ブリッジレポート:(2483)翻訳センター vol.1
(2483:JASDAQ) 翻訳センター |
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企業名 |
株式会社翻訳センター |
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社長 |
東 郁男 |
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所在地 |
大阪市中央区久太郎町4-1-3 大阪御堂筋ビル |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年3月 | 5,536 | 440 | 439 | 227 |
2011年3月 | 4,756 | 279 | 270 | 139 |
2010年3月 | 4,239 | 236 | 239 | 105 |
株式情報(6/4現在データ) |
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今回のポイント |
※(株)アイ・エス・エスは子会社として(株)アイ・エス・エス・インスティテュートおよび(株)アイ・エス・エス・コンサルティングを有しており、これら3社を総称して、以下ISSと表記する。
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会社概要 |
【沿革】
江戸時代から薬の町として有名な大阪・道修町(どしょうまち)で、医薬専門の翻訳サービスを提供するために設立された(株)メディカル翻訳センターが前身。その後、特許などへ翻訳業務の範囲を広げる過程で東京、大阪、名古屋に設立した数社を整理・統合して1997年8月に(株)翻訳センターとなる。2006年株式上場後、海外へも進出。2012年9月に通訳、国際会議企画・運営、人材派遣で実績を持つISSを子会社化。
【社長プロフィール】
東 郁男社長は1961年7月15日生まれ。1992年8月同社入社後、1997年8月取締役就任。2001年9月に創業者からバトンを引き継ぎ、代表取締役に就任し、2006年の株式上場の指揮を執る。 【企業理念・経営方針】
【市場環境】
翻訳ビジネスは大きく分けて、「産業翻訳」、「出版翻訳」、「映像翻訳」があるが、同社の中心的な事業は、企業や官公庁で発生する技術文書、ビジネス文書の翻訳のことを指す「産業翻訳」と言われる分野。日常生活においては出版翻訳や映像翻訳を目にすることが多いが、年間2,000億円といわれる日本の翻訳市場において、産業翻訳は90%と圧倒的な大半を占めている。 一般社団法人日本翻訳連盟によると、国内には約2,000社の翻訳会社・事業者があるが、売上高53億円(単体、2013年3月期)の同社の以下は、10位で売上高数億円程度と、小規模事業者が大多数の業界となっている。
高速鉄道、プラント設備・装置技術、水道など日本企業による現地インフラ事業の受注拡大。
震災、洪水などの教訓からリスク分散に伴う生産拠点の多極化。
医療分野が成長戦略の重要な柱の一つと位置付けられており、研究の進展、新薬の開発、日本製医療用機器の輸出拡大
所謂「クールジャパン」戦略に基づいた、コンテンツ、製品・サービスの輸出拡大や、来日誘致策の積極化
同社レポートによると、世界の翻訳市場は約2兆3,500億円と、日本市場の10倍以上にあたる巨大市場が形成されている。当然競争も激しい事は予想されるが、同社は事業拡大のため、新規領域への取組も開始しており、将来的には世界トップ10入りを目指している。 【事業内容】
特許、医薬、工業、金融など、専門性の高い事業分野における産業翻訳を行っている。産業翻訳の具体例としては、以下の様なものが挙げられる。
デジタル機器等における複数言語で書かれている取扱説明書
海外生産工場での機械の仕様書や現地従業員向けの作業マニュアル
現地会社で使う規程類などの人事労務資料
ソーシャルゲームを含めた各種ゲームやアニメ、マンガなどのコンテンツ類
日本国あるいは外国へ特許出願する際の特許明細書
日本国あるいは外国で医薬品の承認申請を取得するための資料
決算短信などのディスクロージャー関連資料
売上ベースで対応言語の80%が英語で、中国語6%、独・仏が数%と続くが、近年、東南アジア言語の翻訳依頼が増えている。 現在、約70言語に対応している。 ◎ビジネスモデル
