ブリッジレポート
(3194) 株式会社キリン堂ホールディングス

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ブリッジレポート:(3194)キリン堂ホールディングス vol.31

(3194:東証1部) キリン堂ホールディングス 企業HP
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長

【ブリッジレポート vol.31】2015年2月期第2四半期業績レポート
取材概要「第1四半期(3-5月度)時点よりも予想以上に消費税増税前の駆け込み需要の反動減が長引いたことに加え、天候不順もあり、上期計画未達、通期・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年10月28日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂ホールディングス
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年2月 103,055 1,820 2,282 942
2013年2月 101,761 1,924 2,242 882
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
株式情報(10/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
703円 11,332,206株 7,966百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.00円 3.6% 52.69円 13.3倍 1,030.59円 0.7倍
※株価は10/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数。ROE、BPSは(株)キリン堂の前期末実績。
 
(株)キリン堂ホールディングスの2015年2月期第2四半期決算概要、第1次中期経営計画などについてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤としてドラッグストアを運営する(株)キリン堂を中心とした持株会社。(2014年8月に持会社体制へ移行。)
医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサル等も手掛けている。ドラッグストア事業では、近畿2府5県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び関東1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)においてドミナント戦略を進めており(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)、グループ店舗数は331店舗(FC2店舗、海外3店舗を含む)。
連結子会社は、下記の通り全9社。麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司は15/2期中にBEUNETグループに統合する予定。BEUNETグループについては、2014年2月期は貸借対照表のみの連結となっている。
連結の従業員数は1,592名。(いずれも2014年8月31日現在)
 
 
 
【同業他社比較】
ドラッグストアを中心業態とする上場企業は、以下の16社が挙げられる。(売上規模順)
 
 
売上高トップは(3088)マツキヨHD、時価総額トップは(9989)サンドラッグという構成は変わらない。(株)キリン堂ホールディングスは、売上高で12位に変わりはないものの、時価総額では(3385)薬王堂を下回り、前回レポート時の13位から14位に1つ順位を下げた。前回時点より時価総額水準自体はわずかに増加しており、PERも2ケタ台となったが(前回は8.0倍)、依然PBRは1倍割れとなっており、収益性の向上とROE水準の向上が期待される。
 
 
*東証HP「決算短信集計」より
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。
 
同社のROEは直近2年間に関しては比較的高水準で、東証1部の業種別平均も上回っている。ただ、小売業の3要素が、「売上高純利益率 1.91%」、「総資産回転率 1.49回」、「レバレッジ 2.20倍」であることを勘案すると、比較的高いROEも資本構成によるところが大きく、今後は収益性の一段の向上が望まれる。
 
 
2015年2月期第2四半期決算概要
 
 
駆け込み需要の反動や天候不順が響き減収・減益
売上高は前年同期間比1.0%減収の512億57百万円。第1四半期(3~5月度)は消費税税率引き上げ前の駆け込み需要や調剤売上の伸長などで増収だったが、駆け込み需要の反動や記録的な大雨等の天候不順が響き減収に転じた。ヘルス&ビューティケア商品のカウンセリング販売やPB商品販売が伸びたため粗利率は同0.4ポイント改善し、売上総利益は同0.6%増加した。販管費はほぼ計画通りにコントロールできたものの同4.2%増加した結果、コストを吸収できず営業利益は同52.2%減少した。経常利益、四半期純利益もそれぞれ減益となった。売上、利益は計画に対しても未達となった。(上期決算の状況を受けて14年9月24日に通期業績予想を下方修正した。)
 
◎出退店状況
15/2期第2四半期末の国内グループ店舗数はFC2店舗を含む328店舗(前年同期末 321)。出店が3店舗、退店が2店舗だった。人手不足による工期の延長などもあり、出店は2店舗が下期にずれ込んだが、通期出店16店舗という期初計画に今のところ変更は無い。
処方せん取扱店舗数は53店舗となっている。
 
◎既存店の状況
前述のように、駆け込み需要の反動、天候不順が響き、第2四半期(6~8月度)の既存店売上高は前年同月比-6.7%と計画同+0.9%を大きく下回る結果となった。上期でも計画同+1.9%を下回る同-2.7%であった。客単価は第2四半期(6~8月度) 同+1.8%、上期 同+4.1%とプラスだったが、客数がそれぞれ同-8.3%、同-6.6%と減少した。

既存店活性化策としては、6店舗で改装を行ったほか、4月に導入した「新ポイントカード」を用いて新規会員を獲得すると共に、販促の実施に力を入れた。またライトカウンセリングによる推奨販売等を行った。
カードによる販促は7月頃より効果が出始めてきたという。また、9月26日発表の9月度の既存店売上高は同+4.3%と5ヵ月ぶりにプラスに転じた。計画に対しても2.8ポイント上回った。
 
 
◎PB商品売上高動向
小売事業の商品売上高全体に占めるPB商品の比率(PB比率)は目標を10%としているが、今上期は前年同期間比0.9ポイント上昇の9.2%となった。PB商品の売上総利益率は41.8%となり、相対的に粗利率の高い同商品の構成比率アップが全体の粗利率拡大に貢献している。
ヘルス&ビューティケア(HBC)商品を中心とした商品リニューアルと新規開発、雑貨などの開発輸入に取り組んでいる。
上期の新規SKUは90で、下期は45を計画している。
 
