ブリッジレポート
(1754)

ブリッジレポート:(1754)東新住建 vol.1

(1754)東新住建/ 深川 堅治社長
2002年8月23日(金)

中部・東海地方を地盤とする東新住建を訪問しました。
深川社長にお話を伺いました。


深川 堅治社長

成長の経緯

1976年、名古屋市で23歳の時に創業した深川社長は「単なる個人商店では終わらせたくない」との思いが強く、利益は会社に留保し、投資も行い会社の知名度を上げることに力を入れていきました。順調に売上が伸びていく中、どうすれば個人商店から会社として大きくなれるかを考える中で「効率化」に知恵をしぼっていきました。
つまり、「サラリーマンをどう組織化すれば、不動産業というリスクのあるビジネスを行えるか?」を考えたのです。


その答えとして、専門分野を任せることによる「人の育成」、無駄なく効率的にビジネスを進めていく「仕組み作り」に力を入れていき、結果としてバブルを乗り越え、売上高350億円まで成長してきたのです。
1998年にはジャスダックに上場。中部地方から首都圏を中心とした全国展開を進めていく戦略です。


事業内容

2002年8月現在で、関東7、中部10の合計17拠点を設け、首都圏から中部圏にかけた1都12県で営業を展開しています。
このエリアの人口占有率は45.3%(5,743万人)。新設住宅着工占有率で52.0%(61万戸)と巨大なマーケットを対象としています。

事業ラインアップとして以下のものを扱っています。
<分譲戸建事業>
中部圏・首都圏を中心に、年間800棟販売体制を推進。公的資金借入を利用して購入できる商品を提供しています。同社の設計・企画力は高く評価され、同業他社からの見学希望者があるほど。風と、光と、緑をテーマに、よりクオリティの高い生活空間づくりを実現しています。平成13年度東海三県下分譲戸建着工数は581戸、シェア7.4%でNo.1となっています。

<分譲マンション事業>
マンションの合理性・快適さに、一戸建て感覚の独立性と住み心地を織り込んだ、フレストマンションシリーズを供給。常に時代のニーズを先取りした独創的な発想で新しいマイホーム造りを提案しています。

<注文住宅事業>
さまざまな敷地条件、家族構成、ライフスタイルに合わせてフレキシブルな設計で対応しています。また、高齢化が進む時代で安全への配慮が不可欠となっており、お子様からお年寄りまで健康で安全に暮らせる設計を第一に考えています。

<賃貸住宅建築事業>
土地の活用・管理プランを提案し、土地オーナーの方から厚い信頼を得ています。採算ベースにあった低価格の賃貸住宅「ザ・借家」を中心に、節税効果の大きいマンションも施工・管理しています。

<不動産流通・斡旋事業>
グループ会社「ブルーボックス」で、土地・中古住宅の販売・仲介から賃貸住宅の斡旋まで、住まいに関する豊富な情報を最新のコンピューターで紹介しています。

平成14年6月期のセグメント情報における売上高構成比は、
住宅建築請負事業
21.3%
分譲不動産販売事業
70.3%
兼業事業
8.3%
となっています。

 

「ザ・借家」

各種事業の中でも、今後期待し、最も注力していく事業が賃貸住宅建築事業「ザ・借家」です。これは、土地オーナーにテラスハウス型の賃貸住宅を供給するものです。

1991年10月に始まった生産緑地法により、農地の宅地並課税で賃貸住宅建設が活況となりました。しかし1993年ころからその反動が現れ、空室率が上昇。アパート着工は前年比マイナス80%と、賃貸事業は不況に陥りました。
そうした状況下、同社では低家賃で収支が取れる商品開発に取り組み、1994年4月に発売したのが「ザ・借家」です。
これは1・2階併用型のテラスハウスに特化したものです。テラスハウスは通常は効率化、事業化が難しく、提案しにくいといわれていますが「人のやらないことをやろう」という同社のパワーが生み出したものです。 同社の成功を見て追随する会社もあったようですが、うまくいってはいないようです。

「ザ・借家」の特徴は以下の3点で、「オーナー、入居者、同社」それぞれにとって良い賃貸住宅となっています。
1.安定収入

施主は長期に亘る安定収入を得ることができます。
高い利回りと早い投資回収:回収期間は8-11年。
高い入居率:95%以上の実績。
万全のサポート体制:一括借上げ制度と子会社による管理、運営。

