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ブリッジレポート:(7866)アトラス vol.1

(7866:JASDAQ) アトラス 企業HP
猪狩 茂 社長
猪狩 茂 社長

【ブリッジレポート vol.1】2008年7月期決算業績レポート
取材概要「厳しい事業環境を踏まえて策定された中期経営計画では、在庫処分や店舗閉鎖等の損失を限定しながらアミューズメント関連事業の縮小均衡を図り・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年10月28日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社アトラス
社長
猪狩 茂
所在地
東京都新宿区神楽坂4-8
決算期
7月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年7月 23,305 1,401 1,636 587
2007年7月 7,984 258 300 -844
2007年3月 21,340 759 785 425
2006年3月 16,730 327 285 -2,764
2005年3月 17,846 30 147 -23
2004年3月 17,160 189 497 37
2003年3月 16,290 151 496 256
2002年3月 17,850 782 1,114 480
株式情報(10/7現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
400円 14,017,468株 5,607百万円 5.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 7.13円 56.1倍 799.79円 0.5倍
※株価は10/7終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
アトラスの2008年7月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
家庭用ゲームソフトの開発販売、オンラインゲームのパブリッシング、業務用ゲーム機の開発・製造・販売及びアミューズメント施設の運営等を手掛けている。事業は、家庭用ゲーム関連事業(家庭用ゲームソフトの開発・販売、オンラインゲームのパブリッシング)、業務用ゲーム関連事業(業務用ゲーム機器の開発・製造・販売)、及びアミューズメント施設関連事業(店舗運営)に分かれ、08/7期の売上構成比は、それぞれ35%、22%、43%。
 
<沿革>
1986年4月、コンピュータゲームソフトの開発等を目的に設立。92年10月にはヒット作となった「真・女神転生」をスーパーファミコン向けに開発・発売を開始し、また、業務用アミューズメント機器の企画・開発・製造・販売、アミューズメント施設の運営も行なっている。同社の業容を一気に拡大させたのが、95年7月に販売を開始した業務用オリジナルシール印刷機「プリント倶楽部」(通称「プリクラ」)。プリクラの大ヒットを受けて、97年10月に株式を店頭公開(ジャスダック証券取引所上場)。プリクラの需要は一巡したものの、家庭用ゲーム関連事業をけん引役に業績拡大が続いている。
 
主な家庭用ゲームソフト(同社Webサイトより)
 
 
2008年7月期決算
 
 
変革期と位置づけて臨んだ08/7期は予想を大幅に上回る着地となったが、家庭用ゲームソフトの開発体制強化やアミューズメント施設事業の構造改革等で課題を残した。
 
(1)連結業績
 
売上高23,305百万円、経常利益1,636百万円となった(07/7期は決算月変更のため4ヶ月決算)。
家庭用ゲーム関連事業において、国内新作ゲームソフト「世界樹の迷宮Ⅱ 諸王の聖杯」(ニンテンドーDS:08年2月発売)、「ペルソナ4」(PS2:08年7月発売)が当初計画を大幅に上回る販売本数を達成。子会社が運営するオンラインゲームも好調に推移した。
利益面では、主に家庭用ゲーム関連事業において、国内新作ゲームソフトの販売本数が当初計画を上回った事で売上原価率が低下、販管費の伸びを抑えて営業利益は1,401百万円となった。匿名組合投資利益の計上等で為替差損を吸収して営業外損益が改善したものの、特別損失867百万円を計上したため、当期純利益は587百万円にとどまった。
 
特別損失の主なもの
固定資産除却損
(内装設備等の廃棄)                    90百万円
固定資産減損損失
(アミューズメント施設の減損処理)            261百万円
店舗解約損失
(転貸していた所有アミューズメント施設の閉鎖に伴う)    56百万円
子会社整理損
(連結子会社のATLUS ENTERTAINMENT PTE LTD.の解散処理等)  33百万円
貸倒引当金の繰入                     316百万円
 
