ブリッジレポート
(3194) 株式会社キリン堂ホールディングス

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ブリッジレポート:(3194)キリン堂ホールディングス vol.42

(3194:東証1部) キリン堂ホールディングス 企業HP
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長

【ブリッジレポート vol.42】2018年2月期第1四半期業績レポート
取材概要「6月の既存店売上もプラス5.7%となり、前期後半の流れを引き継いで順調な立ち上がりとなったようだ。また、規模はさほど大きくはないものの、久し・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年8月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂ホールディングス
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年2月 116,450 1,298 1,835 635
2016年2月 112,902 1,699 2,320 826
2015年2月 108,033 952 1,437 619
2014年2月 103,055 1,820 2,282 942
2013年2月 101,761 1,924 2,242 882
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
株式情報(7/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,057円 11,332,206株 11,978百万円 5.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.00円 2.4% 62.17円 17.0倍 1,142.96円 0.9倍
※株価は7/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数。ROE、BPSは前期実績。
 
(株)キリン堂ホールディングスの2018年2月期第1四半期決算概要などについてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤としてドラッグストア・保険調剤薬局を運営する(株)キリン堂を中心とした持株会社。
医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサルティング等も手掛ける子会社も有する。ドラッグストア事業では、近畿2府5県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び関東1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)においてドミナント戦略を進めており(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)、グループ店舗数は355店舗(FC1店舗を含む)。
連結子会社は、下記5社。持分法適用関連会社として中国で卸売、小売を展開するBEAUNET CORPORATION LIMITEDがある。
連結の従業員数は1,735名。(いずれも2017年5月31日現在)
 
 
 
 
【同業他社比較】
ドラッグストアを中心業態とする上場企業は、以下の14社が挙げられる。(売上規模順)
※売上高、営業利益は今期会社側予想、単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。
時価総額は7月10日終値ベース×7月10日時点直近の短信記載の発行済株式数(自己株式を含む)。
単位は百万円。
PER(予)・PBR(実)は7月10日終値ベース。単位は倍。サツドラHDはサッポロドラッグストアーの完全親会社として2016年8月に設立されたため、増収率・増益率は記載なし。
 
前回レポート時から同社の順位に変化はないが、ROE、売上高営業利益率は低位にとどまっており、これがPBR1倍割れという株価評価にも繋がっているようだ。PB商品の拡大等、収益性向上に向けた取り組みがいつ頃から実を結ぶのかに注目したい。
 
 
利益率の悪化によりROEは過去5年で最も低い5.1%に低下した。
第1次中期経営計画の最終年度である2017年2月期は、当初ROE11%以上を目指していたが未達となった。
第2次中期経営計画では、2020年2月期10%以上を目標としており、実現が期待される。
 
 
2018年2月期第1四半期決算概要
 
 
新店寄与、既存店もプラスで増収。新規出店に伴う経費増を吸収し増益。
売上高は前年同期比7.8%増の307億62百万円。新店が寄与したことに加え、既存店売上高も同3.2%増と好調だった。小売事業において集客増を図ったが、相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したため、粗利率は同0.9P低下したが、売上総利益は同4.2%増加した。
新店増による人件費や施設費などが増加したが、前期で旧ニッショードラッグののれん償却が終了したこともあり、営業利益は同21.9%増の2億55百万円。売上、利益ともに計画を上回った。
 
◎出退店状況
2018年2月期第1四半期の出店は7店舗、M&Aによる増加が4店舗(全て調剤薬局)で、店舗数は11店舗増加した。退店はゼロだったため、2017年5月末のグループ店舗数はFC1店舗を含む355店舗となった。
第2四半期に入っても、順調に店舗数を拡大させている。
近年注力している都市型店舗開発としては、繁華街立地の四条烏丸京都本店を2017年4月にオープンした。オフィス立地、ターミナル立地を含めフォーマットの確立を急いでいる。
 
◎既存店の状況
2018年2月期第1四半期の既存店売上高は、前年同期比3.2%増と好調だった。客数、客単価ともに同1.6%増加した。
顧客の利便性向上、来店動機創出につなげるべく、主に購買頻度の高いハウスホールド商品や食品の売場面積を拡大するため9店舗で売場を改装したほか、ポイントカード会員の拡大とポイントカードを利用した会員向け販促を推進した。
第1四半期平均のカード会員数は既存店で127万人、全店で137万人となっている。
ポイントカード会員の上位30%の会員でポイントカード売上の約8割を占めているということで、既存店売上の安定的な拡大に向け顧客の囲い込みを一段と進めていく。
 