2.入居者のニーズを追及

入居者に対して低家賃と音の解消を実現しています。
1、2階併用型で上下階の問題解消。隣家の音も階段、クローゼット、遮断壁設置。
庭付き、駐車場付きのテラスハウス型で高級感あふれる外観。
低い家賃設定が可能:木造建築、間取りの規格化でローコストを実現。建築費が安いので家賃設定に余裕。

3.高品質・コストダウン
25年前の建築費坪単価は約9万円で、家賃は2DK約1.8万円でした。現在は建築費坪単価45-60万円で約5-7倍になっているのに対し、家賃は約6万円で3倍にしかなっていません。つまり25年前と同じ利益を出すには建築費の伸びを抑えなければなりません。
「ザ・借家」の場合、建築費坪単価は約9万円で、25年前の約3.6倍となっています。 これを実現したのは2×4パネルの工場生産による工期短縮と原価削減です。

1994年の販売以来約1000棟、4000戸を販売してきました。 他社との競合状況は、深川社長によれば「10戦9勝」という圧倒的な強さを発揮しており、特にアパートとの競合には強いということです。
今後は東海3県、首都圏の営業所を増設しシェアを拡大。その後も全国展開し大手企業に追いつき追い越していく方針です。
全国の新設借家は年間40万戸。長期ビジョンとしてその3%のシェア、金額にして800-1000億円の確保を目指していきます。


同社の優位性

同社には3つの優位性がありその相乗効果が更なる同社の強みになっています。
1.HRB分譲
これは「ハイスピードリターンズビルド」の略で、短期回転型戸建事業のことです。
物件供給を安全に拡大すると同時に、1営業拠点で300億円の売上が可能です。(同業他社10拠点のところを同社は1拠点でおこないます)
また合理的な工期短縮も実現しています。前述の通り、東海3県ではダントツの実績です。

2.ザ・借家:前述の通りです。

3.自社パネル工場
公開時の資金で建設したパネル工場が軌道に乗り始め、品質、コスト面で寄与してきました。深川社長によればこの工場は損益分岐点の低い「21世紀型の重くない工場」だそうです。「借家」建築が拡大しても新たに工場を拡大する必要がなく、また分譲戸建にも対応することができるということです。外観はたいした工場ではないものの、高品質、高生産性を発揮する同社独自のソフト&ノウハウに強い自信を持っています。
この3つの優位性の相乗効果としては以下のようなポイントがあります。

  • 生産性の高い自社工場からのパネルをHRB分譲、ザ・借家両方に供給
  • これに関連して、建築のためのノウハウが共有できる
  • 分譲事業のマイナスキャッシュフローを、ザ・借家のキャッシュフローで補完できる


今後の展開「Go! Go! Go!ビジョン」

深川社長に今後の展開、戦略をお話してもらいました。
同社では1999年3月に5年後の数値目標として「Go! Go! Go!ビジョン」を設定しました。

これは「5年後、売上500億円、経常利益50億円」を達成するというものです。
売上高に関しては2000年6月期、2001年6月期、2002年6月期と目標をクリアしてきています。 深川社長が課題としてあげておられたのが利益率です。
2002年6月期の経常利益率は、3.3%。これを10%近くまでもっていくことに力を入れていきます。

  • 「借家」は10%近くの利益率があるため、地域密着でシェア15%以上を達成するとともに、全国の賃貸シェア3%、1000億円を目指します。
  • 「分譲」に関しては、販管費をもっと効率的に使うことを考えています。分譲戸建では中部圏との違いを熟知して首都圏で展開していく他、オリジナル工法に磨きをかけて商品力を強め、付加価値の向上に努めます。東京、神奈川、埼玉でそれぞれ50-100棟供給していきたいと考えています。
  • 分譲マンションは新商品を投入し中部圏での事業を拡大し、注文住宅は訴求ポイントを明確にした新商品で中部圏での業績を伸ばします。


訪問を終えて

創業27年と社歴は比較的長いものの、社長は40歳代で、社長にも会社にもまだまだパワーが溢れているという感想です。
波の大きい不動産業ですが、「引出しをたくさん持ち、悪くなったときのことを考えて、様々なリスクヘッジを行いながらやってきた」ということで、結果として27年間の中で売上高が前年比ダウンしたのは1期のみ(それも数パーセント)という実績となっています。
最後に、個人投資家へのメッセージを伺いました。
安定的な配当をキープしていき、利益が出れば積極的に還元していきたいということ。
また、まだまだ小さい会社ですが、個人投資家の皆さんには一緒に大きくなる夢を共有していただき、投資対象として常に注目していってもらいたいとのことでした。
10月5日のブリッジサロンで深川社長が直接お話をされます。
同社成長の源泉を是非聞いてみてはいかがでしょうか?