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ブリッジレポート:(7866)アトラス vol.3

(7866:JASDAQ) アトラス 企業HP
猪狩 茂 社長
猪狩 茂 社長

【ブリッジレポート vol.3】2009年7月期第2四半期業績レポート
取材概要「国内向けパッケージが安定感を一段と高めており、上期は新作が2本にとどまったにもかかわらず前年同期を大幅に上回る売上を上げた。また、順調・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年3月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社アトラス
社長
猪狩 茂
所在地
東京都新宿区神楽坂4-8
決算期
7月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年7月 23,305 1,401 1,636 587
2007年7月 7,984 258 300 -844
2007年3月 21,340 759 785 425
2006年3月 16,730 327 285 -2,764
2005年3月 17,846 30 147 -23
2004年3月 17,160 189 497 37
2003年3月 16,290 151 496 256
2002年3月 17,850 782 1,114 480
株式情報(3/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
374円 14,017,468株 5,243百万円 5.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% -176.21円 634.73円 0.6倍
※株価は3/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
アトラスの2009年7月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
家庭用ゲームソフトの企画・開発・販売、オンラインゲームのパブリッシング、業務用ゲーム機の開発・製造・販売(2009年3月31日をもって事業廃止)及びアミューズメント施設の運営等を手掛けており、08/7期の売上構成比は、それぞれ35%、22%、43%。
現在、事業の軸足を家庭用ゲーム関連事業に移し、アミューズメント関連事業の構造改革を進めている。
 
主な家庭用ゲームソフト(同社Webサイトより)
 
 
2009年7月期第2四半期決算
 
 
前年同期比11.2%の増収、同49.4%の経常減益。
新作ゲームソフトの販売好調やオンラインゲームの寄与で家庭用ゲーム関連事業の売上が前年同期比で76.6%増と大幅に伸びたものの、業務用ゲーム関連事業、アミューズメント施設関連事業の売上がアミューズメント施設市場の低迷により減収。結果として同11.2%の増収となった。

利益面では、家庭用ゲーム関連事業の売上構成比上昇(30.2%→48.4%)による利益率改善で売上総利益が増加したものの、家庭用ゲームソフトの海外販売拡大に向けた先行投資が負担となり営業利益が同14.4%減少した。加えて、匿名組合投資利益(135百万円)がなくなる一方、為替差損が拡大(50百万円→103百万円)したため営業外損益が悪化。事業撤退損や減損損失など特別損失2,374百万円を計上したため、2,152百万円の四半期純損失となった。
尚、特別損失の主なものは、モバイル媒体システムの交換に伴う除却処理や旧型となった保有業務用ゲーム機器廃棄にかかる固定資産除却損143百万円、投資有価証券評価損134百万円、アミューズメント施設関連事業の固定資産にかかる減損損失468百万円、業務用ゲーム関連事業からの撤退に伴う損失(事業撤退損)1,504百万円等である。
 
 
国内は、新作ゲームソフト「デビルサマナー 葛葉ライドウVSアバドン王」(PS2)や「女神異聞録 デビルサバイバー」(DS)の販売好調に加え、連結子会社(株)シーアンドシーメディアが運営するオンラインゲームの課金収入も増加した。一方、北米は英語化(シナリオ翻訳・ボイス吹替え)したゲームソフト11本を発売したものの、「ペルソナ4」の販売が計画を下回る等、景気悪化の影響を受けてほぼ前期並みの売上にとどまった。
 
国内  売上高1,977百万円(前年同期比 265.4%増)、出荷本数365千本
「デビルサマナー 葛葉ライドウVS アバドン王」(PS2) 期初計画:12万本⇒販売実績:約18万本
「女神異聞録 デビルサバイバー」(DS) 期初計画:10万本⇒販売実績:約11万本
 
北米  売上高1,818百万円(前年同期比1.0%減)、出荷本数620千本
「ペルソナ4」(PS2) 期初計画:15万本⇒販売実績:約10万本
 
オンラインゲーム  売上高1,317百万円(前年同期比49.2%増)
「パーフェクトワールド -完美世界-」及び「夢世界 -武林外伝-」が順調に拡大した他、「LEGEND of CHUSEN -誅仙-」の課金を開始した。また、新規2タイトルの日本国内におけるサービス提供及びパブリッシング事業を行う独占ライセンスを取得した(課金開始時期は未定)。
 
 
カードゲームは堅調だったが、主力のプライズ等の苦戦が響いた。
 
 
ゲームセンター市場全体で低迷が続いている事を踏まえて、マシン投資や運営コストの見直しを進めたものの、ロードサイド型店舗を中心に既存店売上高が前年同期比89.4%となる等、売上の低迷が響いた。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー
大幅な四半期純損失の計上を余儀なくされたものの、バランスシートのスリム化が進むと共にCFが改善した。
 
 
第2四半期末の総資産は、前期末比5,877百万円減の15,126百万円。借り方では、売上債権の回収が進んだ他、事業廃止により棚卸資産も大幅に減少、短期貸付金や有利子負債の削減等で現預金も減少した。一方、貸し方では、仕入債務の決済が進んだ他、長短期借入金が減少した。尚、有利子負債は2,352百万円と前期末(3,813百万円)比1,461百万円減少した。
 
