ブリッジレポート
(2483) 株式会社翻訳センター

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ブリッジレポート:(2483)翻訳センター vol.4

(2483:JASDAQ) 翻訳センター 企業HP
東 郁男 社長
東 郁男 社長

【ブリッジレポート vol.4】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「第二次中期経営計画の最終年度2015年3月期「売上高100億円、営業利益7億円」という目標は残念ながら未達となってしまうが、「事業領域の拡大」と・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年12月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社翻訳センター
社長
東 郁男
所在地
大阪市中央区久太郎町4-1-3 大阪御堂筋ビル
決算期
3月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 8,772 364 359 179
2013年3月 7,267 422 422 220
2012年3月 5,536 440 439 227
2011年3月 4,756 279 270 139
2010年3月 4,239 236 239 105
株式情報(12/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
3,390円 1,684,500株 5,710百万円 7.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
48.00円 1.4% 160.28円 21.2倍 1,536.34円 2.3倍
※株価は12/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
(株)翻訳センターの会社概要、2015年3月期第2四半期決算概要等について、ブリッジレポートにてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
※(株)アイ・エス・エスは子会社として(株)アイ・エス・エス・インスティテュートおよび(株)アイ・エス・エス・コンサルティングを有しており、これら3社を総称して、以下ISSと表記する。
 
会社概要
 
翻訳業界の国内最大手で唯一の上場企業。特許、医薬、工業、金融・法務分野において、産業翻訳と呼ばれる技術文書やビジネス文書の翻訳を行う。語学力、専門性、文章力に優れた約6,200名の登録翻訳者・通訳者を有する。高い品質と専門性、対応言語約70言語という幅広さが特徴。M&Aによって、通訳も含めた言語サービスにおける事業領域の拡大を図る。
 
【沿革】
江戸時代から薬の町として有名な大阪・道修町(どしょうまち)で、医薬専門の翻訳サービスを提供するために設立された(株)メディカル翻訳センターが前身。その後、特許などへ翻訳業務の範囲を広げる過程で東京、大阪、名古屋に設立した数社を整理・統合して1997年8月に(株)翻訳センターとなる。2006年株式上場後、海外へも進出。2012年9月に通訳、国際会議企画・運営、人材派遣で実績を持つISSを子会社化。
 
 
【社長プロフィール】
東 郁男社長は1961年7月15日生まれ。
1992年8月同社入社後、1997年8月取締役就任。2001年9月に創業者からバトンを引き継ぎ、代表取締役に就任し、2006年の株式上場の指揮を執る。
 
【企業理念・経営方針】
<企業理念>
 
<経営ビジョン>
「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」
 
【市場環境】
翻訳ビジネスは大きく分けて、「産業翻訳」、「出版翻訳」、「映像翻訳」があるが、同社の中心的な事業は、企業や官公庁で発生する技術文書、ビジネス文書の翻訳のことを指す「産業翻訳」と言われる分野。
日常生活においては出版翻訳や映像翻訳を目にすることが多いが、年間2,000億円といわれる日本の翻訳市場において、産業翻訳は90%と圧倒的な大半を占めている。
一般社団法人日本翻訳連盟によると、国内には約2,000社の翻訳会社・事業者があるが、売上高56億円(単体、2014年3月期)の同社の以下は、10位で売上高数億円程度と、小規模事業者が大多数の業界となっている。
 