 
◎PB商品売上高の動向
全体の粗利率向上につなげるため、2018年2月期も引き続き、相対的に粗利率の高いPB商品の構成比率上昇に取り組んでいる。
ヘルス&ビューティケア(HBC商品については、成分強化や規格増量などリニューアルの推進、スーパーフードや新素材の採用など潜在需要を開拓するPB商品へチャレンジするほか、機能性表示食品の届け出への対応も進めていく。また、セルフ販売を基本とした価格訴求型PB商品については、フェイス数アップや専用什器の展開などに努めている。
同四半期の新規開発SKU数は66SKUで、うちHBC商品は31SKUであった。
小売事業の商品売上高全体に占めるPB商品の比率(PB比率)は第1四半期実績で9.5%となった。HBC商品売上高に占めるPB商品売上高の比率は10.4%。17年2月期はそれぞれ10.2%、11.3%であったが、健康食品(中でもダイエット商品)の伸び悩みにより両数値ともやや低下した。
 
 
 
集客強化のため雑貨等が前年同期比2桁の増加。健康食品はダイエット関連が低調だった。調剤部門は横這い。相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したことに加え、雑貨等自体の利益率も低下したため、小売事業の粗利率は同0.6P低下した。
 
 
新店増で販売費や人件費が増加したが、前期で旧ニッショードラッグののれん償却が終了したこともあり、小幅増にとどまった。
計画をやや上回ったが、引き続きコストコントロールに取り組む。
 
◎調剤事業について
2017年5月、関西地区における調剤事業の強化及び地域に密着した「かかりつけ薬局」の拡充を図り、(株)キリン堂が(株)メディカルトラスト(本社:大阪市北区)の全株式を取得し子会社化(キリン堂ホールディングスの孫会社化)した。
(株)メディカルトラストはその完全子会社である有限会社共進薬局と合わせて調剤薬局を4店舗運営している。(京都府1店舗、大阪府1店舗、兵庫県2店舗)
このM&Aのほか、調剤薬局併設型ドラッグストア1店舗、調剤薬局1店舗を開局し、今第1四半期は6店舗増加した結果、17年5月末の処方せん取扱い店舗数は68店舗となった。

処方せん応需枚数は前年同期比2.9%増の24.2万枚、調剤売上高は同横ばいの26億78百万円となった。

調剤技術料の加算獲得はやや回復傾向にある。かかりつけ薬剤師の育成や在宅支援の取り組みの強化を進める。
 
 
現預金、たな卸資産等の増加により、流動資産は前期末比33億36百万円増加。固定資産は有形固定資産の増加等で同6億81百万円増加し、資産合計は同40億16百万円増加の500億70百万円となった。
一方、仕入債務、長期借入金の増加などにより、負債合計は同38億88百万円増加の372億74百万円となった。
純資産はほぼ変わらずの127億96百万円。この結果、自己資本比率は前期末より1.9P低下の25.5%となった。
 
(3)トピックス
◎調剤薬局事業強化に向けM&Aを実施
2017年6月、(株)キリン堂が、調剤薬局「メディスンショップ」のフランチャイズを展開するメディスンショップ・ジャパン(株)の全株式を取得し、子会社化(キリン堂ホールディングスの孫会社化)した。
フランチャイズシステムを通じ、オーナーが安心して経営できるようサポートすることで、調剤薬局のフランチャイザーとしてさらなる飛躍を目指す。

メディスンショップ・ジャパン(株)は介護大手のセントケア・ホールディング(株)の子会社で、Medcinie Shoppe International(米国)と連携して2004年から調剤薬局「メディスンショップ」のフランチャイズを展開してきた。
今期業績への影響は軽微とのこと。
 
 
2018年2月期業績予想
 
 
業績予想に変更なし。増収増益
業績予想に変更はない。売上高は前期比4.8%増の1,220億円を計画。既存店売上高予想は同0.9%増収で、新規出店20店(上期15店、下期5店)、退店10店(下期10店)を計画。
営業利益は同16.3%増の15億10百万円の計画。出店店舗数増に伴う人件費等の費用増を増収で吸収する。
配当は、前期と同じく年間25.00円/株の予定。予想配当性向は40.2%。
 