(2)セグメント別動向
 
家庭用ゲーム関連事業
 
売上高は07/3期比12.0%増の8,141百万円、営業利益は同69.1%増の1,979百万円。国内でパッケージソフトの販売が計画以上に伸びた事に加え、オンラインゲームも伸びた。
このうちパッケージソフト事業は、国内売上高が同6.8%増の3,340百万円。新作ゲームソフトとして「カドゥケウス NEW BLOOD」(Wii:08年1月発売)、「世界樹の迷宮Ⅱ 諸王の聖杯」(ニンテンドーDS)、「ペルソナ4」(PS2)の3タイトルを発売、08年7月には「救急救命 カドゥケウス2」(ニンテンドーDS:08年8月発売)の出荷を開始した。「ペルソナ4」が前作を大幅に上回る販売実績を上げた事に加え、アニメ放送効果で過去の「ペルソナ」シリーズのリピートも増加した。
 
「世界樹の迷宮Ⅱ 諸王の聖杯」(ニンテンドーDS)  約17万本(計画10万本)
「ペルソナ4」(PS2)                約30万本(同 18万本)
 
北米市場向けは、新たに23タイトルを発売したものの、売上高は同21.6%減の3,135百万円。新作ゲームソフトとして「カドゥケウス NEW BLOOD」の英語版「Trauma Center:New Blood」(Wii)や「Persona3 FES」(PS2)等を発売、特に「Persona3」や「Persona3 FES」等のアトラスタイトルが計画を上回ったものの、市況の悪化により全体として1タイトル当たりの販売本数が伸び悩んだ。
 
「Persona3」                   約 7.4万本(計画6万本)
「Persona3 FES」                 約11.5万本(同 5万本)
 
家庭用ゲームソフト出荷本数
 
また、オンラインゲーム事業では、連結子会社の(株)シーアンドシーメディアが運営するオンラインゲーム「パーフェクト ワールド -完美世界-」が引き続き好調に推移した他、08年2月に課金を開始した新規オンラインゲーム「夢世界 -武林外伝-」も順調に立ち上がった。
 
 
業務用ゲーム関連事業
 
売上高は07/3期比8.4%増の5,384百万円、営業利益は59百万円(前期は55百万円の損失)。「トリプルキャッチャーアイス」がその他製品の苦戦をカバー、脱プリクラ化と共に赤字体質からの脱却に成功した。
プライズ機では業界初の-25℃の冷凍環境を実現した「トリプルキャッチャーアイス」を08年6月に発売し1,200台を超える販売実績をあげた他、景品のアイスクリーム販売も今夏目標の約4,000万円を達成した。
 
 
また、カードゲーム機では、女児向けの「きらりん☆レボリューション クルキラ★アイドルDays」が堅調に推移し、カード約1,917万枚を販売。男児向けも、08年4月に発売した「家庭教師ヒットマン REBORN!サザンクロスバトル」が約314万枚を販売、プライズ機、スポーツアーケード機に続く新たなジャンルの確立に成功した。
 
 
利益面では、想定を超えた原材料費の高騰による製品原価の上昇に加え、配送費・倉庫保管費など販管費も増加したものの、増収効果で吸収し営業損益が黒字転換した。また、海外向けの販売業務を行っていた連結子会社のATLUS ENTERTAINMENT PTE LTD.を解散し、アトラスが業務を引き継いだ。
 
アミューズメント施設関連事業
 
売上高は07/3期比6.9%増の9,934百万円、営業利益は同60.9%減の270百万円。07年9月1日に(株)マッドを吸収合併した他、新規出店として、08年1月に「ゲームパニック足立」(東京都足立区)をオープンした(期末直営店舗23店舗)。これにより6店舗分が上乗せされた事で売上は増加したものの、消費意欲低迷や原油価格高騰によるロードサイド型既存店の苦戦、及び新規マシンの償却負担増等で営業利益率が悪化した。
 
 
 
中期経営計画(09/7期~11/7期)
 
