ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.32

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
渡邉 陽一郎 社長
渡邉 陽一郎 社長

【ブリッジレポート vol.32】2016年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「同社の16/3期第1四半期決算を振り返ると、今後の主力製品であるASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム製品、プレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年8月18日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
渡邉 陽一郎
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 6,059 114 122 328
2014年3月 5,677 286 296 160
2013年3月 4,789 135 139 76
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
株式情報(8/7現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
851円 4,547,608株 3,870百万円 9.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 1.5% 41.78円 20.4倍 794.03円 1.07倍
※株価は8/7終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
 
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ80.8%、19.2%。
今後は、RFIDタグ向け新製品、マイクロ流体デバイスなどの新製品の販売拡大が期待される。
 
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。
ASA COLOR LED
 
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。
プレフィルドシリンンジ向けガスケットのイメージ
 
 
・マイクロ流体デバイス
今後、分子接着・接合技術を応用したマイクロ流体デバイスの販売拡大を目指す。分子接着は、ゴムと樹脂を接着させる技術で独自の積層流路を形成し、複雑な分析に対応可能。
マイクロ流体チップのサンプル
 
・RFIDタグ用ゴム製品
溶剤を使わずに接着させる“分子接着技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のIC タグを提供。
RFIDタグ用ゴム製品イメージ
 
 
 
中期経営計画
 
新中期経営計画を策定するにあたり、独自の新製品開発による成長を描くため、中期3ヶ年の2回分である2020年を見据えたビジョン「AR-2020VISION」を制定。
AR-2020VISION
・技術革新を基盤に、新しい価値を創造し続ける企業になる。
・現在の仕事に慢心せず、常に変革を求め、経営環境の変化に応じ継続的に磨きをかける。
・人財こそが、事業運営の要とし、人材の育成を行う。
このビジョンの実現に向けて、最初のステージである15/3期~17/3期の中期経営計画(V-1計画)を作成。
中期経営方針として、①既存事業の質・量の持続的成長、②新市場・新分野への事業展開、③2020年に向けた事業基盤の強化と整備と定め、最終年度である17/3期に数値目標である、売上高80億円、営業利益8億円の達成を目指す。
 
 
(1)今後の事業戦略
自動車分野
主力ASA COLOR LEDは、16/3期第1四半期まで受注の調整がされるものの、下期以降は受注の増加による売上の増加を見込む。また、新タイプによる材料費削減で利益率を改善させる。加えて、接点ラバー、Oリングは、スイッチ用ラバー、スイッチ用防水カバーなどの売上拡大を目指す。17/3期の売上高目標は37億円であるが、既に40億円への引き上げを検討中。
 
 
医療分野
プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットなどの拡大を図る。前期までに設備投資を行った分野であり、V-1計画では新製品の開発期間と位置付け、今後の成長に向けた要素技術の深堀を進める他、ライフサイエンス分野とのシナジー効果を生み出す。17/3期の売上高目標は13億円。
 
 
ライフサイエンス分野
卓球ラケット用ラバーは、顧客の要求に着実に応えていく。マイクロ流体デバイスは同社の柱と位置付け拡大を目指す。16/3期のマイクロ流体デバイスの売上高は1億40百万円を予定(うちNEC向けのポータブル型DNA解析装置向け製品は1億円の売上を計画)。今後も分子接着技術を活かした新製品の開発に努める。17/3期の売上高目標は16.5億円。
 
 
その他分野
主力RFIDタグ用ゴム製品は、顧客の在庫調整と新タイプの生産準備で16/3期の上期は受注の調整局面に入るものの、16/3期の下期以降に回復に転じる見込み。コア技術の深堀りと新しい製品、新しい分野に挑戦する。
 
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同年比6.0%の減収、同47.2%の経常減益
売上高は、前年同期比6.0%減の13億96百万円。売上面では、RFIDタグ用ゴム製品において新機種対応で海外向けの受注調整があったこと、卓球用ラケット用ラバーにおいて顧客の在庫調整があったこと、ASA COLOR LEDにおいて前期後半からの自動車メーカーの販売・生産計画調整が継続したことなどから工業用ゴム事業で同5.2%減少した。また、プレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・薬液混注ゴム栓で一部顧客の生産調整があったことから医療・衛生用ゴム事業も同9.4%減少した。
営業利益は、前年同期比52.2%減の26百万円。工業用ゴム事業のセグメント利益は、同57.5%の減益となった。RFIDタグ用ゴム製品やASA COLOR LEDや卓球用ラケット用ラバーなどの売上減少に加え、マイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコストの増加が影響した。一方、医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益は、同412.9%増加した。プレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・薬液混注ゴム栓の生産調整の影響を受けたものの、前年同期に計上した一部の製品における品質管理に係るコストが減少した。RFIDタグ用ゴム製品などの採算性の高い製品の売上減少により売上総利益率は、24.0%と前年同期比0.8ポイント低下。人件費の減少があったものの、管理費が上昇したことから、売上高対販管費率は同1.0ポイント上昇した。
 