翻訳作業は、同社に登録している5,635名(2013年3月期。子会社ISSを含むグループ連結のべ人数)が行う。質の高い翻訳者をどれだけ確保できるかが事業拡大の上で大きなポイントとなる。そのために、登録の際トライアルというテストを実施し、語学力のみでなく、技術知識など専門性や文章力、スピードも評価して一定以上の能力を有した翻訳者のみと契約している。合格率は約40%ということだが、一次審査として書類審査も行っていることから、実際の合格率はもっと低く、狭き門となっている。 登録翻訳の確保が重要な経営課題と認識しているが、実際のところは、翻訳者の数がボトルネックになった事はないということで、安定的に仕事を発注できる同社の事業規模の大きさもあり、登録者数は順調に拡大している。 同社の売上原価のほぼ大半が登録翻訳者への支払報酬で、原則的に「対応言語 1ワードあるいは1文字」当たりの従量制となっている。 ①翻訳者の選定
品質確保のためには、顧客から依頼された原稿の内容に適した翻訳者を言語、専門性、スピード、発注単価などを加味して選定しなければならない。この選定でミスをすると、納品までの後工程に支障をきたし、収益低下につながる。 「SOLA」は、2003年4月に導入した、案件の受注から納品、回収までを一括管理する同社独自開発の基幹業務システムで、販売管理だけでなく、登録者に関する、専門分野、過去の実績、スケジュール等、詳細なデータが蓄積されている。 コーディネーターと呼ばれる社内の担当者が、このデータベースを用いて適切な翻訳者を選定する。「SOLA」を使うことでコーディネーターの属人的な経験などに頼らずに適切な翻訳者の選定を行う事が出来る。 ②翻訳のスピードアップ及び品質チェック
顧客に納品する前に必要な校正作業は社内の校正スタッフ、ネイティブスタッフなど、専門スタッフが行っている。また、翻訳作業をより確実かつスピーディーに行えるよう、自社開発の「HC TraTool」を始めとした翻訳支援ツールを使用している。
この問題を解決するために同社は、翻訳支援ツール「HC TraTool」を開発し、2010年4月から本格導入した。これは、重複箇所の表現統一を機械的に処理するもので、ツール導入により、翻訳作業に関わる人出を減らし、より速く正確に行うことが可能となった。 ◎事業セグメント
翻訳事業が売上、利益の大半を占める。なおISSの子会社化に伴い、セグメントの区分を変更している。
主に、特許事務所および各種メーカーの知的財産関連部署を顧客とした、電気、電子、機械、自動車、半導体、情報通信、化学、医薬、バイオ分野における、外国出願ならびに日本出願等に伴う特許出願明細書、特許公報等の翻訳を行っている。 主に、製薬会社を顧客とした、新薬等医薬品開発段階での試験実施計画書、試験報告書、医薬品の市販後の副作用症例報告、学術論文、および、医薬品・医療機器類の導入や導出に伴う厚生労働省、米国FDA(食品医薬品局)等への申請関連資料等の翻訳、医療機器メーカーを顧客としたマニュアルの翻訳や化学品、農薬関連の翻訳も行っている。 主に、自動車、電気機器、機械、半導体、情報通信関連の輸出・輸入メーカーを顧客とした、技術仕様書、規格書、取扱説明書、品質管理関連資料の翻訳、メディアコンテンツ類の翻訳も行っている。 主に、銀行・証券会社・保険会社等金融機関を顧客とした、市場分析レポート、企業業績・財務分析関連資料、運用報告関連資料、人事関連資料、マーケティング関連資料、報告書等の翻訳、また、各種メーカー等を顧客とした、株主総会招集通知やアニュアルレポート、有価証券報告書等のディスクロージャー関連資料の翻訳、会社案内・法律関連文書、人事規程等の翻訳も行っている。 |
特徴と強み |
特許、医薬、工業、金融の4分野において高い専門性を有している。 言語としての専門性はもちろんだが、外国特許出願に際しての出願書類の作成も手掛けるのに加えて、本業である翻訳も行う等、その業界に関する高い専門性と翻訳に付随した付加価値サービスを展開している。 近年様々な機械翻訳サービスがWEBを通じて提供されるようになっては来ているが、現在のところ、同社が手掛けるレベルの産業翻訳で使用に耐えられるものではなく、今後も顧客が要求する専門性と言う観点からすれば普及、浸透には相当な時間と開発コストが必要になるのではないかと思われる。 目指す姿として「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジェ」という経営ビジョンを掲げて、2012年9月に通訳業界で大きな実績をもつISSを買収した。 また、対応言語数が70言語という幅広さ、前述の外国特許出願時におけるワンストップ・サービスなど、守備範囲の広さが大きな競争優位性に繋がっている。 |
2013年3月期決算概要 |
ISS子会社化で増収も、先行投資的人件費増で減益