 
 
平均処方せん単価の上昇、処方せん受付総枚数の増加により調剤売上高は増収だったが、他部門は総じて減収となった。
医薬品ならびに健康食品部門の粗利率向上のほか、相対的に粗利率の高い調剤売上構成比の伸びが、粗利率向上に繋がっている。
 
 
新ポイントカード導入などに伴う販売促進費の伸びにより販売費が前年同期間と比べ大幅に増加したほか、大きな割合を占める人件費なども増加したが、計画範囲内でコントロールすることができた。
 
◎調剤事業について
同社は調剤売上高100億円を目指しその基盤作りを進めている。
当第2四半期の調剤部門売上高は前述の通り4,398百万円で前年同期間比および対計画比でもプラスとなった。

2015年2月期第2四半期末の処方せん取扱店舗数は、53店舗。今期中に調剤併設1店舗、調剤開局1店舗の合計2店を新規に開局し、55店舗とする計画だ。
基盤作りの要となる薬剤師確保については、最優先課題として取り組んでいる。現時点での採用内定者数は前年同期間比1.6倍という事で、順調に進んでいるようだ。
 
 
現預金、たな卸資産等の増加により流動資産は前期末比14億6百万円増加。無形固定資産、投資その他の資産はともに減少したが、建物及び構築物の増加で有形固定資産が増加し、固定資産は同449百万円の増加。総資産合計は同18億55百万円の増加となった。
一方、仕入債務、長短借入金の増加などで、負債合計は同18億56百万円増加した。
純資産は前期末とほほ同水準の118億円。この結果、自己資本比率は26.3%となった。
 
 
営業CFのプラス幅は縮小し、投資CFのマイナス幅は拡大したが、フリーCFはプラスを継続している。
短期借入金の収支による収入超過などで財務CFはプラスに転じている。
引き続き出店は、営業キャッシュ・フローの範囲内で行う方針。
 
 
2015年2月期業績予想
 
 
業績予想を下方修正。下期既存店回復予想も、増収・減益を見込む
上期決算の状況を受けて14年9月24日に通期業績予想を下方修正した。上場関連費用22百万円を追加したほか、第3四半期に入り売上高は回復基調にあり、各種施策の効果も下期から期待できるものの、消費者の購入姿勢は慎重で厳しい経営環境が想定され、上期の落ち込みを下期に取り戻すのは難しいと会社側は考えている。
売上高は前年同期間比1.8%増の1,049億57百万円。引き続き「新ポイントカード」の有効活用、PB商品の強化等を進め、下期の既存店売上高は同+1.7%と見込むが、通期ではマイナスとなる。上期同様、HBC商品のカウンセリング販売やPB商品販売の伸びによる粗利率改善・粗利増はあるが、販管費増より営業利益は同12.9%の減益を見込む。退店等に伴う特別損失は第1四半期時点の420百万円から469百万円に拡大する。
配当は25.00円/株を予定。予想配当性向は47.4%。
 
 
(2)下期の施策
1.既存店活性化策の継続
「新ポイントカード」稼動を起点とした客数増加による既存店の増収が中心施策となる。
上期は新規顧客獲得に力を入れ、月4万人増加と効果は表れたが、一方で月2回以上来店する顧客数は減少してしまった。
そこで下期は、再来店を促すクーポンの配布、EDLP(Every Day Low Price:特売期間を設けず、商品を年間を通じて同じ低価格で販売する価格戦略)の強化等により客数拡大を目指すと共に、購入額上位顧客優遇策の導入による客単価アップも図る。
月間10,000円以上購入する顧客数は増加傾向にあるという。また、PB商品への取組みを引き続き強化する。
 
2.関西地区への出店計画
営業キャッシュ・フローの範囲内で関西地区への集中出店を行う。出店16店舗、退店10店舗を予定しており、国内店舗数は前期末比6店舗増の333店舗の計画。
新店、改装、システム関係を含めた設備投資は2,725百万円を計画している。
ただ、前回のレポートでも触れたように、建築資材コストの上昇が顕著となっており、投資回収期間など、同社が定める出店基準に満たない場合は品揃えの変更による対応の他、場合によっては出店取り下げも検討しなければならないケースもあり得るという。

この他、「販管費の計画内コントロールの継続」、「調剤事業拡大に向けた基盤作り」に引き続き取り組んでいく。
 
 
第1次中期経営計画
 
持株会社体制への移行に伴い改めて企業理念や今後のビジョンを明確にすると共に、今後の成長を目指して3ヵ年の「第1次中期経営計画(2015-2017)」を策定した。
(2014年2月期決算説明会にて発表した(株)キリン堂のローリング方式による中期3ヵ年計画に替わるもので、固定方式により数値目標を掲げている。)
 
Ⅰ.キリン堂グループの基本方針
基本方針に大きな変更は無い。
『地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーン』の確立を目指し、関西地区における小商圏フォーマットでのドミナント深耕を進める。