 
上期の出店計画15店舗に対し、第1四半期では前述のように7店舗出店した(調剤併設、調剤単独それぞれ1店舗)。
このほかにM&Aで4店舗増加している。
 
(2)取り組み
「第2次中期経営計画」(後述)の重点課題対策を推進する。
 
 
今後の注目点
6月の既存店売上もプラス5.7%となり、前期後半の流れを引き継いで順調な立ち上がりとなったようだ。また、規模はさほど大きくはないものの、久しぶりにM&Aを2件実行することができた点も、第2次中計達成に向けた着実な進捗と評価できるだろう。
トップライン拡大と収益性向上の双方を確実に進めることは容易なことではないだろうが、ドラッグストア業界全般が好調な中で、存在感を示し、株価評価においても一段ステージを変えるには、その実現が不可欠となろう。
各種取り組みの成果がどう実を結ぶかを注目したい。
 
 
 
<参考1:第2次中期経営計画について>
 
同社は、2018年2月期を初年度とする3か年の第2次中期経営計画を策定した。
 
①第1次中期経営計画の振り返り
「収益力の改善」、「経営効率向上と徹底したコストコントロール」、「新規出店による売上高成長」を基本テーマとし、「2020年2月期 連結売上高1,500億円、500店舗体制」の実現を目指した通過点の位置づけであった第1次中期経営計画では、出店総数はほぼ計画通りで、ポイントカード会員拡大、調剤売上高計画100億円の達成などで、売上高こそ計画を上回ったが、営業利益、営業利益率、ROEは目標を下回った。
収益率改善を優先課題として取り組んできたものの、目に見える成果に結びついていない点を反省し、既存業態における新たな利益成長の原動力の創出が不可欠と考えている。

つまり、ドラッグストア業界は、業種・業態を越えた競争激化など、厳しい経営環境が継続する中、従来型のドラッグストアの展開だけでは、成長率の鈍化が予想され、「1.関西ドミナント推進による市場シェアトップの奪回、優位性の確立」、「2.既存の郊外型ドラッグストアからの脱却」、「3.『社会の変化・お客さまの変化・競合他社の変化』に対するスピーディな意識および行動の変革」が必須である。
 
②第2次中期経営計画
同社は、自社の強みとして①「『未病対策』への取り組み」、②「関西ドミナント展開」の2つをあげている。

①においては、従業員に未病の意識が浸透しているため、HBCを中心としたPB商品の育成と開発が進み、PB比率は着実に上昇している。また単品の粗利高上位20品目のうちHBCのPB商品が15品目を占めている(2017年2月期実績)。
②においては、関西におけるドラッグストア売上シェアは9.6%で3位にランクインしている(出典:ドラッグマガジン 最新医薬品産業ランキング2016年)。また、ドミナントにより顧客へのブランド浸透度は高く、カード会員数は2017年2月期で129万人と3年前から約5割増となっており、会員売上比率は前期で78.4%と高い。

こうした強みを一段と発揮して、関西No.1ドラッグストアチェーンの構築を目指す同社が、その基盤構築のために取り組むのが「第2次中期経営計画」である。
 
 
重点課題 ①関西ドミナントの推進
3年間でドラッグストア45店舗、調剤薬局8店舗を出店する。ドラッグストアのうち22店舗は調剤併設店舗。
また、現在取り組んでいる都市型店舗のフォーマットを確立する。
 
重点課題 ②既存店の活性化
食品・雑貨販売強化を目的として3年間で100店舗を改装し、客数増加を図るとともに、HBC商品の販売増につなげ、HBC商品のPB比率を引き上げる。
(第1次中計期間中に行った改装により、改装前後の3か月で主として来店回数増に起因した増収効果が明確に認められている。)
加えて、専属チームによる全面改装により収益構造改革を目的としたドラッグストアの新フォーマットを確立する。
 
重点課題 ③調剤機能の強化
調剤併設型ドラッグストアのフォーマットを確立させる。
また、M&Aを推進するとともに、かかりつけ薬剤師の育成や在宅支援の取り組みを強化する。
前期約9%であった調剤売上構成比を12%まで引き上げる。
 
重点課題 ④アシスタントスタッフの戦力化と作業システム改革
POSシステム及びバックオフィスシステムの改革を行うとともに、効率的な人員配置に取り組む。
 
重点課題 ⑤販売チャネルの拡大
リアル店舗とECサイトの連携による販売機会の拡大を図る。ECは越境ECが中心だったが、今後は国内販売も強化する。
 
重点課題 ⑥不採算店のスクラップ
より積極的なスクラップアンドビルドを進め、3年間で不採算店40店舗を閉店する。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年5月29日に提出している。