売上高は前期比3割増の72億円。2012年9月に子会社化したISSの売上高(7か月分)が寄与したほか、翻訳事業も特許分野中心に好調だった。利益面では「HC TraTool」を含む翻訳支援ツールの積極利用により、単体の粗利率が0.7ポイント改善して売上高総利益も大きく伸びたものの、今後の成長を見据えた積極的な人材採用等により販売管理費が前期比約8億円増加したため、営業利益以下は減益となった。 4分野すべてが過去最高の売上高となった。 電気関連の出願用明細書の翻訳が大幅受注増となったほか、企業の知財関連部署との取引が拡大した。 複数の大手製薬会社との年間契約案件を獲得することができたことに加え、製薬会社・医療機器関連企業からの安定受注があった。 自動車関連企業からの受注が増加したことに加え、エネルギー関連の受注が拡大した。 金融機関からの受注が低迷し、IR関連資料の受注も減少したが、人事、総務、経理、財務といった企業の管理関連部署へのアプローチを強化したことで案件を獲得できた。 負債面では、同じく子会社化により仕入債務、未払金が増加したほか、退職給付引当金も増加したため負債合計は2.3億円増加。純資産は1.5億円の増加となった結果、自己資本比率は前期に比べ2.7ポイント低下の64.3%となった。 |
2014年3月期通期業績予想 |
ISSの業績が通期でフルに寄与し、2ケタの増収・増益
前期は7か月分の反映だったISSの業績寄与が今期は通期でフル寄与することに加え、主力の翻訳事業も堅調な伸びを見込み、売上高は前期比21.0%増加の88億円。東京本部の移転増床にかかる一時的費用増など販管費は売上の伸びを上回るものの、翻訳支援ツールの使用率向上により粗利率は1.3%上昇し経費増を吸収。営業利益、経常利益も2ケタの増加。
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第二次中期経営計画について |
計画の概要及び取り組みについてまとめてみた。 1.経営ビジョンと基本方針
<経営ビジョン>
「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」 <基本方針>
①「事業領域の拡大」言葉に関する様々なニーズに対応できるよう事業領域の拡大を図る。 積み重ねてきた情報資産を活用するためにITを駆使し、付加価値の高いサービスが提供できる体制を整備する。 常にお客様の視点から解決策を明確にし、組織力を活かして、高いサービス品質を実現する。 2.重点施策
■ISS子会社化による事業領域の拡大
2012年9月に子会社化した(株)アイ・エス・エスは、1965年に設立、1966年に日本で初めての同時通訳者養成学校を設立した歴史と実績のある会社。通訳事業、国際会議企画・運営事業、通訳者・翻訳者養成事業、グローバル人材サービス事業において、長い歴史と確かなブランドを築いている。翻訳に加え、通訳を事業ドメインに加えることで、言葉に関するサービスに関する多様化と収益の拡大を目指す。 ■専門性の強化
顧客に提供する付加価値を高めるため、同社の強みである専門性を更に強化する。具体的な施策は以下の3点。
国内翻訳市場 約2,000億円の内、最大の分野はコンピュータ分野の約600億円(3ページ「翻訳取扱分野構成」を参照)。 これまで同社はコンピュータ分野への開拓が必ずしも十分にできていなかったが、海外の翻訳会社と競争するためには総合翻訳会社としてコンピュータ分野への参入が不可欠と判断し、2013年3月期に専門部署を設立し、コンピュータ分野に本格参入した(翻訳業界では、ITソフトウェアなどコンピュータに関する翻訳を、ローカライズという)。 具体的にはITソフトウェアなどコンピュータ分野におけるマニュアルの翻訳が中心となる。コンピュータ分野を強化するため、2013年6月1日付で(株)アイタスから翻訳事業の一部譲渡を受け強化を図る予定。 顧客企業が海外で特許を出願する際のプロセスについて、出願書類の作成から、その翻訳、出願手続きまで一気通貫で支援する。同社の特許部門と外国出願支援専門の子会社である(株)外国出願支援サービスが一体となって、特許分野の事業拡大を図る。 これも、翻訳のみに留まらず、製薬会社における開発部門との関係を強化し、申請書類の作成も引き受けることで受注拡大を図る。社内リソースを集約した専門チームを設置し、さらに体制を強化する。 ■翻訳制作体制の増強
前述の「HC TraTool」を含めた翻訳支援ツールをより積極的に活用し、品質の安定と向上を図る。翻訳支援ツールの使用率のさらなる増加を目標に掲げる。
翻訳者の評価システムの再構築
制作工程の標準化
基幹業務システム「SOLA」の機能を強化した次世代システムの構築
等に着手し、「翻訳品質の安定・向上」と「業務効率化」の両立を目指している。
既存事業の2ケタ成長維持とISS子会社による増収
既存事業の効率化と年率15%以上の利益成長
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