 
日本企業の活動のグローバル化が進むにつれて、翻訳ニーズは益々拡大するものと予想されている。
高速鉄道、プラント設備・装置技術、水道など日本企業による現地インフラ事業の受注拡大。
震災、洪水などの教訓からリスク分散に伴う生産拠点の多極化。
医療分野が成長戦略の重要な柱の一つと位置付けられており、研究の進展、新薬の開発、日本製医療用機器の輸出拡大
所謂「クールジャパン」戦略に基づいた、コンテンツ、製品・サービスの輸出拡大や、来日誘致策の積極化
海外に目を向けてみると、アメリカの調査会社コモンセンスアドバイザリー社発表による2014年の世界の語学サービス会社の売上高ランキングにおいて、同社は3年連続で世界で12位、アジア地域では1位にランクインされた。
同社レポートによると、世界の翻訳市場は約2兆3,500億円と、日本市場の10倍以上にあたる巨大市場が形成されている。当然競争も激しい事は予想されるが、同社は事業拡大のため、新規領域への取組も開始しており、早期の売上高100億円達成、世界トップ10入りを目指している。
 
 
【事業内容】
特許、医薬、工業、金融・法務など、専門性の高い事業分野における産業翻訳を行っている。
産業翻訳の具体例としては、以下の様なものが挙げられる。
デジタル機器等における複数言語で書かれている取扱説明書
海外生産工場での機械の仕様書や現地従業員向けの作業マニュアル
現地会社で使う規程類などの人事労務資料
ソーシャルゲームを含めた各種ゲームやアニメ、マンガなどのコンテンツ類
日本国あるいは外国へ特許出願する際の特許明細書
日本国あるいは外国で医薬品の承認申請を取得するための資料
決算短信などのディスクロージャー関連資料
 
現在の顧客数はグループで約3,500社。9割が法人顧客。
売上ベースで対応言語の80%が英語で、中国語6%、独・仏が数%と続くが、近年、東南アジア言語の翻訳依頼が増えている。2014年3月期ではスペイン語の売上高が第3位となった。
現在、約70言語に対応している。
 
◎ビジネスモデル
翻訳作業は、同社に登録している6,239名(2014年3月期。子会社ISSを含むグループ連結のべ人数)が行う。質の高い翻訳者をどれだけ確保できるかが事業拡大の上で大きなポイントとなる。
そのために、登録の際トライアルというテストを実施し、語学力のみでなく、技術知識など専門性や文章力、スピードも評価して一定以上の能力を有した翻訳者のみと契約している。合格率は約40%ということだが、一次審査として書類審査も行っていることから、実際の合格率はもっと低く、狭き門となっている。
登録翻訳者の確保が重要な経営課題と認識しているが、実際のところは、翻訳者の数がボトルネックになった事はないということで、安定的に仕事を発注できる同社の事業規模の大きさもあり、登録者数は順調に拡大している。
同社の売上原価のほぼ大半が登録翻訳者への支払報酬で、原則的に「対応言語 1ワードあるいは1文字」当たりの従量制となっている。
業務フローを示したのが以下の図だが、同社が安定的に利益を生み出すためには以下の2点が最も重要であり、そのために様々なシステムを導入している。
 
 
①翻訳者の選定
品質確保のためには、顧客から依頼された原稿の内容に適した翻訳者を言語、専門性、スピード、発注単価などを加味して選定しなければならない。
この選定でミスをすると、納品までの後工程に支障をきたし、収益低下につながる。

同社では基幹業務システム「SOLA」を使用し、常に適切な選定が行う事が出来るような体制を構築している。
「SOLA」は、2003年4月に導入した、案件の受注から納品、回収までを一括管理する同社独自開発の基幹業務システムで、販売管理だけでなく、登録者に関する、専門分野、過去の実績、スケジュール等、詳細なデータが蓄積されている。
コーディネーターと呼ばれる社内の担当者が、このデータベースを用いて適切な翻訳者を選定する。「SOLA」を使うことでコーディネーターの属人的な経験などに頼らずに適切な翻訳者の選定を行う事が出来る。
 
②翻訳のスピードアップ及び品質チェック
顧客に納品する前に必要な校正作業は社内の校正スタッフ、ネイティブスタッフなど、専門スタッフが行っている。また、翻訳作業をより確実かつスピーディーに行えるよう、自社開発の「HC TraTool」を始めとした翻訳支援ツールを使用している。
 
