「WAON」を導入
イオンの電子マネー「WAON」を導入し、2017年10月1日よりグループ約300店舗で取り扱いを開始した。
キリン堂グループの店舗では現在、現金決済のほかに、各種クレジットカードや電子マネー(nanacoなど)を取り扱っているが、利用可能な電子マネーの種類が広がることは、顧客の更なる利便性向上に繋がると考えており、今後も決済手段の多様化を進めていく。
 
 
2018年2月期業績予想
 
 
 
通期業績予想を上方修正。下期は下方修正。
上期実績を踏まえ通期業績予想を上方修正した。通期売上高は前期比7.0%増の1,246億円、営業利益は同17.0%増の15億20百万円の計画。
ただ、一部新店の立ち上がりが遅れる見込みであることと法人税等負担率の見直しを行ったため、下期予想を下方修正した。
配当は、前期と同じく年間25.00円/株の予定。予想配当性向は30.2%。
 
 
(2)下期の取り組み
「第2次中期経営計画」の重点課題対策を推進する。
 
(3)今後の取り組み
第2次中期経営計画において「営業利益率3%、関西地区シェアアップ」を目指す同社は以下のポイントについて改善やブラッシュアップを行う考えだ。
 
*成長戦略
(調剤事業拡大)
商品部門別で見れば利益率は高水準であることに加え、来店動機ともなるので今後も注力し、現在9%の売上高構成比を12%まで引き上げる。
調剤併設型店舗は大きな投資が不要なので、引き続き拡大を図るほか、M&Aにも取り組んでいく。

(関西ドミナントの推進)
都市型店舗は3タイプとも出揃ったため、各フォーマットの確立を進める。出店及びオペレーションコストは郊外型よりも上昇するがトライを続ける。

(既存店の活性化)
第1次中計期間中に行った改装により、改装前後の3か月で主として来店回数増に起因した増収効果が明確に認められている。密度感のある売場づくりを目指し売場容積を拡大するための改装投資を拡大する。前中計の3年間での改装店舗数は65店舗だったが、今中計では100店舗を計画している。
2018年2月期第2四半期(累計)における既存店の月間来店カード会員数は128万人、前年同期比 6.8%増となっており、ポイントカードなど各種施策が効果を上げている。
 
*収益力の向上
粗利率の改善が課題と認識している。
なかでも、重要な施策であるPB商品の拡大については、健康食品の伸び悩みもあり、リニューアルの推進や単品単価の価格政策の見直しに加え、機能性表示食品の届出対応などが必須である。またEC(電子商取引)に対応したブランディングも欠かせない。
他社との差別化となる「未病対策」実現のためのコンサルテーションも重要であり、必要な人材育成にも注力する。
販管費のコントロールは全般的に順調だが、現金以外の決済手段に関するコストの上昇についても対応が必要である。
 
*業務の仕組み化
登録販売者資格取得を促すなど、パート、アルバイトの販売における戦力化を継続する。ローコスト戦略のみではECとの競争に打ち勝つのは難しいため、未病対策をテーマとした「人による接客」を重視する。
インフラ整備も重要なポイントであり、接客以外の作業は徹底的に機械化、システム化を図る。レセプトコンピューターの統一のほか、調剤過誤システムの導入が完了した。
物流システムも更に改革を進める。来期には全店にリアルPOSを導入する予定だ。
 
 
今後の注目点
上期の既存店増収率は期初計画の0.6%増を大きく上回り4.4%増となった。過去数年の月次ベースでの増収率、客数及び客単価伸び率の推移を見てみると、今期は客数の伸びが増収を牽引していることがわかる。売場改装、調剤併設など同社が重視している来店動機創出のための取り組みが効果を生み出しているようだ。
一方で収益性の向上については、PB比率の弱含みなど、解決すべき課題も多く、引き続き各種取り組み及びその成果を注目したい。
 
 
 
 
<参考1:第2次中期経営計画について>
 
同社は、2018年2月期を初年度とする3か年の第2次中期経営計画を策定した。
 
①第1次中期経営計画の振り返り
「収益力の改善」、「経営効率向上と徹底したコストコントロール」、「新規出店による売上高成長」を基本テーマとし、「2020年2月期 連結売上高1,500億円、500店舗体制」の実現を目指した通過点の位置づけであった第1次中期経営計画では、出店総数はほぼ計画通りで、ポイントカード会員拡大、調剤売上高計画100億円の達成などで、売上高こそ計画を上回ったが、営業利益、営業利益率、ROEは目標を下回った。
収益率改善を優先課題として取り組んできたものの、目に見える成果に結びついていない点を反省し、既存業態における新たな利益成長の原動力の創出が不可欠と考えている。

つまり、ドラッグストア業界は、業種・業態を越えた競争激化など、厳しい経営環境が継続する中、従来型のドラッグストアの展開だけでは、成長率の鈍化が予想され、「1.関西ドミナント推進による市場シェアトップの奪回、優位性の確立」、「2.既存の郊外型ドラッグストアからの脱却」、「3.『社会の変化・お客さまの変化・競合他社の変化』に対するスピーディな意識及び行動の変革」が必須である。
 
②第2次中期経営計画
同社は、自社の強みとして①「『未病対策』への取り組み」、②「関西ドミナント展開」の2つをあげている。

①においては、従業員に未病の意識が浸透しているため、HBCを中心としたPB商品の育成と開発が進みPB比率は着実に上昇、2017年2月期で10.2%となった。また単品の粗利高上位20品目のうちHBCのPB商品が15品目を占めている(2017年2月期実績)。
②においては、関西におけるドラッグストア売上シェアは9.3%で3位にランクインしている(出典:DRUG magazine 2017年9月号)。また、ドミナントにより顧客へのブランド浸透度は高く、カード会員数は2017年2月期で129万人と3年前から約5割増となっており、会員売上比率は前期で78.4%と高い。

こうした強みを一段と発揮して、関西No.1ドラッグストアチェーンの構築を目指す同社が、その基盤構築のために取り組むのが「第2次中期経営計画」である。
 
 
重点課題 ①関西ドミナントの推進
3年間でドラッグストア45店舗、調剤薬局8店舗を出店する。ドラッグストアのうち22店舗は調剤併設店舗。
また、現在取り組んでいる都市型店舗のフォーマットを確立する。
 
重点課題 ②既存店の活性化
食品・雑貨販売強化を目的として3年間で100店舗を改装し、客数増加を図るとともに、HBC商品の販売増につなげ、HBC商品のPB比率を引き上げる。
(第1次中計期間中に行った改装により、改装前後の3か月で主として来店回数増に起因した増収効果が明確に認められている。)
加えて、専属チームによる全面改装により収益構造改革を目的としたドラッグストアの新フォーマットを確立する。
 
重点課題 ③調剤機能の強化
調剤併設型ドラッグストアのフォーマットを確立させる。
また、M&Aを推進するとともに、かかりつけ薬剤師の育成や在宅支援の取り組みを強化する。
前期約9%であった調剤売上構成比を12%まで引き上げる。
 
重点課題 ④アシスタントスタッフの戦力化と作業システム改革
POSシステム及びバックオフィスシステムの改革を行うとともに、効率的な人員配置に取り組む。
 
重点課題 ⑤販売チャネルの拡大
リアル店舗とECサイトの連携による販売機会の拡大を図る。ECは越境ECが中心だったが、今後は国内販売も強化する。
 
重点課題 ⑥不採算店のスクラップ
より積極的なスクラップアンドビルドを進め、3年間で不採算店40店舗を閉店する。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年5月29日に提出している。