具体的には、地域のお客様との関係性を進化させるため、「楽・美・健・快」のコンセプトに沿った顧客第一主義の魅力ある店づくりを進める。
そのため、同社が掲げる主要コンセプトである「未病」をテーマにした健康や美容に関する専門性を高めると共に、利便性の向上にも努める。
さらに、将来的には、調剤事業を中心とした地域包括医療体制の構築も大きな目標とする。

当面は、国内営業基盤の強化に軸足を置き、キリン堂の主力展開地域である「関西地区」における「量」と「質」両面でのシェア追求に邁進する。
「量」は、出店やM&A等による地域シェアのアップ、「質」は、子会社各社の専門性をフルに発揮させ、地域の生活者に 「健康の総合サービス」的な役割、「楽・美・健・快」の提供ができる体制を構築する。
また、持株会社体制への移行を契機に、意思決定のスピードアップなどを図り、グループシナジーの発揮による企業価値向上を通じた持続的成長の実現を目指す。
 
ⅠⅠ.基本テーマ
同社はM&Aや提携によるスピード重視の事業展開により「2020年2月期 関西地区のドミナント化による連結売上高1,500億円、500店舗体制の実現」を目指している。今回の第1次中期経営計画はその通過点との位置づけで、持続的成長に向けた国内営業基盤の強化が主要命題であり、その実現のために「①収益力の改善」、「②経営効率向上と徹底したコストコントロール」、「③新規出店による売上高成長」の3つの基本テーマを設定している。
 
①収益力の改善
高利益率のPB商品の育成と開発の推進を進める。
HBC商品の販売力および開発力を強化し、年度150SKU以上の導入を進めるとともに、雑貨等の開発輸入も推進する。
「健康寿命延伸」をテーマに掲げ、未病対策に加えアンチエイジングのための商品を開発し需要を創造・増進する。
現在約9%のPB比率を2017年2月期には15%まで引き上げる。
2014年6月には商品本部内にPB商品の開発および調達を専門的に手掛ける部署を設置した。また販売、教育を推進する部門も新設した。
 
②経営効率の向上と徹底したコストコントロール
具体的には以下の3点を進める。

*効率的な人員配置
現在、パートやアルバイトなどのアシスタントスタッフには品出し、陳列などを行わせているが、今後はコンサル販売にも加わってもらう等、業務範囲を拡張していく。
また正社員に関しても適正な人数による効率的な配置を進める。

*経費削減の推進

*不採算店舗のスクラップ&ビルド

これらの施策により、2014年2月期25.1%の販管費率を2017年2月期には24.4%まで0.7ポイント改善させることを目標としている。
 
③新規出店による売上高成長
3年間でドラッグストア 45店舗、処方せん取扱店舗(既存店への併設を含む) 11店舗の新規出店を計画している。
ドラッグストアに関しては、引き続き関西地区での出店を進めると共に、新店の早期黒字化を図る。このために2014年6月「新店企画部」を設置した。新店の来店客数増のための様々な仕掛けや取組みを行っていく。
処方せん取扱店舗については、薬剤師の採用および育成が最重要テーマとなる。

2017年2月期のドラッグ売上高、調剤売上高はそれぞれ 1,041億円(2014年2月期 936億円)、100億円(同84億円)を計画している。調剤売上の総売上に占める構成比を10%まで引き上げることを目指している。
 
ⅠⅠⅠ.定量目標
以上のような施策を推進し、最終年度である2017年2月期の定量目標を以下の様に設定した。
 
 
営業利益率向上の内訳は、粗利率の改善 0.5ポイント、販管費率の低下 0.7ポイント。
また今回よりROEを新たに経営目標として掲げることとした。
 
 
今後の注目点
第1四半期(3-5月度)時点よりも予想以上に消費税増税前の駆け込み需要の反動減が長引いたことに加え、天候不順もあり、上期計画未達、通期予想下方修正という結果となってしまった。また、出店戦略も通期計画に変更は無いものの、2店が下期にずれ込んだという事で、前回のレポートで触れたように、建設コスト上昇の影響が表れているようだ。
駆け込み需要の反動減、天候不順、建設コストの上昇は同社のみではなく小売企業全般に影響を与えているが、下期以降の回復を実現するための同社の取組みの実効性が注目される。
中でも、「新ポイントカード」が会員獲得だけでなく売上増につなげるための重要なツールとしていかに実際にワークするかがポイントとなるだろう。また、調剤売上の伸長という明るい部分をもう一段伸ばすためには、出店を計画通りに進められるかも重要だ。

持株会社化に伴い策定した「第1次中期経営計画」は、その具体的な施策そのものに大きな変化は少ないものの、持株会社体制のスタートと各専門部署の新設により、準備は整ったようだ。持株会社化の最大の目的であるM&Aの進展度合いに引き続き注目したい。
また、ROEを新たに経営目標として掲げたことは投資家からは評価されよう。今後は、目標ROE実現のための道筋(例えば、投下資本利益率の基準、資本政策など)についても言及する事を望みたい。