 
従来の手作業による翻訳では、大量の原稿の重複箇所の表現統一を手作業で処理しており、業務の精度を高めるためには、多くの人手を投入するなど、効率的ではなかった。
この問題を解決するために同社は、翻訳支援ツール「HC TraTool」を開発し、2010年4月から本格導入した。これは、重複箇所の表現統一を機械的に処理するもので、ツール導入により、翻訳作業に関わる人出を減らし、より速く正確に行うことが可能となった。
 
◎事業セグメント
翻訳事業が売上、利益の大半を占める。なおISSの子会社化に伴い、セグメントの区分を変更している。
 
 
特許分野、医薬分野、工業分野、金融・法務分野からなる。

①特許分野
主に、特許事務所および各種メーカーの知的財産関連部署を顧客とした、電気、電子、機械、自動車、半導体、情報通信、化学、医薬、バイオ分野における、外国出願ならびに日本出願等に伴う特許出願明細書、特許公報等の翻訳を行っている。

②医薬分野
主に、製薬会社を顧客とした、新薬等医薬品開発段階での試験実施計画書、試験報告書、医薬品の市販後の副作用症例報告、学術論文、および、医薬品・医療機器類の導入や導出に伴う厚生労働省、米国FDA(食品医薬品局)等への申請関連資料等の翻訳、医療機器メーカーを顧客としたマニュアルの翻訳や化学品、農薬関連の翻訳も行っている。

③工業分野
主に、自動車、電気機器、機械、半導体、情報通信関連の輸出・輸入メーカーを顧客とした、技術仕様書、規格書、取扱説明書、品質管理関連資料の翻訳、メディアコンテンツ類の翻訳も行っている。

④金融・法務分野
主に、銀行・証券会社・保険会社等金融機関を顧客とした、市場分析レポート、企業業績・財務分析関連資料、運用報告関連資料、人事関連資料、マーケティング関連資料、報告書等の翻訳、また、各種メーカー等を顧客とした、株主総会招集通知やアニュアルレポート、有価証券報告書等のディスクロージャー関連資料の翻訳、会社案内・法律関連文書、人事規程等の翻訳も行っている。
 
 
顧客企業内において機密保持上、社外に持ち出せない文書類などの翻訳業務を行う翻訳者派遣を行っているほか、会議、商談、工場見学等の通訳業務を行う通訳者の派遣、外資系企業をメインターゲットとした人材紹介業務も行っている。
 
 
(株)アイ・エス・エスにおいて、大規模国際会議や企業内会議、商談、工場見学などの際の通訳を請負っている。
 
 
(株)アイ・エス・エス・インスティテュートにおいて通訳者・翻訳者養成のための語学教育を提供している。
 
 
(株)アイ・エス・エスにおいて、コンベンション事業を、子会社の(株)外国出願支援サービスにおいて、外国出願用の特許明細書の作成業務などを行っている。なお、「コンベンション事業」は量的な重要性が増したため、今第1四半期より報告セグメントとして記載する方法に変更している。
 
 
特徴と強み
 
翻訳業界最大手で唯一の上場企業である同社は、以下の様な強みや特徴を有している。
 
◎専門性
特許、医薬、工業、金融・法務の4分野において高い専門性を有している。
言語としての専門性はもちろんだが、外国特許出願に際しての出願書類の作成も手掛けるのに加えて、本業である翻訳も行う等、その業界に関する高い専門性と翻訳に付随した付加価値サービスを展開している。
近年様々な機械翻訳サービスがWEBを通じて提供されるようになっては来ているが、現在のところ、同社が手掛けるレベルの産業翻訳で使用に耐えられるものではなく、今後も顧客が要求する専門性と言う観点からすれば普及、浸透には相当な時間と開発コストが必要になるのではないかと思われる。

◎総合力
目指す姿として「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジェ」という経営ビジョンを掲げて、2012年9月に通訳業界で大きな実績をもつISSを買収した。また、対応言語数が70言語という幅広さ、前述の外国特許出願時におけるワンストップ・サービスなど、守備範囲の広さが大きな競争優位性に繋がっている。
 