(1)中期経営計画
11/7期にかけての中期経営計画では、損失の発生を抑えながらアミューズメント関連事業(業務用ゲーム関連事業及びアミューズメント施設関連事業)において構造改革を進める一方、コンテンツ関連事業(家庭用ゲーム関連事業)において積極的に投資を行う事で、クオリティの高い「ATLUS IP(知的財産)」を世界へ広げる。具体的には、この3年間において、アミューズメント関連事業の資産圧縮に取り組む一方、コンテンツ関連分野での積極投資を行い、資産効率を重視した経営スタイルへの転換を図り収益性を高める。IPとはIntellectual Propertyの略で、例えば、ゲームキャラクターの映画化等、マルチユースを促進する観点から「コンテンツ」と言わず「IP」としている。
 
 
(2)数値計画
 
コンテンツ関連
オリジナルコンテンツ開発の強化を行い、特に海外市場を見据えたコンテンツの開発に注力する。また、コンテンツのマルチユースにも積極的に取り組んでいく考えで、この一環として10月1日付けでメディア事業部を新設した。連結子会社(株)シーアンドシーメディアが展開するオンラインゲーム事業においては、運営タイトルを増やす。現在、クローズドβテスト中の「LEGEND OF CHUSEN -誅仙-」が11月から課金を開始する他、新規タイトル獲得に向けて交渉を進めている。
 
アミューズメント関連
損失の拡大を抑えながら、資産の圧縮を進める。具体的には、非効率店舗の売却・閉鎖、マシン投資の厳格化、業務用ゲーム関連資産(在庫)の圧縮を図る。
 
2009年7月期業績予想
 
 
前期比1.8%の増収、同37.7%の経常減益予想。
国内外で厳しさを増す事業環境を踏まえ、売上・利益の拡大よりも事業構造の再構築を優先する。主力のコンテンツ関連事業では、国内で6~9タイトル・50万本、北米で25タイトル・100万本のパッケージソフトの出荷を計画しており、国内外共に前期実績をわずかに下回る。オンラインゲームの拡大でセグメント売上高は増加するものの、チャレンジタイトルが多い事及びオンライン展開など北米での先行投資が負担となり、セグメント営業利益は減少する見込み。資産効率と収益性の改善を念頭に資産の圧縮を進めるアミューズメント関連事業も減収・減益が避けられず、連結営業利益は同25.8%の減少を見込む。匿名組合投資利益の計上がなくなり営業外での上乗せが減少する事に加え、特別損失として株式の評価損や店舗関連の減損損失を見込んでいる他、子会社の税負担増加及び少数株主利益の増加等もあり、当期純利益は100百万円にとどまる見込み。
 
 
取材を終えて
厳しい事業環境を踏まえて策定された中期経営計画では、在庫処分や店舗閉鎖等の損失を限定しながらアミューズメント関連事業の縮小均衡を図り、コンテンツ関連事業に経営資源を集中させていく考えだ。ただ、基幹タイトルの販売好調で売上・利益が大きく伸びた08/7期にしても、発売タイトル数が期初計画を下回るなど課題もある。計画通りに開発を進め、基幹タイトルを毎期安定的に発売できる体制の整備は、中期経営計画を着実に進める上で避けては通れない問題だ。09/7期のコンテンツ関連事業は先行投資負担から減益予想だが、利益もさる事ながら売上計画を確実に達成できるか否かに注目したい。
一方、同社の場合、同業他社が積極的に進めてきたコンテンツのマルチユースについては手付かずの状態で、有望な未開拓分野を残している。コンテンツのマルチユースとは、例えば、ゲームキャラクターを使ったテレビアニメや映画化、ゲーム音楽のCD化等である。また、オンラインゲームについても海外展開の余地が大きい等で、今後の事業展開に期待が持てる分野は多い。
09/7期が始まったばかりのこの時期に、来10/7期の話をするのは少々気が早い気もするが、中期経営計画通りに業績が進捗すれば、来10/7期のEPSは100円を超える。復配も現実味を増し、現在、400円程度にある株価は大きなレバレッジ効果が期待できる。