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。
 
 
海外売上は前年同期比15.4%の増加となったものの、国内売上が同9.2%減少した。
 
 
15年6月末の総資産は15年3月末比5億61百万円減の86億23百万円。資産面では現預金と売上債権が、負債・純資産面では未払法人税等と役員退職慰労引当金が主な減少要因。
 
 
同社は、8月7日に16/3期第2四半期累計期間の連結会社計画の修正を行った。売上計画は下方修正。工業用ゴム事業において新規製品の受注は計画通りに進捗しているものの、既存製品はASA COLOR LEDの受注が自動車メーカーの販売・生産調整の影響を受けて、RFIDタグ用ゴム製品の受注も顧客の在庫調整の影響を受けて、期初予想を下回る見通しとなったもの。一方、各利益計画は上方修正。販売減の影響とマイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコスト増加等の影響があるものの、中国子会社の販売が自動車関連製品を中心に期初の予想を上回る見込みとなったもの。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比7.9%の増収、同145.3%の経常増益予想
16/3の会社計画は、売上高が前期比7.9%増収の65億40百万円、経常利益が同145.3%増益の3億円の期初予想が据え置かれた。
売上面では、ASA COLOR LEDとマイクロ流体デバイスの受注が増加する見込み。上期の売上は前期の第4四半期に始まった得意先の品質総点検による新車発売の後ろ倒し、在庫調整、新規製品への切替が重なる影響により、自動車関連製品、機能製品、医療製品とも伸び悩みを想定している。一方、下期の売上高は、自動車関連製品のASA COLOR LED及びマイクロ流体デバイスの開発製品の販売が増加する見込み。
利益面では、前期に発生し役員退職慰労引当金繰入額の計上という特殊要因がなくなることに加え、売上の増加による利益の増加により営業利益と経常利益が大幅に増加。売上総利益率は、0.5ポイント低下の25.4%、売上高対販管費率は、3.7ポイント低下の20.3%の会社前提。この結果、営業利益は、前期比187.8%増益の3億円30百万円となる見込み。一方、当期純利益は、前期に受取保険金の計上があった反動により減益となる計画。
なお、前期に特殊要因がなかったと仮定した業績との比較において、各種利益指標とも今期増益の会社計画となっている。
また、1株当たりの配当も、15/3期と同額の年間13円(上期末3円、期末10円)の計画から変更なし。
 
 
 
ASA COLOR LEDとマイクロ流体デバイスの量産設備の導入で設備投資額が増加。
今期の設備投資計画7億20百万円の事業分野別内訳は、自動車分野2億11百万円、医療分野77百万円、ライフサイエンス3億15百万円、その他分野1億16百万円。
 
 
今後の注目点
同社の16/3期第1四半期決算を振り返ると、今後の主力製品であるASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム製品、プレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・薬液混注ゴム栓等がユーザーの生産調整や受注調整の影響で減少するなど厳しい内容となった。こうした中で、中国子会社の販売が自動車関連製品を中心に期初の予想を上回る見込みとなり、今中間期の利益計画を上方修正したことは明るい兆候である。今後の中国子会社の早期の収益拡大を期待したいところである。16/3期の会社計画は、こうしたユーザーの生産調整や受注調整の動きが上期に終了し、下期以降自動車関連製品のASA COLOR LED及びマイクロ流体デバイスの開発製品の販売が増加する計画となっている。収益性が高く今後の拡大が期待される自動車関連製品やRFIDタグ用ゴム製品の受注が下期より拡大するためには、今第2四半期にこれら製品の受注底入れが必要と言えよう。今第2四半期に自動車関連製品やRFIDタグ用ゴム製品の受注底入れの兆候が表れるのか注目される。
また、16/3期第1四半期決算において、マイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコストの増加が確認された。厳しい収益環境ながら、マイクロ流体デバイス関連の増産体制の整備は、同事業における今後の拡大に向けた同社の自信の表れと思われる。今後の同社の成長において最大の鍵を握るであろうマイクロ流体デバイスの事業展開が注目される。
更に、渡邉新社長の体制となり1四半期が終了したが、現状会社に大きな変化は確認できない。渡邉新社長の元、会社がどうのように変化していくのかについても注目していきたい。