 
2015年3月期第2四半期決算概要
 
 
売上高、利益共に第2四半期累計で過去最高を更新
売上高は前年同期比4.2%増収の43億円。主力の翻訳事業では金融・法務分野以外は全て増収で、特に医薬分野が2桁の増収。翻訳事業自体の粗利率の上昇及び翻訳事業の売上構成比の上昇により粗利率は0.7%上昇。販管費は、人件費が増加したが前期にあった東京本部移転費用が無くなり同6.3%の増加にとどまり、営業利益は同5.5%増加。為替差損が無くなり経常利益は同10.1%、四半期純利益は同23.8%それぞれ増加し、売上、利益は上半期として過去最高を更新した。利益は期初計画を上回った。人件費の適切なコントロールが課題と考えている。
翻訳者の登録数は2014年9月末で6,330名。前年同期に比べ449名、7.6%増加した。
売上構成比で約2割を占める特許分野の登録翻訳者の拡充を目指しているが、登録者の分野別構成比率は前上期末14.9%、今上期末13.9%と低下している。翻訳者の養成機関である(株)アイ・エス・エス・インスティテュートにおいて特許翻訳講座のリニューアルを実施するなど、強化に注力している。
 
*調整額は、セグメント間取引消去とのれん償却額の合計
*営業利益の構成比は損益計算書計上の営業利益に対するもの。
*今第1四半期より、「その他」に含めていた「コンベンション事業」について、量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更している。前第2四半期は、今第2四半期の区分に基づき作成したもの。
 
①翻訳事業
<特許>
主要顧客である大手電機メーカーからの受注が減少したが、企業の知的財産関連部署に対する新規開拓の推進に加え、既存顧客である大手化学メーカーの子会社からスポット案件が増加し、横這いだった。
 
<医薬>
新薬申請資料の翻訳において、プリファードベンダー(※)契約に基づく外資系大手および国内製薬会社からの受注が好調を維持していることに加え、国内製薬会社や国内化学メーカーの医薬品開発部門から新薬申請と製造工程に関する大型のスポット案件を獲得したため2桁の伸びとなった。上期で初めて売上高が10億円を突破した。
プリファードベンダー(※):企業が優秀な人的リソースの確保と費用低減を狙い、優先的に業務を委託する特定の調達先のこと。
 
<工業>
売上の中心となる自動車関連企業において、複数の部品メーカーおよび完成車メーカーから大型のスポット案件を獲得したことに加え、新規分野として注力しているエネルギー関連企業から定期案件を受注し、堅調だった。
 
<金融・法務>
法律事務所からの受注増加に加え、注力している企業の管理関連部署への営業活動は奏功したものの、前期に獲得した保険関連のスポット案件の反動からマイナスとなった。
 
② 派遣事業
人材派遣事業において主に保険や銀行などの金融関連企業や医薬品関連企業、飲食関連企業などから安定した受注を獲得できた。
 
③ 通訳事業
製薬会社や通信関連企業からの受注が引き続き好調に推移した。
 
④ 語学教育事業
株式会社アイ・エス・エス・インスティテュートの通訳者・翻訳者育成での4月~9月開講のレギュラーコースの受講申込が計画通りに推移した。
 
⑤ コンベンション事業
受注は好調に推移したが、前期に受注した大型スポット案件(「第5回アフリカ開発会議(通称:TICAD V)」)の反動により減収となった。
 
⑥ その他
外国への特許出願に伴う明細書の作成や出願手続きを行う株式会社外国出願支援サービスが好調に推移した。
 
 
売上債権の減少等で流動資産は前期末比42百万円の減少。固定資産も同14百万円の減少で資産合計は同57百万円の減少。仕入債務の減少等で流動負債は同41百万円減少し、固定負債も同19百万円減少し、負債合計は同61百万円減少した。純資産はほぼ変わらず。この結果自己資本比率は64.7%と前期末から1.1%上昇した。
 