 
売上債権の回収が進み、営業CFの黒字が拡大。アミューズメント機器投資の抑制と貸付金の回収により投資CFも黒字を確保した事でフリーCFが大幅に改善した。このため、有利子負債の削減を進めたものの、現金及び現金同等物期末残高はわずかな減少にとどまった。
 
今後の戦略
 
(1)中期経営ビジョン
日本国内において、クオリティの高い IPの開発と IPマルチユースを推進すると共に、北米において、 IPの英語化(シナリオ翻訳・ボイス吹替え)を進める事でクオリティの高いIPを世界に配信する。
尚、IPとはIntellectual Propertyの略で、例えば、ゲームキャラクターのアニメ化等、マルチユースを促進する観点から「コンテンツ」と言わず「IP」としている。
 
(2)同社グループの基本戦略  -資産の再構築と世界市場への進出-
現在進行中の中期経営計画(09/7期~11/7期)において、損失の発生を抑えながらアミューズメント関連事業(業務用ゲーム関連事業及びアミューズメント施設関連事業)の構造改革を進める一方、コンテンツ関連事業(家庭用ゲーム関連事業)において積極的に投資を行う事で、クオリティの高い「 IP(知的財産)」を世界へ広げる。
具体的には、この3年間において、アミューズメント関連事業の資産圧縮に取り組む一方、コンテンツ関連分野での積極投資を行い、資産効率と収益性の向上を図る。この一環として、09/7期は、アミューズメント関連事業の資産を徹底的に見直すと共に、世界に通用するIPの開発に着手し、10/7期以降の業績拡大につなげる。
 
 
(3)業務用ゲーム関連事業の廃止(09/2/6発表)
前期はヒット商品に恵まれ、営業利益を計上した業務用ゲーム関連事業だが、景気減退による消費マインドの冷え込みにより急速に事業環境が悪化し、今期に入り受注が急減した。このため、ゲームセンター市場の市場環境、同社業務用ゲーム機器関連事業の現状、更には中長期的な成長可能性等について改めて検討を行なったが、09/7期の営業損失計上が避けられない事、また、来期以降についても収益の確保が難しいと判断せざるを得ない事等から業務用ゲーム関連事業の廃止を決定した。消耗品等の一部サービスについてはメディア事業として継続するものの、資産効率(ROA)の向上を図るべく関連資産の圧縮に取り組む。
また、アミューズメント施設関連事業についても、売却や閉鎖など資産の圧縮を進める。
 
2009年7月期業績予想
 
 
前期比11.4%の減収、同72.2%の経常減益予想。業務用ゲーム関連事業の廃止等を踏まえ通期の業績予想を下方修正した。
売上の面では、業務用ゲーム関連事業で見込んでいた下期の売上高約23億円を減額すると共に、厳しい事業環境が予想されるアミューズメント施設関連事業の見通しも下方修正した。また、利益面では、業務用ゲーム関連事業で見込んでいた約3億円を減額した。これら事業廃止に伴う影響に加え、家庭用ゲーム関連事業における海外販売の強化に向けた管理コスト増等の先行投資も負担となり、営業利益及び経常利益の大幅な減少が見込まれる。
 
 
リピート販売の増加等が見込める事から、利益予想を若干引き上げた。ただ、大型タイトルの減少や海外展開強化に伴うコスト増により、前期比では減益見込み。もっとも、3タイトルを提供しているオンラインゲームは好調。来10/7期は、連結子会社の株式会社C&Cメディアにて国内で新規7タイトルのサービス開始を予定している。
 
 
事業廃止に伴い、通期業績見通しを大幅に下方修正した。ただし、プリント倶楽部の用紙、他社コンテンツを活用したカードゲーム機のカード、及びトリプルキャッチャーアイスのアイス景品等、消耗品の販売については下期以降も継続。今後はメディア事業部が継承する。
 
 
下期は更なる消費マインドの低迷が予想される事から、売上見通しを下方修正した。ただ、コスト削減や新規投資の抑制等により通期で3%台の利益率を維持する事で、期初予想に沿った営業利益の確保を目指す。
 
 
ゲームセンター市場の低迷が続いており、同業他社は軒並み営業利益率を悪化させている。こうした中、同社は唯一、利益率の改善に成功している(他社:09/3期3Q累計実績、同社:09/7期2Q累計実績。同社調べ)。
 
取材を終えて
国内向けパッケージが安定感を一段と高めており、上期は新作が2本にとどまったにもかかわらず前年同期を大幅に上回る売上を上げた。また、順調に事業が拡大しているオンラインも、来期は更に7タイトルがラインナップに加わり、一段の事業拡大が見込まれる。加えて、業務用ゲーム関連事業の廃止で財務内容も顕著に改善しており、全体として良い方向に向かっている事が数字にも表れている。
ただ、当面、資産の売却や施設の閉鎖等、アミューズメント施設関連事業のリストラが続く見込みだ。同事業は上期に2億円の営業利益を計上したものの、下期の営業利益は0.6億円にとどまる見込みで、来期以降については不透明感が残る。需要の回復が見込み難い中では、継続的に損益分岐点を引き下げていく必要があり、縮小均衡も止むを得ない。