 
営業CFは、利益増、売上債権の減少などでプラス幅は拡大。投資CFは、無形固定資産の取得による支出は増加したものの、前年同期にあった事業譲受による支出が無くなったことなどからプラスに転じ、フリーCFもプラスとなった。財務CFは、ほぼ変わらず。キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2015年3月期通期業績予想
 
 
業績予想に変更無し。利益率の高い翻訳事業の伸びで、売上高、利益ともに過去最高更新へ
業績予想に変更は無い。売上高は前期比7.1%増の94億円を計画。翻訳事業、派遣事業、通訳事業とも堅調。翻訳事業の粗利率上昇と売上構成比上昇により粗利率が1.1%改善する。人件費増などで販管費は増収率を上回って増加するが、粗利益増加で吸収し、営業利益以下増益で、売上、利益ともに過去最高を更新する。配当は前期から3円増配の48.00円/株を予定。予想配当性向は29.9%。
 
 
<翻訳事業>
特許、医薬、工業、金融・法務の主要4分野はいずれも増収の見込み。
特許分野では、子会社である(株)外国出願支援サービスとの連携を図り、企業の知的財産関連部署への拡販を推進する。
医薬分野では、主要ターゲットであるメガファーマへの深耕とプリファードベンダー契約の獲得に加え、中小製薬会社および医療機器関連企業への拡販にも注力する。
工業分野では、主軸である自動車関連企業からの受注拡大に加え、他産業分野へのサービス展開とローカライゼーション案件受注も更に強化する。
金融・法務分野では、国内外の金融機関への積極的なアプローチとIR関連資料の制作体制強化に加え、企業の管理関連部署への拡販を図り、受注拡大を目指す。

<派遣事業>
企業内での多様な需要を満たす通訳者・翻訳者を確保し、外資系の金融、通信、食品企業などでの受注拡大を目指す。

<通訳事業>
IRに関する通訳業務や、金融関連企業と製薬会社を主要ターゲットとして受注拡大を図る。

<語学教育事業>
首都圏における通訳教育の需要を確実に獲得していくとともに、翻訳者教育の拡充を進めるが、通訳養成は既にシェアも高く、横這いを予想している。

その他のセグメントのうち、コンベンション事業は、前期の大型案件の反動で減収を計画。
 
 
今後の戦略
 
今期が最終年度となる第ニ次中期経営計画において、以下3つの基本方針および重点施策を掲げている。
 
 
①事業領域の拡大
「ISSグループの子会社化」は大きな成果であった。
翻訳センターとISSによる共同営業とクロスセルの体制作りを進めてきたが、今上期における紹介案件の売上高は前年同期の倍、約70百万円に拡大している。
また、2013年6月の「第5回アフリカ開発会議(通称:TICAD V)」の全体運営を担当した実績が認められたこともあり、2016年に京都で開催される第40回国際外科学会世界総会を受注することが出来た。
今後も引き続き国内開催予定の大型イベントの受注拡大を狙う。
VISIONに掲げる、「言葉のコンシェルジェ」実現に向け着実に歩を進めている。

また、更なる事業領域の拡大を目指し、2014年8月、マルチランゲージ・コンタクトセンターを運営するディー・キュービック株式会社と業務提携契約を締結した。

2020年訪日外国人2,000万人を目標とした日本政府による「Visit Japan」計画などにより、日本を訪れる外国人は今後増大することが見込まれているため、外国人観光客に限らず、在留外国人・就労者のためにも言葉の環境整備は必須の課題となっている。
その為のソリューションの1つが、マルチランゲージサービスである。

通信販売事業者などを対象としたテレマーケティングや、コンタクトセンター事業を展開するディー・キュービック(株)が提供するマルチランゲージサービスとは、在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした電話による通訳・翻訳サービスのこと。
マルチランゲージ・コンタクトセンターの通訳者(オペレーター)が、通訳対象者(外国人)とクライアント担当者の対面対応時のコミュニケーションを円滑に進めるための手助けをする。
同社では、5ヶ国語(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語)に対応し、24時間365日の運営体制で、官公庁自治体、公共交通機関、消防防災、ホテル、通信キャリアなど幅広い分野で導入されている。
今回のアライアンスで両社は、戦略的パートナーとして、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービスの国内ならびに言語対応数最大規模のサービス展開を図るべく、体制整備を進めていくことで合意した。
翻訳センターは既存の翻訳業務のクライアントに対して、ディー・キュービックはその営業チャネルを活用して、事業拡大を図り、国内企業・団体の多言語コミュニケーションニーズに対応していく。
その他、通訳オペレーターの育成やパートナーシップ構築に向けた協議を両社で進めて行く。
 
 
今回の業務提携は、日本国内におけるマルチランゲージコンタクトセンターサービスの展開を図るための体制整備が主眼であり、中長期的なスパンでの業務拡大の実現に向けて取り組んでいくものであるため、今期業績に与える影響は軽微。
 
②専門性の強化
既存分野における専門性の強化と新たな専門事業領域の確立を目指している。

その中心となる具体的施策の一つが、何度か以前のレポートでも紹介した、「ローカライゼーション事業への本格参入」である。
2013年6月にローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部を(株)アイタスから譲受した。アイタスは世界的な大手外資IT企業をメイン顧客とし、高い技術と専門性および顧客との信頼感が強み。譲受以降、英日ローカライズ案件でノウハウや実績を積み上げてきたため、今期より営業部に変更し、特許、医薬、工業、金融・法務に次ぐ第5の分野として育成する。英日ローカライズ案件の拡充とともに、日本の電機・機械メーカー、情報通信企業をターゲットとした営業を展開する。

また「メディカルライティング事業の強化」を目指し、2014年10月、子会社 株式会社パナシアを設立した。
主力事業である翻訳事業のうち医薬分野において、翻訳にとどまらず医薬品承認申請・取得に関するドキュメントの作成も行うメディカルライティング(※)業務を高付加価値サービスの一環として行ってきたが、同業務を専門に受託する子会社を新たに設立し、製薬会社のニーズに質・量ともに応えられる体制を確立することによって、医薬分野のさらなる専門性の強化を図る。
製薬企業での勤務経験を有するメディカルライターを新たに採用するなど、制作体制を整備している。
臨床開発業務におけるアウトソーシングは米国では50%程度まで高まっているのに対し、日本では10~20%と低いため今後の拡大を見込んでいる。
 
※メディカルライティング:医薬品承認申請・取得の際に必要となる治験総括報告書(CSR)や医薬品承認申請様式(CTD)などの文書を薬事法や各種ガイドラインに基づいて作成する業務。
 
 
③翻訳制作体制の増強
翻訳支援ツールの使用比率は、2013年3月期下半期 32.7%であったが、2014年3月期には40.8%と目標としている40%をクリアした。2015年3月期上期実績は41.9%で、通期では50%を目標としている。
将来的には60%程度までは引き上げることが出来ると見ており、積極的な活用による売上総利益率の向上を実現させる。
一方、校正、レイアウト、チェック等の社内制作体制の更なる強化や効率化が課題であると認識している。
 
 
今後の注目点
第二次中期経営計画の最終年度2015年3月期「売上高100億円、営業利益7億円」という目標は残念ながら未達となってしまうが、「事業領域の拡大」と「専門性の強化」はどちらも伸ばすことが出来たと同社は考えている。
特にISSグループの子会社化は、実績を上げており高く評価できよう。
短期的には、下期偏重の事業特性の中、今期見通しをどれだけ上積みできるかを、中期的には来年発表予定の次期中期経営計画でどんな方向性が示されるかを注目したい。